MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2525 2024年を消費行動の転換点に

2024年01月06日 | 社会・経済

 生産性の伸び悩みや消費者物価の高騰など様々な課題を抱える日本経済ですが、コロナ禍を経て世界経済も既に転換点を過ぎたように見える中、2024年は実質ゼロ%台半ばから1%程度の(潜在成長率を上回る)成長が期待されているところです。

 そんな中で特に今年の焦点となると予想されているのが、日銀の金融政策であるのは識者の一致するところ。年末の植田和男日銀総裁のコメントからも、(3月中旬の春闘の集中回答日における賃上げ動向を確認したうえで)4月下旬には①長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃と、②マイナス金利の解除が決定されるとの予想が主流となっているようです。

 長かった「異次元の金融緩和」からの出口戦略が探られる折、果たして、2024年の日本経済はどのような局面を迎えるのか。12月31日の女性向けの経済情報サイト「mi-mollet(ミモレ)」に経済評論家の加谷珪一(かや・けいいち)氏が、『過去30年のデフレ終焉へ、2024年は日本社会の大転換点に!“良いもの安く”の価値観は早めに捨てるべき理由』と題する(興味深い)論考を寄せていたので、参考までにその一部を小欄に残しておきたいと思います。

 思えば2023年は、「物価」に振り回された1年だった。では「来年は?」と言えば、物価に加えて「金利」が大きな注目を集める年になるだろうと、加谷氏はこの論考に綴っています。

 過去30年間にわたって続いてきた日本の低金利。慎重な態度を崩さなかった日銀も、いよいよ政策転換に踏み切る姿勢を見せ始めていると氏は言います。市場の雰囲気も次第に醸成されている。ゼロ近辺に張り付いていた市中金利も、次第に上昇に転じる可能性が高くなったということです。

 「金利」というのは分かりにくい概念だが、これが上がると経済や社会には極めて大きな影響が及ぶ、(一般の国民とっても)極めて大事な指標だと氏はここで話しています。

 氏によれば、企業にとってはお金を借りる「コスト」が増えることを意味するため、金利が上がれば、(何もしなければ)企業の利益は減っていく一方となるとのこと。そうなってくると、企業は従来とは違った形で収益を確保する必要に迫られると氏はしています。

 これまではお金はタダ同然で借りることができたので、コストがかからない分、(必要とあれば)商品の価格を下げることができた。結果として、低価格な商品が良く売れるという流れでビジネスが成立していたということです。

 しかし金利が上がっていく時代においては、こうした感覚はもはや通用しなくなると氏は言います。企業はお金を借りるコストを負担するため、利益を増やす工夫をしなければならない。(あの手この手で)商品のラインアップや価格体系を変え、利益率の高い商品を増やしていくことになるということです。

 そして、そうなると、「商品は安ければ良い」という流れではなくなり、高品質のものを高く売るという戦略を採用する企業が増えてくる。シンプルに言えば、これまでの時代は、「①価格が劇的に安く品質も悪い商品」「②リーズナブルな価格で品質の高い商品」「③高品質で価格も高い商品」という3つのカテゴリーが存在していた。しかし、金利や物価の上昇に伴い、(②のカテゴリーが成立しにくくなって)多くの製品やサービスが①と③に二極分化していくことになるというのが氏の予想するところです。

 そこで、変化にうまく対応できた企業は従来以上に利益を上げることができ、働く従業員の賃金も上昇する。一方、変化に付いて行けず、従来型の製品やサービスに固執していると収益が悪化し、従業員の賃上げも進まない。結果、私たちの賃金も、自身が勤務している会社がどれだけ新時代に対応できているのかによって変わってくることになると氏は予想しています。

 これは、企業経営や賃金という観点での話だが、私たちは労働者であると同時に消費者でもある。製品やサービスのカテゴリーが、高級品と安物に2極分化するのだとすれば、日常的に購入する製品やサービスについても今まで以上に吟味する必要が出てくる(だろう)と氏は話しています。

 これまでと同じクオリティを維持するには(さらなる)出費に目をつぶらなければならならず、逆に価格を重視すると、品質を犠牲にしなければならない、今後は、これまで以上にコストパフォーマンスを意識し上手に買い物をしないと、生活のレベルを下げてしまうことになるというのが氏の認識です。

 現在、こうした「流れ」が大きく変わる可能性が高まっており、私たちは消費者としての価値観をも変えていく必要がありそうだと、氏はこの論考の最後に話しています。

 商品やサービスの値段が上がるのは、消費者にとっては決して良いことではないが、質の良いものにはしっかりとお金を投じるという習慣が確立すれば、企業の収益力が高まり結果的に賃上げも進むことに繋がる。回り回って(結局)お金は私たちのところに返って来るので、値段が上がることは一方的に悪いこととは考えない方が良いというのが氏の指摘するところです。

 まずは、目の前のことから始めてみてはどうか。ちょっとだけ贅沢をして、品質が良く美味しいものを食べてみる。このような小さな消費者行動の積み上げが、最終的には大きなお金となって経済を動かしていくことになるだろうと結ばれた加谷氏の論考を、私も(「なるほどな」と)興味深く読んだところです。



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