京都逍遥

◇◆◇京都に暮らす大阪人、京都を歩く

第8回Woodyコンテスト入賞作品展

2025-02-01 20:53:46 | アート・文化

京都府広報誌1月号に、Woodyコンテスト入賞作品展の告知があった。1/27(月)~31(金)の期間中に行くつもりで置いていた広報誌。片付けの最中、最終日の31日にたまたま見つけて出かけることができた。場所は京都府庁旧本館としか記載されておらず、行けばわかるだろうと行ってみたが、入口に案内の貼紙もなく、一周したが、わからない。結局正面階段を2階へ上がり、左手すぐの部屋から続くところが会場であった。

Woodyコンテストは京都府主催で平成29年に始まったらしく、木造住宅部門〈一般の部〉〈学生の部〉、木製家具部門に分かれ、毎回、発表されるテーマに沿った作品のアイデアを募集しているようだ。第8回となる2024年のテーマは、木造住宅部門で「北山丸太を活かした建築」、木製家具部門で「バナキュラーチェア/風土の椅子」であった。

Woodyコンテスト/京都府ホームページ

木造住宅部門入賞作品はパネル展示のみで少し寂しいが、木製家具部門は会場中央に実物が展示されていた。

間取り図を見るのは楽しい。広い敷地を必要とするもの、現実的に建築可能そうなもの、意欲的な夢のあるもの。気に入ったものもあった。

☆木製家具部門

入口付近には、これまでの入賞作品集が置いてあり、冊子見本を見ることができる。また、ここ3回分の冊子は持ち帰ることもできた。

帰宅後冊子を読むと、中央に展示されていた椅子は、どれも今回の入賞作品ではないことがわかった。上の写真「☆木製家具部門」にある左側の肘掛け椅子は、第6回の最優秀賞‟KITAYAMA”である。第6回の冊子によれば、「『KITATAMA』は主催者が制作して、無印良品 京都山科のMUJI SUPPORTでさまざまな暮らしの相談に応えるカウンセリングコーナーの椅子として使用されます」ということだ。

同右側のフォールディングチェア風の形状のものは第7回の最優秀賞‟Shikkuri”である。第7回の冊子によれば、「試作を重ね強度試験を経て京都駅ビル4階南広場『みんなの広場ーうっどすくえあー』に設置され、ワークショップや様々なイベントに利用される椅子となります」という。

さて、今回第8回の最優秀作品‟Lattice”は、「主催者が実製作して京都生協コープ二条駅2階フリースペースKYOTO Co-Labに設置されこの場を象徴する風土の椅子として利用していただきます」とある。まだ完成していないのだろう。

それぞれの場所に行ったとき、作品を見て「ああそうだった、入賞作品だ」と思い出すことだろう。

 

京都府のスギ・ヒノキの人工林の約7割が50年ものだという。それが「利用期を迎えて」いることから、「『木の文化』の継承」のため、「木材の新たな利活用方法を開拓」しようと始まったコンテスト。花粉症の身としては、使えるものは伐採して利用し、無花粉スギに植え替えてもらいたいので、これはいい取り組みだと思う。ただ、「新たな利活用方法」というなら、住宅・家具部門だけではなく、その他部門もあっていいのにと感じた。年輪の美しいスギも、香りのあるヒノキも、材木を扱う人なら、きっとさまざまなアイディアがあるだろう。範囲が広くなると、審査が難しいだろうか。

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京の冬の旅――東本願寺諸殿,東本願寺宮御殿・桜下亭

2025-01-29 17:05:24 | まち歩き

1/10~3/18の期間、第59回京の冬の旅として寺院が所蔵する非公開文化財の特別公開が行われている。今回は、「世界遺産登録30周年」「洛陽三十三所観音霊場再興20周年」というサブタイトルもついている。京都総合観光案内所に置いてあったパンフレットの冒頭には、

「『古都京都の文化財』が世界遺産に登録されてから30周年を迎えるのを記念して、世界遺産寺院の通常非公開の文化財を特別公開。また再興20周年を迎える『洛陽三十三所観音霊場』の寺院にもスポットを当て、普段は見学できない庭園、仏像、襖絵、建築など様々な文化財が期間限定で特別公開されます」

とある。

世界遺産関連では9箇所、洛陽観音霊場関連では3箇所、そのほか3箇所で、全15箇所であるが、うち東本願寺のみ宮御殿・桜下亭と、予約の必要な諸殿(宮御殿・桜下亭含む)とで2箇所と数えている。予約はWEBのみで当日15分前締切とあるが、期間中の金・土のみ、各日2回であることから、早めに予約しておかないと入場は難しい。

ほかに予約が必要なのは、西本願寺書院・経蔵である。同じく予約はWEBのみだが、こちらは1/20~3/4(1/27~31、2/2・15・16を除く)の期間で、各日1回(2/1・8、3/1のみ2回)とある。

完全予約制の2箇所については「僧侶がご案内する特別拝観」であり、大方が拝観料800円であるのに対し、2200円、3000円となっている。ほかにWEB予約優先制の寺院が2箇所あり、慈照寺本堂・弄清亭、天龍寺祥雲閣・甘雨亭が1300円(拝観料含む)である。また、寺院によっては料金や公開時期、休止日などもあり、パンフレットの注意書きを読み落とさないよう気をつけなければならない。

さて、ここからがようやく東本願寺である。

最初に阿弥陀堂から解説が始まる。前述のパンフレットには「靴下等をご着用ください」と注意書きがあるが、実際のところ、靴下2枚履きにするのが適当だろう。寒すぎた。阿弥陀堂ではタイミングの悪いことに、障子が閉まっていて中が見えない時間帯。なお、特別拝観後の時間帯には、開扉されていた。

続いて、御影堂(ごえいどう)の解説。

次に宮御殿へ。障壁画を見せていただく。

部屋の外から障壁画を眺めていたところ、立入禁止の札を避けて、中に入れてくださった。

 

襖絵には、修復のあともみえる。このようなやわらかい絵柄の障壁画は珍しく、興味深かった。

 

 

桜下亭(撮影不可)は、松・竹・梅の襖絵のある三部屋と茶室から成る。襖絵はいい絵だなと思ったら、円山応挙の画なのだという。宮御殿の襖ほど近くに寄ることはできないが、部屋に入って見ることはできた。釘隠しは楓柄。東京から移築されたという茶室は、天井が低く薄暗い。「桜下亭」の額の隷書体の文字は、とても良い字だった。

続いて、大寝殿へ。

大寝殿の南側には菊門。

大寝殿と菊門の間の地面に、謎の形状のものが。このあと、これが何なのか判明する。

新しい建物、パネル展示のあるギャラリーを通って能舞台を庭越しに眺め、大寝殿で特別拝観は終了。予約制である割には、ツアーの人数が多すぎると感じた。イヤホンもあって解説は聞けるのだが。

解散後にギャラリーから地下に続く階段へ。

☆早川鉄兵氏による作品

見応えのある大作で、帰宅後に検索。金沢出身で滋賀にお住まいの切絵作家さんらしい。ほかの作品もいくつかネットで見ることができ、繊細さと迫力が同居する面白い作品だった。

☆地下の視聴覚ホール

左に見える視聴覚ホール(扉は閉まっていたので、内側は見ることができなかった)が、さきの謎の答えだった。この地下の空間は、あの高松伸氏による設計らしい。地下に巨大な空間があることに大きな驚きを覚えた。大窓のドライエリアで、地下ではあっても圧迫感は感じない。

ギャラリー入口には「彫刻ガイドマップ」が置かれていた。これを最初に見たかった。次に行くときには、持って行こう。

 

最後に、御影堂の額について。

解説にはなかったが、明治天皇による勅額である「見真」額について検索すると、さまざま問題があることがわかった。「見真(けんしん)」は、漢訳『無量寿経』から採られたようだ。

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肉眼清徹、靡不分了。天眼通達、無量無限。法眼観察、究竟諸道。慧眼見真、能度彼岸。仏眼具足、覚了法性。以無礙智、為人演説。          ⦅上段:漢文》

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

肉眼(にくげん)、清徹(しょうてつ)して、分了(ふんりょう)ならざるなし、天眼(てんげん)、通達(つうだつ)して、無量無限なり。法眼(ほうげん)、観察して、諸道を究竟(くきょう)す。慧眼(えげん)、真を見て、よく彼岸に度(いた)る。仏眼(ぶつげん)、具足(ぐそく)して、法性(ほうしょう)を覚了(かくりょう)す。無礙(むげ)の智をもって、人のために[法を]演説す。      ⦅下段:書き下し文⦆

 

 以上、『浄土三部経(上)』ワイド版岩波文庫 無量寿経(漢文書き下し)

   仏の説きたまいし無量寿経、巻の下 [四、浄土に往生せし者の得益]

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

かれらは肉眼でよく見分け、超人的な透視力(天眼)を引き起こし、智慧の眼で道理を理解し、法の眼によって彼岸に達し、目覚めた人(=仏)の眼を達成し、[理法を]示し、明し、詳しく開示して、とらわれのない智慧を引き起こすのだ。

   『浄土三部経(上)』ワイド版岩波文庫 無量寿経(梵文和訳)

     38

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見真は明治天皇が親鸞聖人に与えた諡号だが、1981年には当該宗教法人において「見真大師」の名称を使用しないことが決まっている(*大谷派「見真額」下ろさず – 宗教情報リサーチセンター)。これ以上、深入りしないでおく。

 

1/30追記:講談社学術文庫『本願寺』井上鋭夫著の第5章も参考になる。

 

 

 

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特別展 二条離宮

2025-01-26 21:06:57 | まち歩き

二条城本丸御殿の修理完了、同一般公開が昨年9月に始まったことで、関連イベントが多く開催されている。寺町通の京都市歴史資料館でも、2024/11/30ー2025/2/22の期間、「特別展 二条離宮――元離宮二条城 本丸御殿公開記念――」が開催中である。

1/26の学芸員によるギャラリートークは、大変な盛況ぶりであった。内容は一般には知られていない新しい知見も多く詳細であるが、解説はわかりやすい。ギャラリートークは2/18にもあり、歴史好きな方にはぜひおすすめしたい。

写真一枚目のポスターと同じ体裁のチラシを京都駅前の観光案内所でもらっていた。そのチラシの裏側は次の通り。

「菊紋装飾」とあるのは、二の丸御殿大広間南の破風板に取り付けられていたものであるらしい。2018年9月の台風で剥がれ落ち、その衝撃で花弁に歪みが出ているとのこと。この花弁は16枚。皇室の紋章が十六八重表菊と定められたのは1926年の皇室儀制令なので、明治17(1884)年に離宮となり、同26(1893)年から二の丸御殿の改修で取り付けられた菊紋が十六一重表菊であるのもわかる。

花ついでに、今回展示されていた本丸御殿の御常御殿渡廊下の杉戸絵についてもひとこと。ポスター左下の犬の絵は、その杉戸絵のものである。引き違い戸なのでバラと仔犬を描いた板戸が2枚あり、展示ガラス越しにかなり接近して見ることができる。描かれたのは江戸時代であるらしい(展示資料一覧より)。江戸の時代にバラとは、粋である。そぐわない、とも思う。本丸御殿は、1894年に桂宮御殿の一部を移築したもので、その後の修復の有無は不明。仔犬7匹は、特に白色が退色しているが、上部に描かれたバラは、白色も濃ピンク色も鮮やか。正面を向いた仔犬はかわいらしいが、横顔の2匹はどうだろう。別人の加筆ではないかと思うほど、違和感を感じた。

鯱瓦2点(北大手門櫓・西南隅櫓)は、全く顔つきが違う。ともに江戸時代の作(展示資料一覧より)であるらしいが、違う地域で造られたもののように感じた。土も違うように見える。成分分析すれば、地域を特定できないだろうか。作り手が違う、あるいは工房が違うだけなのか?

鯱は「頭はトラで、背にとげのある常に尾をそらした魚の形をしている(集英社『国語辞典』)」ものだが、北大手門櫓の鯱瓦の頭は寺院の天井画の龍のよう、西南隅櫓の鯱瓦の頭は鬼瓦の顔のようだ。検索しても、トラの頭に見える鯱瓦は見つからなかった。

市歴史資料館では、パンフレットを販売している。展示解説は写真撮影禁止なので、パンフレットを読んで再確認。

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二条城の透かし手入れ

2025-01-25 23:20:05 | まち歩き

半月ぶりに二条城南側の押小路通を歩いたら、生垣がきれいに剪定されていた。たしか秋にも整えられていたように記憶する。

外周の松の剪定と透かし手入れが今週から始まっていたようだ。

☆1/20はしごをかけて剪定作業中

☆透かしが完了したアカマツ

☆1/20剪定前のクロマツ

☆1月22日剪定が進む

透かし手入れがなされると、きちんと感が増して、清々しい。この木一本の松葉を手で摘み取る作業を思うだけでも、植木職人さんのすごさを感じる。まだ樹木のお手入れはしばらく続くだろう。この手間をかけることで、世界遺産二条城の美観は保たれている。

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新春の二条城

2025-01-24 21:32:36 | まち歩き

正月1日、東大手門入口には新春のポスターが、門の脇にはきらびやかな屏風が置かれていた。

子ども用のレイヤーカードのように、レンチキュラーというのか、見る角度によって画像が違って見える。ほんの数日前にも、屏風はあった。小正月を過ぎて20日前後まで飾っていたようだ。今日、前を通り過ぎるときには見かけなかった。

さて、1日に入城した際は、御殿は観覧不可で、お庭と展示収蔵館のみ見ることができた。

☆二の丸庭園こも巻きのソテツ

☆展示収蔵館前ポスター

昨夏にも、白い猫を二条城で見かけた。同じ猫だろうか。御堀端を急いで通り過ぎて行った。

二条城の向こうに沈む夕焼け。

 

ところで、1月4日~27日の期間、世界遺産登録30周年記念事業として「二条城の早春2025」と銘打ち、二の丸御殿〈大広間〉「帳台の間」が初公開されている。訪れたのはぼたん雪が降り積もる日だったが、外国人旅行者など非常に観覧客が多かった。帳台の間は、一の間(上段の間)に入室する将軍のための前室であったのではとされている。以前訪れた際は、一の間の東側に赤い立派な房のついた引手が目立つ帳台襖が締め切りだったが、今回、襖は開け放たれている。座敷越しでは遠くてよくわからないと思ったが、廊下をまわると帳台の間の北側襖も開けられていたので、そちらからはゆっくり眺めることができた。

当初描かれた花鳥図と、二条離宮となった時代に御所の障壁画を再利用した名所絵の模写がそこにあった。他の部屋と同様、本物の障壁画は展示収蔵館におさめられ、適宜展示されている。

収蔵館では2月23日まで、〈大広間〉帳台の間と〈黒書院〉帳台の間の障壁画のうち、皇室の離宮となった時代に御所から転用された障壁画の原画が公開されている。金具跡、色の違う金箔など、転用の痕跡が明らかにわかる。

朝、真っ白の世界になっていた二条城。観覧を終える頃、雪はすっかり融け、いつもの風景に。

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