詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

夕焼け

2018年10月08日 | 
意図せずに素晴らしい時はやってくる

人恋しさとなんとはなしのみじめさと
もてあまして
すこし歩こうと
駅のあてもなく歩いて行くと

空が青く光り始め
それに応えるように街灯がともる

ひかりが首を傾げ
外階段やテラスの屋根の骨が
くっきりとした斜めの線を
壁や窓に映し出すと

そこかしこで
時を超えた記憶が
確かに佇み
呼吸しているのが見える

セロリーのように透き通って
すーとする匂い
忘れてばかりだけれど
本当にあるものなの

セロリーのようにまっすぐに
透明な青の中で
通っていた色が
時を超え生死をも超えてあった
その通り道があったことを
おぼえている

バス停を見つけてついに乗ってしまう
座れないので一番前に立って
進む先を見張っている

仮面を外したひとたちが
子どもを連れて買い物している
経験でなく
未知という神秘的な灯りのもとで

下界はもうほとんど夜
なのに遮られた視界から
見上げていると
建物の粗野な横顔に
不思議な明るさがある

大通りから横に入る道の先には
泡立つ金色のビールのような夕焼けが
まだ残っている
通り過ぎてしまいながら
胸から泣き出しそうになつかしく思う
そこがまるでこれから向かうべき場所のように
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