軟禁療養じゃけん

　きょねん奈良を旅した時、予約の取れんホテルがあったけん。

駅の向かいで値段も手ごろ、食事がいいと評判で、天然温泉までついとるけん。

コロナ禍でどこのホテルもがらがらだったんじゃが……。

ホテルのサイトを見てみたら、どうやら宿泊療養施設になっとったけん。

ホテルで療養かぁ……。

清潔な部屋に、テレビも冷蔵庫もあって、Wi-Fiまで完備されとるんじゃのう。

メシは3食出るし、デザートまであるとか。

それに美人の看護師さんがいて、体調も管理してくれるけん。



わしも宿泊療養ちうの、考えんでもなかったんじゃがのう。

ワイフさまがすぐに症状出たんで、それを選ぶ理由がなくなってしもたけん。

いや、ふたりで宿泊療養ちうのもあるじゃろか？。

外出こそできんけど、ちょっとした旅行気分じゃろなぁ……。



いやいや、それは主旨を理解しとらんじゃろ。

わしらは家さえ出んなら、これ以上感染拡大させるコトはないけん。

宿泊療養が必要なひとたちに使うてもらうコトが、ぜー金の正しい使い方じゃ。

ホテル側からすれば、アフターコロナを見据えた戦略でもある宿泊療養。

快適さをアピールできればリピーターも増えるワケじゃけん。

ホスピタリティもいいはずじゃ。

とはいうても、感染者を完全に隔離する施設には違いないけん。

閉塞感は自宅と大差ないかものう〜。

むしろ監視の目が光っとるワケで、それはそれで窮屈な気もするけん。



やっぱりホテルは旅に使こた方がいいのう……。

パンデミックが終息したら、また奈良にでもいきたいけん。

そん時は、今度こそあのホテルじゃな！。

柿の葉寿司食うて、どっぷり温泉に浸かってやるけん。