MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2153 日本経済の課題① 「膨らむ政府債務」

2022年05月11日 | 社会・経済

 ゴールデンウィーク明けの5月10日、財務省は税収で返済することが前提となる国の長期債務残高が、3月末の時点で(一昨年度末から約44兆円増の)1017兆1072億円になったと発表しました。政府の「借金」とも言うべき同残高は18年連続で増加しており、今回、初めて1000兆円を超えたことが話題になっています。

 5月11日の日本経済新聞はこうした状況に至った理由について、新型コロナウイルス感染症の対策の財源を確保するため国債発行を増やしたことの影響を挙げています(「国の長期債務、1000兆円超す」2022.5.11朝刊)。記事によれば、これから先「賢い支出」で成長力を底上げしていかなければ、経済が停滞し税収が増えないままさらに債務が膨らむ懸念があるということです。

 思えば今から20年前、2002年3月末の日本の長期債務残高は485兆4180億円余りでした。当時も、年間GDPに匹敵する債務残高は強く懸念されていましたが、その後の20年間でこれがさらに倍増していることには驚くばかりです。

 因みに、現在の財投債などを含む国債発行残高は1104兆6800億円で、30兆5204億円の増。うち普通国債は44兆7643億円増えて991兆4111億円になったということです。政府の借入金は、無論これだけではありません。国債と借入金、政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」の合計額は既に1241兆3074億円にまで膨れ上がっており、2021年3月末から24兆8441億円増え、6年連続で過去最多を更新したとされています。

 一口に「1241兆円」と言われても(あまりの金額に)ピンときませんが、2022年4月1日時点の総務省の人口推計(1億2519万人、概算値)をもとに単純計算すると、赤ちゃんからお年寄りまで、国民1人当たり約1000万円(991万円)の借金を背負っている計算です。

 この借入金額が尋常でないことは誰の目にも明らかで、外国為替相場は急激な円安局面とは言え、それでも円の信用が保たれていること自体が不思議と言えば不思議です。

 幸いなことに、現在、日本国債の海外保有比率は、国債だけであれば8%程度、国庫短期証券も合わせれば13%程度と、基本的に国内で消化できていると聞きます。しかし、これは見方を変えれば、国民一人当たりおよそ1000万円を国民が政府に貸し付けている状態ということ。本当に返してもらえるかどうかは当てにはならず、国民も10万円の給付金をもらって喜んでいる場合ではないでしょう。

 ただでさえ、人口構成の急激な高齢化によって社会保障費の増加が財政を圧迫しているのに、政府与党を中心に新型コロナにかかる経済対策の名のもとに(選挙がらみの)バラマキ政策の議論が引きも切らずに繰り返されています。中にはMMT理論を真面目な顔で振り回す政治家なども生まれており、財政問題に本気で取り組もうという人材は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。

 コロナの下でも税収は堅調に伸びているようですが、それも言わば「焼け石に水」に過ぎません。こうして政府債務が増える中、それでも国債の利払い金がなんとかなっているのは、あくまで日銀が国債の利回りを低く抑えているから。逆に言えば、積みあがった政府債務の存在が、日銀の金融政策の足枷となっているということもできるでしょう。

 このまま、日銀が大規模な金融緩和策を続ければ、円・ドルの金利差はさらに広がっていくことでしょう。グローバル資金がドルやユーロに流れれば、円安はさらに進み、結局のところ政府は物価高への対策費の積み増しを迫られることにもなってきます。

 「このままではいけない」と誰もが判っているのに、誰も手を付けてこなかったことで生まれたこの状態。しかし、目前に迫る物価高騰、急激なインフレへの懸念を考えれば、それもそろそろ限界なのかもしれません。今こそ、悪循環を断ち切るための思い切った政策転換が必要な時ではないかと改めて感じるところです。



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