古い歌が流れている
ときどき耳に入る
ときどき後ろや斜め前の
テーブルの会話も聞こえる
このテーブルはしんとしている
向かい合う二人の間に
遺影となった写真
ワインとビールのグラスを手に
相手のペースに合わせると
飲むのがどんどんゆっくりになった
語り合っていた視線がいつのまにかすれ違い
視線の先にある内側にふけっている
食べ残しの皿に乗ったフォークが鈍く光って
カーブと光沢の形と動きを見つめるうち
過ぎてしまった
という気持ちがふくらんで弾けた
こんな結末だったんだ
時間がめくれて裏返しになるような
頭が異様に大きくなっているような
ずっと何かを思い出さなければならない気がしていて
投げてきたフォークが夜の壁にぶつかって
帰ってきたような
遺影の人が投げてきた無数のフォークが
いまごろになって突き刺さってくるような
終わることによって覚醒した私であれば
いま、いましかない
過去は、過去を生きていた
だけど、いまがすべて
意味はすべて過去にあるのに
答えがいまにあって
すべてがいまにあるのに
それはもう失われてしまったものなんだ
いつだって、溺れているのに
いつだって、川べりを歩いている
そんな私もいつのまにか流れの中
全身いっぱいに何かを浴び
それは過ぎてしまったことだった
到達してみると十六年は
一瞬の枠に収まって
過ぎてしまったことだった
人生は傷口によって進み
気付きたかったことを
気付くことで喜ばせたかった人を失って気が付く
流れ去る言葉に避けたくなるほど
強く握りしめられたことは
テーブルの向こうの人に
また違った経験を折り畳んで
表面的には似ているかもしれない
でも層の異なる思いの繭の中に入っている人に
その繊細な網目を透して
ぼんやりと見えることでしかない
(私も相手にとってそうであるように)
開かずにひっそりと糸を紡ぐことで
眠りのように慰めのベッドを得ることもある
どれだけ人とすれ違ってもその人にだけは
もう決して出会えないとわかっている道を歩く
歩いていることがうわずみで
確かなことだと思う
生きるほどに
瞬間、鮮やかな色を放っても
きっと色褪せていく世界で
ときどき耳に入る
ときどき後ろや斜め前の
テーブルの会話も聞こえる
このテーブルはしんとしている
向かい合う二人の間に
遺影となった写真
ワインとビールのグラスを手に
相手のペースに合わせると
飲むのがどんどんゆっくりになった
語り合っていた視線がいつのまにかすれ違い
視線の先にある内側にふけっている
食べ残しの皿に乗ったフォークが鈍く光って
カーブと光沢の形と動きを見つめるうち
過ぎてしまった
という気持ちがふくらんで弾けた
こんな結末だったんだ
時間がめくれて裏返しになるような
頭が異様に大きくなっているような
ずっと何かを思い出さなければならない気がしていて
投げてきたフォークが夜の壁にぶつかって
帰ってきたような
遺影の人が投げてきた無数のフォークが
いまごろになって突き刺さってくるような
終わることによって覚醒した私であれば
いま、いましかない
過去は、過去を生きていた
だけど、いまがすべて
意味はすべて過去にあるのに
答えがいまにあって
すべてがいまにあるのに
それはもう失われてしまったものなんだ
いつだって、溺れているのに
いつだって、川べりを歩いている
そんな私もいつのまにか流れの中
全身いっぱいに何かを浴び
それは過ぎてしまったことだった
到達してみると十六年は
一瞬の枠に収まって
過ぎてしまったことだった
人生は傷口によって進み
気付きたかったことを
気付くことで喜ばせたかった人を失って気が付く
流れ去る言葉に避けたくなるほど
強く握りしめられたことは
テーブルの向こうの人に
また違った経験を折り畳んで
表面的には似ているかもしれない
でも層の異なる思いの繭の中に入っている人に
その繊細な網目を透して
ぼんやりと見えることでしかない
(私も相手にとってそうであるように)
開かずにひっそりと糸を紡ぐことで
眠りのように慰めのベッドを得ることもある
どれだけ人とすれ違ってもその人にだけは
もう決して出会えないとわかっている道を歩く
歩いていることがうわずみで
確かなことだと思う
生きるほどに
瞬間、鮮やかな色を放っても
きっと色褪せていく世界で
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