
慢性的な蜂窩織炎で治癒しない彼。ドレッシングを変えてくれる訪問看護の診療所に長年通っています。その彼が電話をします。
何かが自分の創部の中で育っている、と言います。不衛生な生活環境で創部に蛆虫がわく事はあります。しかしそれは違うと言います。なんでも虫眼鏡で見るとその形がくっきり見えるそうで、大きいのは熊のような様相で、小さな海老の形をしたものを食べている、と言います。熊と海老?!
看護師に言っても信じてくれず、取り合ってくれないと言います。だから美加に見せて、自分は嘘つきではない事を証明して欲しい、と。しかしコロナのせいで電話診察を行なっている現状。もちろん必要があれば直接診察もする。
しかしこれは果たして必要な事なのか?
まず、寄生虫や蛆虫以外に創部に発生するものはない。彼は看護師がドレッシングを変えてくれると必ず痒くなり、ドレッシングをとってみるとその虫たちが湧いている、100匹ぐらいいる、と言います。それらを殺す為に酢とブリーチを原液でぶっかける、と言います。慢性的な創部の消毒に薄めた酢やブリーチを使うときはありますが、原液を使用すると回復中の皮膚組織を壊してしまい、創部の治癒が遅れます。おっと横道に逸れてしまいますが、この話からも彼が言う熊と海老の形をした虫が創部に発生するのが事実である可能性はかなり低い。
看護師に創部の組織を顕微鏡検査に提出するように指示をしましょうか?と言うと、それも以前にやったがバクテリア以外に何も見つからなかった、と。
ほらやっぱり!きっと壊死した組織を熊と海老と言っているんだ、と私は思い、その事を伝えると、壊死組織なんかじゃない、熊が海老を捕まえて食べてるんだぞ!と言います。
このご時世でなかったら、実際診察室で観察して、いませんよ!で終わりなんですが。貴重なPPE(防護服その他)を使って、診察後の部屋の掃除も含めて、、、、と考えて診察はしない、と決めました。もちろん彼は電話の向こうで大怒り。
どなたかこの創部に発生する肉眼で見える事ができる熊と海老の形をした微生物について知っている方がいらしたら勉強不足の私に教えてくださいませ。