【内腸骨動脈】今年4月沖縄浦添市の病院で起きた、「生体腎移植」のためにドナー女性から腹腔鏡手術により、腎臓を摘出中に大量出血が起こり、ドナーが死亡した事件について、7/4「沖縄タイムス」が報じている。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-07-04_51251
この事故の調査には日本移植学会が4人の「外部調査委員」を派遣している。
調査委員会の報告書をうけて、院長は「医療事故であり、手術の合併症だ」と述べ、「(手術)ミスとの認識を示さなかった」と記している。
これを読んだある人から、「医療の世界では、医療ミスと医療事故、どのように定義しているのでしょうか。私にはその差異がわかりません。」という質問を受けた。
院長は明らかにウソをついています。「ミス」という言葉を使いたくなかったので「手術の合併症だ」とごまかしたのでしょう。
「医療事故」も「医療ミス」も同じものです。
この例の場合「内腸骨動脈を、手を差し込んだ際に切断した」と主張したのが事実とすれば、ありえないことです。
大動脈は第4腰椎(骨盤の骨の上縁=ベルト占める位置)のところで、左右の総腸骨動脈に分かれます。これは第5腰椎の下で骨盤内に行く「内腸骨動脈」と下腿に行く「外腸骨動脈」に分かれます。
腎臓移植の場合は、死体腎移植、生体腎移植、修復腎移植移ともに、レシピエント内腸骨動脈に移植する腎臓の腎動脈をつなぎます。 内腸骨動脈は「沖縄タイムス」にある図でもわかるようん、相当太い動脈で手で引っぱっても切れません。
内視鏡による腎摘出の場合は、下腹部に径8cm位の新たな穴を開けます。ここから腎臓を引っぱり出す途中で内腸骨動脈を傷つけたというのですが、「どういう器具が傷つけたのか、損傷にいつ気づいて、どのように対処したのか」が明らかにされていません。「内腸骨動脈を切った」というのですから、メスを手探りで使っていて、切断したことも考えられます。
しかも切断に気づかず、そのまま手術創を閉じたから、出血死に至ったものでしょう。
内視鏡的腎摘出に詳しい専門医に聞いてみても、「腎摘で内腸骨動脈を切断することは考えにくい」といいます。これは骨盤の奥にある動脈で、腎臓摘出は前から行うからです。尿管を剥離するときでないと、機械は内腸骨動脈に触れません。
「合併症」は英語の「Complication」の訳です。「ドーランド医学大辞典」は「同一患者に起こった2つまたはそれ以上の疾患の共存」と定義しています。
この腎ドナー女性は「健康体」だったので、合併症が起こることはありえません。つぎに「内腸骨動脈切断」は疾患ではありません。手術中に発生したものです。従って「手術の合併症」という言葉は自己矛盾で、医学的にも間違いです。
この事件は臨床腎移植学会が鳴り物入りで導入した「腎移植専門医」の質がいかに低いか、「ドナーに害を与えないことが腎移植では何よりも重要だ」と主張して修復腎移植に反対している移植学会が、「ドナーの負担が軽い」として推進している「内視鏡による腎摘出」がいかに危険であるかを物語っています。
昔、肝生検が導入されて日の浅い頃、「1000例に1人は死ぬ」といわれていました。実際に、針を刺している間に呼吸したため、肝臓が裂けて出血して死亡した老婆の遺体を解剖したことがあります。
高原史移植学会理事長は先日の6/27「読売」のインタビューに際して、「生体腎移植は2万件以上行われているが、これまで死亡例はなかった」と述べている。これは分母を意図的に増やす詭弁である。
内視鏡による腎摘出術はごく最近に始まったもので、そう数は多くない。
脇腹を広く切開し、ひろい手術野を確保して行う通常の腎摘出術と、内視鏡が突っ込めるだけの穴を開けて、術者がモニター画面を見ながら行う内視鏡手術の難易度は比較にならない。
年に1200例程度行われている日本「生体腎移植」のなかで、「内視鏡手術」によるものは何例あるのか、その累積手術数は何例あるのか、それを母数として「内視鏡手術死亡数」を比較しなくては意味がない。すでに2例の死者が出ているのだから、おおざっぱにみても、昔の肝生検と同じ「1000例に1例の死者」が出ているのではないか?
これをみても、「修復腎移植はドナーに害がある、生体腎移植にはそれがない」とする移植学会の倫理と論理は破綻している。
オーストラリアからの報告では、2000/12~2009/1の期間に行った「内視鏡的腎摘出」141例で、主要合併症は3例=2.1%(脾梗塞、乳日腹水、肺栓塞)、死亡ゼロとしている。メリットは入院日数の短縮で、平均4日だという。
(He B et al. ANZ J Surg, 2011, 81(3): 159- ) 熟練した医師が行えば安全な手術であることは間違いない。
「和田心臓移植」事件の時、移植学会は「ここで和田君を罪人にしたら、日本の心臓移植はできなくなる」として、トップが相談して和田教授をかばった。これが日本が「移植後進国」になった原因である。
今回も日本移植学会は、執刀医の手術ミスを「手術合併症」とする報告書をまとめて、執刀医をかばおうとしている。かばう理由は私にはわかっているが、書かない。分かっているのは、真実の隠蔽は「移植医療不信」をつのらせるだけだということだ。
医療ジャーナリストにぜひ頑張ってもらいたい。ヒントはこの執刀医はどこで研修して「腎移植専門医」になったのか? 専門医と施設を認定した委員会の長は誰か、という点にある。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-07-04_51251
この事故の調査には日本移植学会が4人の「外部調査委員」を派遣している。
調査委員会の報告書をうけて、院長は「医療事故であり、手術の合併症だ」と述べ、「(手術)ミスとの認識を示さなかった」と記している。
これを読んだある人から、「医療の世界では、医療ミスと医療事故、どのように定義しているのでしょうか。私にはその差異がわかりません。」という質問を受けた。
院長は明らかにウソをついています。「ミス」という言葉を使いたくなかったので「手術の合併症だ」とごまかしたのでしょう。
「医療事故」も「医療ミス」も同じものです。
この例の場合「内腸骨動脈を、手を差し込んだ際に切断した」と主張したのが事実とすれば、ありえないことです。
大動脈は第4腰椎(骨盤の骨の上縁=ベルト占める位置)のところで、左右の総腸骨動脈に分かれます。これは第5腰椎の下で骨盤内に行く「内腸骨動脈」と下腿に行く「外腸骨動脈」に分かれます。
腎臓移植の場合は、死体腎移植、生体腎移植、修復腎移植移ともに、レシピエント内腸骨動脈に移植する腎臓の腎動脈をつなぎます。 内腸骨動脈は「沖縄タイムス」にある図でもわかるようん、相当太い動脈で手で引っぱっても切れません。
内視鏡による腎摘出の場合は、下腹部に径8cm位の新たな穴を開けます。ここから腎臓を引っぱり出す途中で内腸骨動脈を傷つけたというのですが、「どういう器具が傷つけたのか、損傷にいつ気づいて、どのように対処したのか」が明らかにされていません。「内腸骨動脈を切った」というのですから、メスを手探りで使っていて、切断したことも考えられます。
しかも切断に気づかず、そのまま手術創を閉じたから、出血死に至ったものでしょう。
内視鏡的腎摘出に詳しい専門医に聞いてみても、「腎摘で内腸骨動脈を切断することは考えにくい」といいます。これは骨盤の奥にある動脈で、腎臓摘出は前から行うからです。尿管を剥離するときでないと、機械は内腸骨動脈に触れません。
「合併症」は英語の「Complication」の訳です。「ドーランド医学大辞典」は「同一患者に起こった2つまたはそれ以上の疾患の共存」と定義しています。
この腎ドナー女性は「健康体」だったので、合併症が起こることはありえません。つぎに「内腸骨動脈切断」は疾患ではありません。手術中に発生したものです。従って「手術の合併症」という言葉は自己矛盾で、医学的にも間違いです。
この事件は臨床腎移植学会が鳴り物入りで導入した「腎移植専門医」の質がいかに低いか、「ドナーに害を与えないことが腎移植では何よりも重要だ」と主張して修復腎移植に反対している移植学会が、「ドナーの負担が軽い」として推進している「内視鏡による腎摘出」がいかに危険であるかを物語っています。
昔、肝生検が導入されて日の浅い頃、「1000例に1人は死ぬ」といわれていました。実際に、針を刺している間に呼吸したため、肝臓が裂けて出血して死亡した老婆の遺体を解剖したことがあります。
高原史移植学会理事長は先日の6/27「読売」のインタビューに際して、「生体腎移植は2万件以上行われているが、これまで死亡例はなかった」と述べている。これは分母を意図的に増やす詭弁である。
内視鏡による腎摘出術はごく最近に始まったもので、そう数は多くない。
脇腹を広く切開し、ひろい手術野を確保して行う通常の腎摘出術と、内視鏡が突っ込めるだけの穴を開けて、術者がモニター画面を見ながら行う内視鏡手術の難易度は比較にならない。
年に1200例程度行われている日本「生体腎移植」のなかで、「内視鏡手術」によるものは何例あるのか、その累積手術数は何例あるのか、それを母数として「内視鏡手術死亡数」を比較しなくては意味がない。すでに2例の死者が出ているのだから、おおざっぱにみても、昔の肝生検と同じ「1000例に1例の死者」が出ているのではないか?
これをみても、「修復腎移植はドナーに害がある、生体腎移植にはそれがない」とする移植学会の倫理と論理は破綻している。
オーストラリアからの報告では、2000/12~2009/1の期間に行った「内視鏡的腎摘出」141例で、主要合併症は3例=2.1%(脾梗塞、乳日腹水、肺栓塞)、死亡ゼロとしている。メリットは入院日数の短縮で、平均4日だという。
(He B et al. ANZ J Surg, 2011, 81(3): 159- ) 熟練した医師が行えば安全な手術であることは間違いない。
「和田心臓移植」事件の時、移植学会は「ここで和田君を罪人にしたら、日本の心臓移植はできなくなる」として、トップが相談して和田教授をかばった。これが日本が「移植後進国」になった原因である。
今回も日本移植学会は、執刀医の手術ミスを「手術合併症」とする報告書をまとめて、執刀医をかばおうとしている。かばう理由は私にはわかっているが、書かない。分かっているのは、真実の隠蔽は「移植医療不信」をつのらせるだけだということだ。
医療ジャーナリストにぜひ頑張ってもらいたい。ヒントはこの執刀医はどこで研修して「腎移植専門医」になったのか? 専門医と施設を認定した委員会の長は誰か、という点にある。
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