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11月14日、与野党8党のプロジェクトチームが選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公職選挙法改正案を了承し、11月19日に超党派8党で衆議院に共同提出するとの報道がありました。衆議院が解散されたため結局先の臨時国会では廃案となりましたが、提案者らは選挙後の通常国会に再提出のうえ成立させ、2年後の参議院選挙から適用したいとしています。
選挙権年齢の引き下げについては、これまであまり現実的な議論として取り上げられてきた記憶はありません。しかし、ここにきてにわかに、こうした議論が国会の場で持ち上がってきた背景には、一体どのような理由があるのでしょうか。
海外の状況を見てみます。一般に先進国とみなされるG20の国々における国政選挙の選挙権は、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス、ロシアが18歳、韓国19歳、オーストリアでは16歳以上の国民に与えられています。
また、 ノルウェー、ドイツ、スイスでは既に特定の州および市町村選挙で選挙権の16歳への引き下が実施されており、 英国、スウェーデン、デンマークなどでも選挙権の16歳への引き下げに向けた法整備が進行中だということです。
このように、世界的な選挙権年齢の引き下げの動きが進む中、読売新聞社では6月28日から29日にかけて、この問題に対する全国的な世論調査(面接方式)を実施しています。
調査において、国政選挙などで投票できる年齢を現在の20歳から18歳に引き下げることに「賛成」と答えた人の割合は全体の48%であったということです。「微妙」な割合と言えばまさにそのとおりで、「反対」とする45%と拮抗する結果となっています。このことからもわかるように、現在の日本において、この問題に対する国民の意見は「大きく割れている」と考えていいかもしれません。
「賛成」と答えた人に理由を二つまで挙げてもらったところでは、「引き下げによって社会の一員としての自覚を促せる」が54%、「少子高齢化の中でより多くの若者の意見を政治に反映できる」が48%と並んでいます。次いで、「(18歳は)十分な判断力がある」が29%、「すでに働いている人がいる」が27%、「多くの国で18歳から投票できる」11%が続いているということです。
一方、引き下げに反対する人に理由を(二つまで)聞いたところでは、「まだ十分な判断力がない」が72%で断トツのトップ、次いで、「引き下げても投票に行く若者が増えるとは思えない」が43%、「働いている人は少ない」が22%、さらに、「民法が定める成人年齢が20歳のまま、引き下げるべきでない」が19%であったとされています。
あまり大きく報道されませんでしたが、実は先般成立した改正国民投票法では、既に憲法改正の国民投票の投票年齢が4年後に18歳に引き下げられることが決まっています。このことについても、「評価する」とした人は48%、「評価しない」とした人が44%と、やはり同様に意見が分かれたということでした。
さらに、民法が定める成人年齢の20歳から18歳への引き下げに対しては、「反対」が59%、「賛成」が35%と、引き下げに反対する意見が「賛成」を大きく上回っていました。このことからわかるように、国民全体で見れば、いわゆる「成人(大人)」を18歳以上とすることに対しては、国民の間に慎重論が根強いことがわかります。
さて、こうした昨今の選挙権年齢の引き下げの動きに対し、11月14日のYahoo News (Japan)では、国際ジャーナリストで元産経新聞ロンドン支局長の木村正人(きむら・まさと)氏が、「選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げるだけでは物足りない」として、「若者と政治との関わり」という視点から興味深い論評を行っています。
現在、日本人の18歳人口は121万1千人、19歳人口121万6千人なので、この法案が国会を通れば、有権者が(概ね政令市3つ分程度)242万7千人ほど増えることになります。現在の有権者数が1億123万6千人ですから、新たなに選挙権を得る有権者が全体の2.34%を占めることになるという計算です。
このことについて、ようやく日本も世界標準である「選挙権18歳以上」に向かうことになったが、その一方で世界の85%の国々が「18歳以上」という中では遅すぎた対応と言わざるを得ないと、この論評で木村氏は指摘しています。
氏によれば、これまで選挙権を引き下げることに抵抗があったのは、大人世代に(1)若者世代の投票率が低い、(2)十分な知識と経験のない若者に選挙権を与えると選挙の質が落ちる、(3)若者は保守を好まないなどの認識があったからだということです。
しかし20歳未満の世代を政治から分断することは、若者の政治への無関心を広げる一方で、さらに高齢者人口が増える中、若者世代の声が政治に届かなくなるという弊害を(道義的な面も含めて)生むことになるというのが木村氏の認識です。
今回、安倍晋三首相が憲法改正を目指し、(憲法改正に向けた国民投票に)できるだけ幅広い世代の参加を求めたことが選挙権年齢の引き下げを後押してようやく我が国でもこうした方向性が生まれたと、木村氏は現在の選挙権年齢引き下げに向けた動きを評価しています。
しかし、(既に)世界はさらに進んでいると、木村氏は重ねて指摘しています。氏によれば、30歳未満の国会議員の割合は、ドイツで6%、ノルウェーで5.6%、スウェーデンが5%なのに対し、日本ではわずか0.6%に過ぎず、日本の若者の政治参加は欧米に比べてかなり遅れているということです。
世界的に話題となった9月のスコットランド独立の住民投票では、特別に投票権年齢が通常の選挙権年齢(18歳以上)から16歳以上に引き下げられ、16、17歳の若者の約8割に当たる10万9533人が選挙人登録を行い、16~24歳の49%が独立に賛成、51%が反対にそれぞれ票を投じたということです。
先進国では共通して既存政党や政治への失望が深まり、国民(特に若い世代)の「政治離れ」が加速していると木村氏は指摘しています。各国で高齢化が進む中、政治的マイノリティーとして無力感を募らせているこうした若者に政治参加を促すことは、民主主義の観点から言って「プラス」にはなっても決して「マイナス」にはならないというのがこの問題に対する木村氏の見解です。
日本において、将来世代へのいわゆる「ツケ回」しとなる政府債務は国内総生産(GDP)の約230%、現在でも約1000兆円を超えています。これから先、さらに本格的な少子高齢化が進行し、世代間の公平感をどのように保っていくかが大きな政策課題となることは、逃れられない現実と言えるでしょう。
現在の18歳が分別をわきまえ、以前より適切な判断ができるようになったのかと言われれば、確かにそうした事実を確認することはできないでしょう。「最近の若い奴らは…」「奴らに社会の何が分かる…」と言ってしまうのも簡単です。
18歳が果たして「大人」か「子供」かといった議論は当然あるでしょうが、一方で、これからの未来を担う若者を(現在の)政治に参加させ、政治に対し(自分たちの問題として)問題意識を持ってもらうと同時に、若者たちにも「モノを言う」権利をきちんと保障することが、現在を生きる「大人の責任」というものなのかもしれません。
こうした視点に立ち、社会保障・医療、教育に対する税の徴収と配分を幅広く議論するためには、選挙権・被選挙権年齢の(18歳からの)さらなる引き下げを検討する必要があるだろうとする木村氏の主張を、今回改めて興味深く読んだところです。
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