☆愛猫ココノスケ親ばか日記♪

約15年間家族の心を支え続けたキジネコ
ココ嬢の声はもう聞こえないけど
飼い主が思い出を綴ります

水木先生と戦争

2024年08月16日 | 本 / 音楽 / 映画
去年から今年のこの時期までに読んだ本の中で、印象的なものをご紹介します。

「水木しげるのラバウル戦記」
   水木しげる・著 (ちくま文庫)

水木先生が体験した戦地での生活を、ページの上半分を絵で表現され下半分の体験記が実に率直で時にユーモラスに書かれています(ご本人はそういうおつもりはなかったと思いますが)
特に、現地でのスケッチが素晴らしく、原住民と仲良くなってモデルになってもらって描いたそうですが、その人の仕事ぶりや考え方なども丁寧に説明してあるのです。
なぜ現地でスケッチなど出来たのか、それは下士官に、自分は絵描きなので紙と鉛筆を下さいと頼んだからなのですが、それを認めた下士官も優しい人だったわけです。(これは終戦になってからのことです)

また現地の人だけでなく、同じ兵隊仲間などもスケッチさせてもらってその人のエピソードも付けてました。
先生のコミュニケーション能力と観察力は相当なものだと感心しました!

先生は現地でそこの住民のところに物々交換に行ったり、時には泊まりに行ったりして「楽しい」ような生活もしていた印象です。
これは元来、先生に偏見も差別意識もなくそれどころか現地の土と共に生きる人々に敬意さえ払っていたからだったのでしょう。自然の中で生きることに憧れを抱いていて出来るなら終戦になっても「ここに残りたい」と上層部に言ったそうです。
「一度、日本に帰らないと駄目だ」と断られたのは言うまでもありません。

ところで、スケッチ以外の部分の絵も相当細かくリアルに描かれていますが、それは後に(昭和24年頃)思い出しながら描いたそうです。
美しい自然や部隊の様子などが観てきたように(実際観たのですが、眼の前で描いたように)丁寧にリアルに描かれています。先生は記憶力も抜群だったのです!

しかし、これはあくまでも先生が楽天的な性格のお陰で何とか戦地で生きて来られたわけですが、
この作品↓

「総員玉砕せよ!」
   水木しげる・著 (講談社文庫)

この作品は全ページ漫画で描かれています。
本当は壮絶な体験だった戦争がここにはあります。
理不尽な体罰(ビビビビビッというビンタ)やいじめなどほぼ実話として描かれています。
地獄のような様子まで、劇画タッチで繊細なペン運びで魅入ってしまいます。

ラバウル戦記の方にも過酷な場面はありましたが、どちらかと言うと「観察記録」という印象でした。
が、この「総員玉砕せよ!」はタイトルでも分かるように「玉砕」という言葉に隠された戦争の狂気、虚無感、おぞましさが漂っていて心身共に冷えて行く感じがします。

先生が実体験としての生々しさをこの作品に描いたのは、亡くなった戦友のためだったと何かで聞いたことがあります。

この戦争体験が、後の水木先生の多くの作品に少なからず影響を与えたと感じます。


※ 長々と読んで頂いてありがとうございます。
 風化させたくないあの戦争記録と記憶、8月は頭が充血しそうですが多くの方々のためにも祈りの月にしたいと思います☆


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3 コメント

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Unknown (leelin)
2024-08-17 13:06:13
こんにちわ。

水木しげる、好きな漫画家です。
最近はネットフリックスで、鬼太郎誕生ゲゲゲの謎を見ました。
観ながら思ったんですが、、これは水木先生の戦争体験かな、なんて感じたシーンがいくつかありました。

ラバウルの戦争映画をいくつか見たことありますが、水木先生、上官からもいじめられたと聞きます。
この時代パワハラなんて言葉もないし、激戦地で生き残って帰国すると、裏切り者とかさげすまれたんでしょうね。
生き残るって大変なことなんだからそういう兵士こそ称えられなきゃいけないのに、ほんとにひどい時代でしたね。

「楽看的」の言葉で思い出しましたが、タイタニックで生き残った人の中に、確か厨房のおじさんで酔っ払って海にほうり出されてもルンルン気分で浮かんでて助かったって話がありますが、困難を生き残るには楽天的でいるというのはすごく大事なことかもしれないとココの母さんの記事を読んで思いました。

私だったらこんなジャングル絶対嫌ですが、ここに残りたいなんて水木先生すごいな。

妖怪になって甦って、また楽しい漫画描いてほしいです。

こんな激戦地でよくぞ生き残った!と感激します。
水木先生が楽看的という話で思い出しましたが、

終戦の月にふさわしいいいお話聞かせてもらいました。
戦争を題材にした話には残酷な場面も出てきますが、最近はこういう残酷な場面は子供に見せられないのでカットするという話を聞きました。なんだかなぁ~ともいますが。
戦争を二度としないさせないためにも、子どもであってもすべてを見せることも必要だというのが私の考えです。

戦争の話になると体に熱こもって長くなりそうなので今日はここまでにしますね。

今回ご紹介いただいた本、図書館で探してみます。
返信する
訂正 (leelin)
2024-08-17 13:09:09
ごめんなさい。
この行(👇)削除したつもりが消えてなかったです。
「こんな激戦地でよくぞ生き残った!と感激します。
水木先生が楽看的という話で思い出しましたが、」
返信する
leelinさん、こんにちは☆ (ココの母)
2024-08-17 16:58:51
コメント、ありがとうございますm(_ _)m

その2行、削除されなくても全然大丈夫と思いますけど(⁠θ⁠‿⁠θ⁠)
だって本当に、水木先生は激戦地で戦って生き残られたからこそ、戦争の理不尽さや愚かさを私達に作品を通して教えて下さったんですものね☆

leelinさんがご覧になったという「鬼太郎誕生・・・」の作品は、去年だったか映画館でもヒットしたというアニメ作品ですか?
それ、私もすごく観たかったんです!

水木先生は背が高くマイペースな性格でもあったので、上官からはかなり殴られ理由もなくいじめられたらしいですね。
ラバウル戦記はイラストや絵が中心なので、先生の記憶の中での現地人に対する友愛の気持ちや自然の美しさへの畏敬の念が主に描かれています。
ジャングルの中の不思議な体験も記されていて、後の作品「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪の原型みたいなものが出て来ました。
(ただ、この文庫本は文字がとても小さいですから明るいところで読んだ方がいいかと・・・(⁠•⁠ ⁠▽⁠ ⁠•⁠;⁠)

総員玉砕せよ!は先生の「怒り」を感じました。
力を込めたペンの中に、失った戦友たちへの鎮魂の思いがあるのではないか、と痛感しました・・・

私もleelinさんのご意見に賛成です。
子どもだから残酷なシーンは見せない、というのはおかしいと思います。
そのシーンに視聴者や読者への問いかけや訴えるものがあるなら、見せないことの方が後々の弊害が出て来るのでは?と思います。
実際、私は小さい頃よく映画に連れて行ってもらいましたが、太平洋戦争やひめゆり部隊なども結構観ました。
身内に戦争で亡くなった人がいる家庭が多かった時代ですから、みなそれぞれの想いで映画も鑑賞したのではないでしょうか。
そういう時代ではなくなった現代だからこそ、戦争ってそういうもの(残酷なもの)なのだよ、ということを子どもさんにも示してあげた方がいいですよね。

あ、私も長くなりそうだからこの辺で(^_^;)

leelinさんとご一緒に考える機会を頂けて、感謝ですm(_ _)m
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