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少子高齢化の進展に伴う生産年齢人口の急激な減少が社会問題化している現在、少子化の大きな要因は若者の非婚化、晩婚化にあると言われています。
いわゆる「適齢期」にある男女がパートナーを作らず子供が生まれない社会の到来が懸念される中、「成人の日」の翌日、1月13日の読売新聞に掲載されていた「恋愛」や「結婚」に関する新成人への意識調査の結果に関する記事に、思わず目が留まりました。
若い男性が「草食系」と呼ばれるようになって既に何年か経とうとしていますが、この調査結果を見る限り、男性ばかりでなく女性も含めた若者の草食化は、想像以上に深刻な様相を呈しつつあるようです。
楽天グループの結婚情報サービス会社である株式会社オーネットが、今年成人式を迎える全国の独身男・女、計600人を対象に、恋愛・結婚・社会参加意識などについて調査を実施しています。(「第20回新成人意識調査」)
今年1月に成人式を迎えたのは、1994年4月から1995年3月に生まれた若者たちです。
彼らが生まれたのは、バブル崩壊から数年が経過し景気の持ち直しの機運が見られた、そんな時期に当たります。政治的には4月に細川内閣が総辞職し羽田内閣へ、そして2か月後の6月には自民党、社会党、新党さきがけがけの連立による村山内閣が誕生しています。
幼児期にはITバブルがあり、小学生の時分には既にパソコンやインターネット、携帯電話が日常生活の中で一般化していました。彼らは、ケータイそしてスマホ、SNS、LINEといったコミュニケーションツールに子供のころからどっぷりつかってきた、日本でも最初の世代です。また、いわゆる「ゆとり教育」の最後の世代と言うこともでき、小中学生の学力低下が指摘される中、本格的な方針転換が教育現場で施される前に義務教育を卒業しています。
さて、そうした(バーチャルな)環境が影響してかどうか、20歳の成人を迎えた現在でも、彼らが男女の現実的なかかわりについてかなり淡白な意識を有しているという実態が、この調査から浮かび上がっているようです。
Web上に公開された調査報告書を当たってみます。
子供のころから情報化の渦中に身を置いてきた彼らにとってはある意味「予想された」結果なのかもしれませんが、内容をざっくりと紹介すると、まず「異性への意識」としては、新成人の男性の66.3%、女性の51.7%が「異性にモテたい」と考えているということです。つまり(逆に言うと)、男性の約3分の1以上、女性の半数近くが「別にモテなくても構わない」と考えている(←異性と付き合う意欲が薄いという)ことになります。
一方で、「異性とのコミュニケーションが苦手」としている割合は、男性で66.3%、女性で63.7%にも及んでいます。これらを昨年の調査結果と比較すると、異性にモテたいと思う若者は男性で2ポイント、女性で4ポイント程度減少していることがわかります。また、異性とのコミュニケーションが苦手とする若者の割合は男性で約2ポイント、女性では10ポイント近く増えているということです。
次に、異性との交際状況についてですが、回答者の約4分の3に及ぶ74.3%が現在「交際相手がいない」と回答しているということです。1996 年の調査では約半数が、2000 年時点でも全体の47.3%が「交際相手がいる」と回答していることからもわかるように、男女のいわゆる「おつきあい」が急激に希薄化しているのではないかと調査者は指摘しています。
「交際相手がほしいか?」という設問に関する回答はどうでしょうか。2011 年の調査以降、「交際相手がほしい」とする回答は継続的に7割を下回っているということです。しかも今年の新成人では、「交際相手がほしい」とする女性はついに60.4%と過去最低を記録することとなり、恋愛に対して特に女性の草食化が進んでいることが指摘されています。
さらに、これまでの恋愛経験に関する回答の状況です。結果として、そもそも「今まで誰とも交際したことがない」という回答が全体の約半数を占め、ほぼ2人に1 人が「交際経験ゼロ」という結果であったということです。回答に男女で大きな違いはなく、残りの半数の交際経験についても、約半数は「1人だけ」だったとの調査結果も出ています。
ここで注目されるのは、「片思い」を含め誰かを好きになった恋愛経験が「1回もない」とする回答が全体の19.0%を占めていることです。実に5人に1人に近い新成人が、誰かに恋愛感情を感じた事さえ無い。思春期を過ぎ、20歳を過ぎても異性を「好き」にすらならないという若者の現状については、やはり驚きを禁じえません。
また、「交際相手をつくるには積極的な活動が必要だ」と認識している割合が全体の68.0%と男女ともに3人に2人に上る一方で、「今の自分は異性との交際に積極的でない」との回答もほぼ同数の65.5%に達しているようです。
さらには男女交際(の仕方)に関して「教えてくれる人がいない」とするものが49.8%と約半数にのぼるなど、恋愛には積極さが必要だと判かっていながらもそうはなれず、人に教えてもらえないのでやり方が分からないなどとする、恋愛に対して臆病で半ば諦観している若者像が浮かび上がってくると調査者は考察しています。
そして最後に、「将来、結婚したいかどうか」という質問です。
その意向を聞いてみたところ、「結婚したくない」という回答が全体で23.5%(男性24.0%、女性23.0%)を占めたということですから、男女とも4分の1近くの成人が「結婚しなくてもいい」「結婚する必要がない」「結婚したくない」と考えているようです。そしてこの割合は、2004 年と並び過去最も高い数字であったとされています。
「結婚したくない」成人は、調査年によって多少のばらつきはあるものの、基本的に全体としては増加傾向にあるということです。恋愛への消極的な姿勢といい、結婚への意向といい、若者世代が全般的に異性と親密な関係を形作る事に対して消極的になっている傾向が続いているとこの調査では結論付けています。
性に対して淡白になっているだけでなく、伴侶を得て家庭を築くことすら現代の若者たちは求めなくなっている。
その原因には様々なものがあるのでしょうが、個人主義の高まりと人間関係の希薄化の中で、日本の社会はいよいよそういうところまで来てしまっているという実態を、ある種の衝撃とともに私も強く受け止めたところです。
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