MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯176 年金制度についての説明責任

2014年06月06日 | 社会・経済

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 日本の年金制度は、高齢期の国民生活を支え国民生活を安定に導く世界に冠たる仕組みとして、これまで世界的に評価されてきました。しかし、そんな年金制度も、少子高齢化の進展に伴う就業年齢人口比率の一層の低下などにより、制度の破たんが深刻な問題として懸念されるようになっています。

 昨今、様々なメディアで語られているように、「胴上げ型」から「騎馬戦型」へ、そしてやがては「肩車型」へ…という言葉が、1人のお年寄りを何人の働き手で支えるのかを示す端的な表現として人々の間に定着しています。

 実際、日本の年金制度では、半世紀前は現役世代9人で65歳以上の高齢者1人を支えていましたが、これが現在は3人で1人を支える「騎馬戦」型に変化しています。そして2050年には、国民の4割が65歳以上の高齢者となると推計されており、四半世紀後には現役世代1.2人で1人を「肩車」していかくなくてはならない時代が、(おそらく確実に)到来すると予想されています。

 このようなことから、最近は「年金」イコール「破たん」という文脈において語られることの多い国民年金制度ですが、一方で、特に若者の間などではその仕組みが意外に知られていない(←興味が湧くものとして捉えられていない)ことも事実でであるようです。

 日本の年金制度は(いわゆる)「3階建て」の給付を基本としています。原則として、20歳以上60歳未満の日本に居住するすべての国民は、国民年金(給付または受給段階では「老齢基礎年金」と名前が変わります)に義務として(強制的に)加入しなければならないことになっています。

 資格期間(年金保険料を支払い続けた期間)が25年以上ある人が65歳になった時に、最も基本的な1階部分として「老齢基礎年金」というものを受給できることになります。そのうえで、民間サラリーマンや公務員等には、厚生年金や共済年金という制度がここに載せられます。

 一般に従業員を雇用する企業や組織はこの厚生年金や共済年金に加入しなければならず(当然、雇用者もその分の保険料を支払うわけですが)、自動的に加入していると見なされる1階部分の「老齢基礎年金」に加えて、2階部分となる「老齢厚生年金」や「退職共済年金」を受給できることになります。

 このほかに、3階部分として「私的年金」というものがあります。任意の選択として、個人では「国民年金基金」や「確定拠出年金」に、企業では従業員のために各種の「企業年金」に加入して掛金を拠出し、老後に需給することができるようにする仕組みです。さらにこの他、勤務先に関係なく全くの個人の選択として、各保険会社が「個人年金」として用意している年金保険商品に加入することも可能です。

 そしてそれら中で、現在最も問題視されているのは、1階部分に当たる「国民年金(老齢基礎年金)」の制度の維持が可能かどうかという部分になります。「年金問題→大変だ」と、イメージで括られることの多い昨今ですが、実はこうした制度の構成を理解している若い世代は、そんなに多くはないのではないかと考えられます。

 実質的にこれからの高齢者の生活を支えていくことになる(肩車を担ぐ)世代に対し、制度への理解と協力を求める努力が(担がれる世代に)圧倒的に足りないのではないか…。自らの老後の生活とそれを支えるための負担を「誰」が「どのように」するのかという現実に思いを馳せる時、次の世代に対し「どうぞ宜しく」という意をこめた説明責任が(恐らく40歳代以上の)現役世代の一人一人にあるということを、私たちは十分に心する必要があると改めて感じるところです。

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