詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

川に沿う

2016年05月23日 | 
名も知らぬ草花が空に向かって
いっせいに口を開けている
幼い子らのように
それはよろこばしい
無数のほころび

川に許された広さ分の空が
青さを忘れるほど青いとき川は
横にゆったりする

葉っぱの一枚一枚
緑の濃淡を丹念にあぶりだして
樹は丸々と狂おしく立体的になった

犬を連れた人
恋人を連れた人
子どもを連れた人
伴侶を連れた人
魚が釣れた人

川に沿って歩くとき
人びとは似ている
添わねばならないから
表面張力に浮かびながら
水底の胎動を感じている

キッチンの白いまな板に
注ぎ込む川の光
抜けなくなった指輪をはめている手が
ふっくらと動きをとめる
むきかけの
アボカド

進路に迷った子どもたち
庭の草むらに自転車を置き去りにして
駆け抜けて行った
空気の中に抜けあとが残っている
屋根の上へ投げたばかりのように
すうすうする
いつまでも

白い鍵盤に
黒鍵の影が斜めにかかる
それら鍵盤のワルツを
ピアノの蓋の蝶番がじっと見つめている
演奏者の顔を知ることなく

永いワルツはくるくるまわりながら
カーテンの隙間を通り川べりの
タンポポやシロツメクサのほうまで
土手を駆けのぼっていく

太陽が見えなくなると
土手の下のツツジが燃えるように赤くなる
同じ色に染まった空とスカート
秘密の談義
たとえば
さみしさについてなど

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