【書評など】
1)書評=「買いたい新書」の書評No.311に小説・山田洋次・井上麻矢「母と暮らせば」を取り上げました。同名の映画(2015秋・公開)のノベライゼーションです。
昭和20年8月9日,長の爆心地近くにあった長崎医大では,午前11時2分,892人の学生,教師,事務職員,病院職員が「一瞬にしてこの世から消えた」。それから3年後,1948年8月9日にこの物語は始まる。
原爆投下で即死した長崎医大の医学生が,病死した医師の父,ビルマで戦死した兄の代わりに,亡霊となって唯一生き残った母親と対話する物語だ。登場する主人物は死んだ医学生「浩二」,その恋人「町子」,浩二の母親「伸子」である。物語は原爆投下後の3人の独白により成り立っている。但し他人である町子には浩二の姿は見えない。
読んでいて,「ああ,これは映画『東京物語』の戦死した次男の嫁紀子(原節子)と実父周吉(笠智衆)との対話を,死んだ次男の視点で再構成したものだな」と思った。以下はこちらで、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1456896132
2)献本お礼=「医薬経済」3/1号(医薬経済社)のご送付を受けました。お礼申し上げます。
今号のトップ記事「OBSERVER」では日本の再生医療関係企業がiPS細胞の実用化には時間がかかるとみて、イスラエル・ワイズマン研究所が開発した「ヒト胎盤組織由来」細胞による再生医療製品に関心を高めていることが報じられている。この細胞1億個が9000ドルの価格で売られているそうだ。
「移植学会は<無実>なのか:<修復腎移植>は透析患者を救える(下)」も前号に引き続いて、インパクトがある記事だ。著者は「移植学会は1日も早く、これまでの誤りを社会的に明らかにし、患者らに謝罪すべきではないか」とあるが、同感だ。
鍛冶孝雄「読む医療No.43」が海堂尊「玉村警部補の災難」(宝島社)を取り上げていた。病理医出身のミステリー作家で、Ai(オートプシー・イメージング)という遺体をCTでスキャンし、司法解剖や病理解剖を簡略化し、すこしでも「死因不明社会」を減らそうという主張を唱えている人だ。この作品は短篇集で、死体発見の自治体により「監察医務院」での司法解剖となるか「警察嘱託医」による外表検査だけでの「死因診断」になるかの、差が決まることを問題にしているようだ。これも入手して読んで見たい。
「鳥集徹の口に苦い話」というコラムは「医学界も無視できなくなった近藤誠<がん理論>」を取り上げている。鳥集氏がこの1月「近藤誠の<がん理論>徹底検証」(宝島社)というムックを編集した際に、「近藤理論を完全否定する医師・専門家は誰もいない」ことに気づいたそうだ。「がん幹細胞」は例によって白血病の研究から見つかった。いまでは、固形がんにおいても、浸潤・転移・再発には「がん幹細胞」がいなければ成り立たないことが明らかになっている。
いいかえれば、「浸潤・転移・再発」をしない「がんもどき」と、治療しても「再発・転移する」本物がんは、かなり初めから異なっているということだ。ここ数年で、どうやらこの論争は決着するように思われる。
1)書評=「買いたい新書」の書評No.311に小説・山田洋次・井上麻矢「母と暮らせば」を取り上げました。同名の映画(2015秋・公開)のノベライゼーションです。
昭和20年8月9日,長の爆心地近くにあった長崎医大では,午前11時2分,892人の学生,教師,事務職員,病院職員が「一瞬にしてこの世から消えた」。それから3年後,1948年8月9日にこの物語は始まる。
原爆投下で即死した長崎医大の医学生が,病死した医師の父,ビルマで戦死した兄の代わりに,亡霊となって唯一生き残った母親と対話する物語だ。登場する主人物は死んだ医学生「浩二」,その恋人「町子」,浩二の母親「伸子」である。物語は原爆投下後の3人の独白により成り立っている。但し他人である町子には浩二の姿は見えない。
読んでいて,「ああ,これは映画『東京物語』の戦死した次男の嫁紀子(原節子)と実父周吉(笠智衆)との対話を,死んだ次男の視点で再構成したものだな」と思った。以下はこちらで、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1456896132
2)献本お礼=「医薬経済」3/1号(医薬経済社)のご送付を受けました。お礼申し上げます。
今号のトップ記事「OBSERVER」では日本の再生医療関係企業がiPS細胞の実用化には時間がかかるとみて、イスラエル・ワイズマン研究所が開発した「ヒト胎盤組織由来」細胞による再生医療製品に関心を高めていることが報じられている。この細胞1億個が9000ドルの価格で売られているそうだ。
「移植学会は<無実>なのか:<修復腎移植>は透析患者を救える(下)」も前号に引き続いて、インパクトがある記事だ。著者は「移植学会は1日も早く、これまでの誤りを社会的に明らかにし、患者らに謝罪すべきではないか」とあるが、同感だ。
鍛冶孝雄「読む医療No.43」が海堂尊「玉村警部補の災難」(宝島社)を取り上げていた。病理医出身のミステリー作家で、Ai(オートプシー・イメージング)という遺体をCTでスキャンし、司法解剖や病理解剖を簡略化し、すこしでも「死因不明社会」を減らそうという主張を唱えている人だ。この作品は短篇集で、死体発見の自治体により「監察医務院」での司法解剖となるか「警察嘱託医」による外表検査だけでの「死因診断」になるかの、差が決まることを問題にしているようだ。これも入手して読んで見たい。
「鳥集徹の口に苦い話」というコラムは「医学界も無視できなくなった近藤誠<がん理論>」を取り上げている。鳥集氏がこの1月「近藤誠の<がん理論>徹底検証」(宝島社)というムックを編集した際に、「近藤理論を完全否定する医師・専門家は誰もいない」ことに気づいたそうだ。「がん幹細胞」は例によって白血病の研究から見つかった。いまでは、固形がんにおいても、浸潤・転移・再発には「がん幹細胞」がいなければ成り立たないことが明らかになっている。
いいかえれば、「浸潤・転移・再発」をしない「がんもどき」と、治療しても「再発・転移する」本物がんは、かなり初めから異なっているということだ。ここ数年で、どうやらこの論争は決着するように思われる。
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