咲人からのメッセージは短かった。
『Hey Meisa. I really miss you. Can we place a call in the near future?』
君が本当に恋しい。
近いうちに電話できない?
待ち望んでいた連絡だった。
んーーーと頬杖をついた。
別に余裕綽々のどーしよっかな★ではない。
私も恋しかったし話した方がいいと思うけど……。
まぁいいや。
どうしても聞きたいことが一つあるし。
でもすぐに返信なんて、絶対してあげない。
私は忙しくもないのに半日ほど返信を寝かせておいた。
別に許される範囲の意地悪だ。
加えて、誇り高き民族の彼が、女にすがるなんて俺の国の男はできないと言っていた彼が、
アプリ上で私を探し、ついにはI really miss youと連絡して来たことも
相当気分が良かった。
え、性格が悪い?
いいえ、それをさせるくらい彼が嫌な奴だっただけです(笑顔)
『明後日のこの時間なら電話できると思うわ。
それから、もしかしたらあなたが用意してくれた部屋に私のバッグを忘れたかもしれないの。
知ってる?』
そう。
咲人の国でエコバッグ的の使っていたバッグが行方不明なのだ。
確か、旅行カバンに入れたはずなのだけど、
何せあの部屋を発った日は、二人とも注意散漫で。
もしかしたらクローゼットの中にあるんじゃないか、と思ったのだ。
それはエコバッグではなくて、でも折りたためるバッグなのだけど(何それ)
亡くなった祖父が旅行のお土産に買ってきてくれた物だ。
モダンでも何でもないけど、綺麗な色と装飾の繊細さから、
畳めるバッグ(笑)にしては高価なものだったのはわかる。
祖父が孫可愛さに買ってきてくれたそれを、なくすわけにはいかなかった。
ピロリロリーン
『返信、ありがとう。
なんだか、もう2度と連絡がないんじゃないかと思ってた……。
バッグのこと、清掃のメイドに聞いてみるよ。
その時間帯で電話しよう』
ポチポチポチポチ
『バッグのことありがとう。
あれは亡くなった祖父がくれたものだから失くせないのよ。』
『大丈夫、見つけるよ。
知ってる?(知らんがな)俺、君に手紙書いたんだぜ。
もう君が読みたいかどうかもわからないけど……。』
手紙?
そういえば咲人は前にも一度手紙を書いてくれたことがある。
ものすごーく初めの頃だ。(咲人カテゴリの え、何?運命?からどうぞ)
その時も結構個性的なものつうかポエムを送ってくれたけど、
今回はどうなんだろう。
でも何より…………
私は窓の外を見つめた。
きらきら光る木漏れ日が道をキリン柄にしている。
あの日。
初めて咲人とデートした、その夏一番の猛暑日だったあの日。
咲人が案内してくれた公園で、私たちは木陰を散歩していた。
「これが俺たちの文化なんだ。君の住んでる国とは違うだろう?
俺たちは自然を愛してるけど、だからこそあまり手をかけないんだ。
多分、病気とかそういうことのケアはしているだろうけど、
人間が手を出すのは最低限にとどめて、できるだけありのままの状態でおくんだ」
そう説明した咲人と私の周りには、樹齢が高そうな樹や、ワイルドな薬草。
不格好は可哀想だけど、気の毒な見た目の樹が茂っていた。
私は正直、この国の男の子と付き合っていたにもかかわらず、
全然この国の文化や言葉に興味がなくて、知識は全然ない。
仁と仲良くなってから少し学んだこともあったけど、それでも別に興味もなかったし、
咲人が説明する彼の国のことは、初めてのことだらけだった。
私は、なるほどねーと、面白みゼロな相槌を打った。
日本人なら綺麗に切り揃えちゃうかも、とも思った。
それを見透かしたのか、咲人は言った。
「日本人はどうなの?もっと細やかなんだろ」
「うーん、まぁ、多分そうだと思うわ。基本的には私たち、すごく細かいから」
「だよな、そこが興味深いんだよ。俺にとって。
だから日本語を勉強するのは大変なんだけどさ(笑)」
「ま、そうね。日本語は外国人にはキツイと思うわ。
私たち細かいから、単語数も物凄いしね。
たとえば……」
私は空を見上げた。
眩しい真っ青な空に、白くて長い雲が、スッと通っていた。
「あの雲、あなたの国では名前がある?」
「え?……あーううん、いや?
あると思うけど、学術的な名前だよ」
「なるほどね、日本人はね、あれを飛行機雲って呼ぶのよ」
「ヒコウ……?」
「直訳すると、airplane cloud って感じ」
「ああー、なるほどね」
「でもそれだけじゃないわ。飛行機雲だけじゃなくて、
ウロコ雲、いわし雲、入道雲……雲一つとっても本当にたくさんあるのよ」
「すごいな」
「それにね……」
と言って私は、足元を指差した。
「ね、これなんていうか知ってる?」
「え?」
私はつま先で、トントンと木漏れ日の落ちているところをタップした。
いや…と言い淀む咲人に、ちょっと笑ってみせた。
「こ、も、れ、び。木から漏れる陽って意味なの。
私たちは本当にたくさん単語を持っているのよ」
すごいな、と咲人は感激したように言った。
私は木漏れ日という単語が好きだったから、
彼の反応が嬉しかった。
咲人が私宛に書いた手紙が読んでみたかった。
ポチ
ポチポチ……
『手紙?見せて』
ピロリロリーン
咲人はすぐに、3枚ん添付写真つきで返信してきた。
『どうぞ。でも読んだら何か感想が欲しいよ』
その手紙は
ラブレターだった。
続きます!
『Hey Meisa. I really miss you. Can we place a call in the near future?』
君が本当に恋しい。
近いうちに電話できない?
待ち望んでいた連絡だった。
んーーーと頬杖をついた。
別に余裕綽々のどーしよっかな★ではない。
私も恋しかったし話した方がいいと思うけど……。
まぁいいや。
どうしても聞きたいことが一つあるし。
でもすぐに返信なんて、絶対してあげない。
私は忙しくもないのに半日ほど返信を寝かせておいた。
別に許される範囲の意地悪だ。
加えて、誇り高き民族の彼が、女にすがるなんて俺の国の男はできないと言っていた彼が、
アプリ上で私を探し、ついにはI really miss youと連絡して来たことも
相当気分が良かった。
え、性格が悪い?
いいえ、それをさせるくらい彼が嫌な奴だっただけです(笑顔)
『明後日のこの時間なら電話できると思うわ。
それから、もしかしたらあなたが用意してくれた部屋に私のバッグを忘れたかもしれないの。
知ってる?』
そう。
咲人の国でエコバッグ的の使っていたバッグが行方不明なのだ。
確か、旅行カバンに入れたはずなのだけど、
何せあの部屋を発った日は、二人とも注意散漫で。
もしかしたらクローゼットの中にあるんじゃないか、と思ったのだ。
それはエコバッグではなくて、でも折りたためるバッグなのだけど(何それ)
亡くなった祖父が旅行のお土産に買ってきてくれた物だ。
モダンでも何でもないけど、綺麗な色と装飾の繊細さから、
畳めるバッグ(笑)にしては高価なものだったのはわかる。
祖父が孫可愛さに買ってきてくれたそれを、なくすわけにはいかなかった。
ピロリロリーン
『返信、ありがとう。
なんだか、もう2度と連絡がないんじゃないかと思ってた……。
バッグのこと、清掃のメイドに聞いてみるよ。
その時間帯で電話しよう』
ポチポチポチポチ
『バッグのことありがとう。
あれは亡くなった祖父がくれたものだから失くせないのよ。』
『大丈夫、見つけるよ。
知ってる?(知らんがな)俺、君に手紙書いたんだぜ。
もう君が読みたいかどうかもわからないけど……。』
手紙?
そういえば咲人は前にも一度手紙を書いてくれたことがある。
ものすごーく初めの頃だ。(咲人カテゴリの え、何?運命?からどうぞ)
その時も結構個性的なもの
今回はどうなんだろう。
でも何より…………
私は窓の外を見つめた。
きらきら光る木漏れ日が道をキリン柄にしている。
あの日。
初めて咲人とデートした、その夏一番の猛暑日だったあの日。
咲人が案内してくれた公園で、私たちは木陰を散歩していた。
「これが俺たちの文化なんだ。君の住んでる国とは違うだろう?
俺たちは自然を愛してるけど、だからこそあまり手をかけないんだ。
多分、病気とかそういうことのケアはしているだろうけど、
人間が手を出すのは最低限にとどめて、できるだけありのままの状態でおくんだ」
そう説明した咲人と私の周りには、樹齢が高そうな樹や、ワイルドな薬草。
不格好は可哀想だけど、気の毒な見た目の樹が茂っていた。
私は正直、この国の男の子と付き合っていたにもかかわらず、
全然この国の文化や言葉に興味がなくて、知識は全然ない。
仁と仲良くなってから少し学んだこともあったけど、それでも別に興味もなかったし、
咲人が説明する彼の国のことは、初めてのことだらけだった。
私は、なるほどねーと、面白みゼロな相槌を打った。
日本人なら綺麗に切り揃えちゃうかも、とも思った。
それを見透かしたのか、咲人は言った。
「日本人はどうなの?もっと細やかなんだろ」
「うーん、まぁ、多分そうだと思うわ。基本的には私たち、すごく細かいから」
「だよな、そこが興味深いんだよ。俺にとって。
だから日本語を勉強するのは大変なんだけどさ(笑)」
「ま、そうね。日本語は外国人にはキツイと思うわ。
私たち細かいから、単語数も物凄いしね。
たとえば……」
私は空を見上げた。
眩しい真っ青な空に、白くて長い雲が、スッと通っていた。
「あの雲、あなたの国では名前がある?」
「え?……あーううん、いや?
あると思うけど、学術的な名前だよ」
「なるほどね、日本人はね、あれを飛行機雲って呼ぶのよ」
「ヒコウ……?」
「直訳すると、airplane cloud って感じ」
「ああー、なるほどね」
「でもそれだけじゃないわ。飛行機雲だけじゃなくて、
ウロコ雲、いわし雲、入道雲……雲一つとっても本当にたくさんあるのよ」
「すごいな」
「それにね……」
と言って私は、足元を指差した。
「ね、これなんていうか知ってる?」
「え?」
私はつま先で、トントンと木漏れ日の落ちているところをタップした。
いや…と言い淀む咲人に、ちょっと笑ってみせた。
「こ、も、れ、び。木から漏れる陽って意味なの。
私たちは本当にたくさん単語を持っているのよ」
すごいな、と咲人は感激したように言った。
私は木漏れ日という単語が好きだったから、
彼の反応が嬉しかった。
咲人が私宛に書いた手紙が読んでみたかった。
ポチ
ポチポチ……
『手紙?見せて』
ピロリロリーン
咲人はすぐに、3枚ん添付写真つきで返信してきた。
『どうぞ。でも読んだら何か感想が欲しいよ』
その手紙は
ラブレターだった。
続きます!
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