みちのく童話会スタッフブログ

第3回を持ちまして、みちのく童話賞は終了ました。これからはみちのく童話会として、活動をしていきます。

みちのく童話会

 東日本大震災から10年のくぎりの2021年、東北地方の皆様から第1回みちのく童話賞を開催し、第3回まで、たくさんの作品、作家との出会いがありました。  童話賞終了後は、みちのく童話会として、活動を続けています。

岩手の図書館と東日本大震災のこと

2020-05-13 | スタッフ便り

   みちのく童話賞スタッフだより。本日は、岩手県立図書館に勤務している岩崎まさえさんのレポートです。

 岩手県は、いまだ新型コロナ感染者ゼロ。皆さんが第一感染者にならないよう、緊張して暮らしているという話も聞こえています。図書館の職員の皆様も同様でしょう。頑張れ。(お)

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  佐々木ひとみさんが河北新報に連載中の『がんづきジャンケン』は、東日本大震災が 舞台です。作品を読みながら、あのときはいろんなドラマがあったなぁと、振り返っています。

 私の勤める県立図書館でも、忘れられない出来事がありました。

 岩手県内の図書館をつなぐ、搬送便とよばれるコンテナがあります。県立から市町村立

に毎週一往復していました。連絡資料や本の相互貸借などに使われていました。あの大地震後、この搬送便はストップしました。各地に甚大な被害が出ていたからです。

 ところが震災から一ヶ月後、止まっていたはずの搬送便が、日が暮れようとしていたときに届きました。陸前高田市立図書館からでした。沿岸部にあるその図書館の職員は、全員死亡もしくは行方不明というときでした。

 コンテナには『ありがとうございました。3月11日』という言葉が添えられていました。大地震が起こる、ほんの少し前に搬送業者に託されたものだったようです。

 届いた資料は、津波に襲われた事を知らせるように、砂混じりで濡れていました。すでにカビが生えているものもありました。

 資料の修復に携わった職員は、みな無言で作業をおこないました。感謝の言葉を添えてくれた職員のこと、搬送車の運転手のこと、だれもがこの資料の辿った道のりを思うと、胸が塞がるようでした。 

 震災後、県立図書館には『震災関連資料コーナー』が設置されました。歳月と共に、想定外と呼ばれたあの震災も風化していきます。しかし、どんなに時を経ても、このコーナーは決して無くしてはならないと、職員は誓っています。

 このコーナーには、児童書も入っています。堀米薫さんの『きずなを結ぶ震災学習列車』『思い出をレスキューせよ!』『語りつぎお話絵本3月11日』も、所蔵されています。                               岩崎 まさえ

 

                                                  


野泉マヤの妖怪現地調査①「狐の嫁入りがもたらした美味しいお米?」

2020-04-15 | スタッフ便り
野泉マヤさんは、宮城県在住。みちのく童話賞HPのスタッフブログをごらんただくと、《東北妖怪文化研究センター宮城オフィス代表》ともあります。妖怪にまつわる文献を調べ、実地調査という活動をやってらっしゃいます。
 
今年は、河北新報に「妖怪ラボ」という作品を連載しました。
 
みなさんも、身近な妖怪、地元に伝わっている妖怪の話を見直してみませんか? そこから新しい童話が生まれるかもしれません。(お)
 
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野泉マヤの妖怪現地調査「狐の嫁入りがもたらした美味しいお米?」
 
*妖怪(地域の伝承)を調べていくと、古の人々の姿を垣間見ることができます。
今回は、狐の嫁入りから見えたものをご報告いたします。
 
【狐の嫁入り】
怪火が列になって連なり、嫁入り行列の提灯のように見えるもの。
(晴れているのに雨が降る天気のことも、狐の嫁入りと言いますが、今回は提灯行列のほうをクローズアップします)
 
全国あちこちに伝わる「狐の嫁入り」ですが、宮城県大崎市伊場野にはこんな話が伝わっています。
 
 
昔、伊場野という地域の上の方と下の方の両方に狐が棲み、村人たちと慣れ親しんでいた。
ある年、上の方に棲むオスの狐と下の方に棲むメスの狐が結婚することになり、嫁入り行列を行った。
その様子は、山裾の田んぼ一帯に連なる提灯の大行列で、
これを見た村人たちは、まことに不思議な光景であると、夜を徹して見送った。
 
 
さて、その現地へ行ってみました。
 
そこで気づいたことは、山裾に見られたと言われる狐の嫁入り行列と、
江戸時代に人力で掘られた水路(荒川用水)の場所が重なるということです。
 
現在のように精密な測量器具のない時代、土地の傾斜を測るためには提灯が使われたと言われています。
昼間は視覚情報の量が多すぎて誤差を招くため、
夜間の暗がりの中に灯りをともすことで、正確な高低差を割り出すという方法です。
昔の人って、賢いですね~。
その方法を、新潟県の糸魚川市では再現したことがあります。
 
なるほど、「提灯測量」→「提灯行列」→「狐の嫁入り」に見えるかも!
 
提灯測量のようすを遠くからながめた当時の人々は、「ありゃあ、狐の嫁入りだなあ」なんて言ったのでしょうね。
もちろん、測量であることを知っていた人もいたでしょうけれど、
子どもや孫に「あれは何?」と尋ねられたとき、「狐の嫁入りだぞ」と答えた大人もいたかもしれませんね。
その方が、ウイットに富んでいる気もします。
 
それにしても、昔の人の知恵はすごい。
そうやって作られた水路によって、豊かな田園、そして美味しいお米がつくられるようになったのですね。
 
ちなみに、この伊場野地区には「伊場野芋」という伝統野菜があります。
とってもねっとりとして美味しい里芋で、サンドイッチマンのお二人も絶賛したそうです。
 
以上。妖怪レポーターの野泉マヤでした。
 
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うちの舅も、狐の嫁入りを見たことがあると言ってました。北上川の対岸の男山に点々と。もしかしたら、測量だったのかもしれませんね。
 
野泉さんの妖怪レポート、まだ続くことを願って①とさせていただきました。(お)
 

新型コロナウイルス対応~秋田市の小児科医井嶋敦子さんから

2020-04-11 | スタッフ便り

みちのく童話賞スタッフは、児童文学者とは別の顔(仕事・活動・他)を持ってる方も多くいらっしゃいます。ブログでは、いろいろな声や情報も、お伝えしたいと思っています。第一弾は、秋田市の小児科医でもある井嶋敦子さんです。

日々、新型コロナウイルスから子ども達を守りつつ、みちのく童話賞のHPを作ってくださいました。

今医療機関ではどういう対応をしているのか、ぜひお読みください。・・これ、日本中の方に読んでいただきたい記事です。(お)

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小児医療の現場から

HP担当スタッフ井嶋敦子です。
ふだんは秋田市追分にある今村記念クリニックで小児科医-後藤敦子として働いています(ペンネームは旧姓です)。
新型コロナで緊急事態宣言が数都府県に出ている今、小児医療の現場では何が起きているかをお知らせします。

 
流行地によって、また病院とクリニックで対応は違いますが、
基本的に小児科医のスタンスは決まっています。
「子どもたちとその家族を守ること」
 
これは新型コロナからだけじゃありません。
小さな子どもほど免疫がなくて、さまざまな感染症にかかりやすい。
保育園児など今も、インフルエンザ・溶連菌感染症・ヒトメタニューモウイルス肺炎・中耳炎……。
現在進行形で感染症にかかっています。
 
小児科医は毎日どうしても発熱児を診察しなければなりません。
そして、予防のためのワクチンも接種せねばなりません。
さらに、発達の遅れや基礎疾患をみつけるための乳幼児健診も欠かせません。
 
単科の小児科開業医では、感染症や熱のあるお子さんと、ワクチンや健診などのお子さんの入口と診察室を別々にしています。
実際、私の後輩の小児科医(とても優秀なDrです)の医院では、北海道から来た新型コロナのお子さんを診ました。
その時に、他の人たちにリスクが及ばないよう、ゾーン対応して感染波及を防ぎました。
2週間のあいだ対面診察はできなくなったけれど、まさに理想的な対応だったと思います。
 
けれど私のクリニックでは、小児科・歯科・整形・リハビリがあります。
入口は一つで、ゾーン分けができません。
なので、午前は発熱児などの一般診療、午後はワクチンと乳幼児健診と分けています。



受付した患者さんは、数組だけが待合室で距離を取って待てるよう、そのほかの患者さんは車で待機。
余裕ができたら携帯電話に電話して来てもらっています。
 
診察は、竹布マスクの上にサージカルマスクをつけ、ゴーグル型のメガネをかけて行います。
ひとりが終わると手洗いをして、ステトやペンライトなども消毒します。

インフルエンザなどの迅速検査も極力行いません。
どうしても検査が必要なときは、PPE(手袋・予防衣・ゴーグル・マスク・キャップ)が必須です。
このような感染予防ができていれば、もし新型コロナ患者さんを診察しても「濃厚接触者」にカウントされません。



由利本荘市で新型コロナ患者さんを診た医院ではマスクをつけておらず、2週間の休院となりました。
 
秋田県は新型コロナ陽性者が10名台なので、まだリスクは低い状態です。
でも流行地の小児科医たちは、もっともっと危機感を持っています。
濃厚接触者となった、あるいは感染した子どもたちをどう診ていこうか、メーリングリストで議論している最中です。
スマホを使ったオンライン診療をしていくしかないようなのですが。
 
自治体の子育て関連事業も大きく変化しています。
まず、秋田市と潟上市では、集団の健康診断、1歳半と3歳健診が中止になりました(井川町は小規模なので集団継続ですが)。
代わりに医療機関での個別健診となったので、視力・聴力・尿検査なども加わり、今以上に忙しくなりそうです。
 
子どもたちが成長するには、「多くの人と接触すること」が必要不可欠です。
触れあって、大声を出したり笑ったり泣いたり、失敗したり。
そんな経験の積み重ねができなくなるとすると…。
 
でもこれは、本を、物語を読むことで、多少の補完はできるはず。
いつもは読まない子どもたちこそ、今この時に、読んでもらいたいです。
そんな子どもたちのためにお母さんが書いた童話を、「みちのく童話賞」に応募くださったらいいな。
そんなことを考えています。 (井嶋敦子…小児科医・後藤敦子)