京都人からすれば、亀岡を「京都」と呼ぶのは許し難いことだろう。生粋の京都人にとっては、上京・中京・下京だけが京都であり、左京・右京・東山・北区はぎりぎり許せても、その他の区、宇治なども「京都」の呼称にふさわしくないということになるらしい。しかし私は大阪人。亀岡は京都府なのだから、ここに書いて悪くはないはず・・・。
亀岡駅北口から、北へ徒歩7分。右手に保津川下り乗船場を見て、正面に旧亀岡商工会館、その西隣に目指す操車場はあった。森博嗣の小説好きの友人が、その小説家の趣味である鉄道模型にまで興味を広げ、行ってみようと私を誘ったのである。
そこは、製作した蒸気機関車模型を実際に動かす、大人のための場所。乗り鉄、撮り鉄などの分類で言えば、模型鉄ということになるらしい。その中でも、実際に作る人たちをモデラーと言う。保津川ライブスチームクラブのメンバーの話では、その方の社交ダンスの友人である大阪・安正金属の社長が、この土地を取得し、提供しておられるらしい。
200mのエンドレスのレールが二条。かなりの広さである。亀岡駅北側は田園風景が広がっており、遠くに見える山も、なかなかいい。転車台や、作業場、駅舎、ホームまである。写真は、駅舎。「保津川駅」とあるが、保津川駅で降りたことがないので、これが実際のものと似ているのかどうかは分からない。
さて、今日の眼目は、今月中旬の大阪・阪神百貨店「鉄道模型フェスティバル2009」に出品されていた佐藤隆一氏による「ワシントン4-4-0 1867」の、初操業を見ることである。写真はWASHINGTON。
この、部品も、エンジンも、全て佐藤氏が作っている。さきの森博嗣のブログによると「西の名人」とのこと。
石炭を小さなスコップで投入し、ガソリンを染み込ませた木切れに火をつけて、動かし始めた。先頭に乾電池剥き出しのモーターを取り付け、しばらくの間、ものすごい煙を排出させている。と見る間に、手前から元気の良い蒸気が噴き出し、走行準備は整った。佐藤氏が一回りして、微調整。その後、連結器を取り付け、私たちも乗せてもらった。びっくりするほど滑らかな走行。鉄橋を渡るときもそれらしい音がするし、大人が夢中になるのも分かる。
佐藤氏にいろいろ聞いた。CADで設計図を描いて、金属板を加工し、組み立て、彩色。文字や飾り模様などは、PCでシールを作成するとのこと。完成までに14年かかったこと。百貨店に出品した多くの作品は、本業の時計屋さんの店舗内に置いていること。「どんなときが一番嬉しいですか?作っているときと、出来上がったときと、こうやって走らせるときと」という質問には、「部品が思った通りに仕上がって、きちんと合ったときかなぁ」と答えてくださった。物を作る人は、やはり、作っているときが一番楽しいものなのだ。仕上がった満足、動く楽しさ、というものもあるけれど、作る過程、それが楽しい。それはとてもよくわかる。
奥様とも話をさせて頂いた。関西テレビの「よ~いドン!」で「となりの人間国宝」に認定された取材の話や、海外の模型雑誌に載った話、エンジン製作だけ頼まれるという話、岡山や白馬で走らせた思い出・・・と、話は尽きない。そして「すごいでしょう」と佐藤氏を褒める、その様子がとてもいい。きっと、奥様の理解あってこそ。
京都・七条の模型店のオーナーも来られた。自作の蒸気機関車を走らせる人、電車を走らせる人も。ここでは毎週日曜に、こうして趣味の人が集まり、自慢の機関車を走らせているのだそうだ。ワシントンを「宝物みたい」と評する奥様は、「もう、外を走らせないで欲しいわ」と言っておられたし、佐藤氏の作品を、ここで見ることができたのは幸運だった。
朝日新聞PR版『あいあいAI京都』から、取材が来た。来月あたり、記事になるのだろう。
二時頃に、片付け始める。機関車と運転席は、それぞれ、線路つきの枠に入れられ、自家用車に載せられた。
近くに住んでいるのに、こういう所があるとは知らなかった。鉄ちゃんではないけれど、きれいな作品を見せていただいて、とても満足。誘ってくれた友人にも感謝。
9.16追記:
同クラブは、9/20(日)・21(月)10:00~15:00、第二回公開運転会を開催する。通常、毎週日曜日は会員らが不定期に操車するが、この両日は、会員のほか関西在住のライブスチーム所有者の作品が集まるとのこと。作品を見て楽しむだけでなく、体験乗車もできる。趣味の大人だけでなく、乗り物好きの子どもにもオススメ。亀岡駅北側のコスモス園も、そろそろ見頃かもしれない。