なぜ、難波先生なのかと問われたら、
読んで頂ければ解るとしか言えない。
コンピューターのような記憶力と、天才的な分析力、
修復腎移植を学術的に分析し、容認する見解を早くから発表された方で、
そのことで、出会った方なのです。
ぜひ、お読みください。
//ここから
【新・日本の自殺】学習院大学の教授をしていた香山健一のグループが、「グループ1984」の名前で『日本の自殺』(今、PHP文庫)を出したのは1976年末のことだ。香山は「未来学」のパイオニアでもあった。グループ名はもちろんオーウェルの『984年』(ハヤカワ文庫)にちなんでいる。この本は今でも知的刺激を与えてくれる本だ。アップル社が、「広告の金字塔」といわれる「1984年」をパロディにした有名なテレビ・コマーシャル、を作ったのは1984年1月である。
但しオリジナルな『日本の自殺』には、国債発行の危険性が論じられていない。
「文藝春秋」5月号に「シミュレーション 国家破綻:新・日本の自殺」という、近未来小説風の論文が載っている。まとめたのは「藤吉雅春とグループ<1984Ⅱ>」とある。藤吉という人は聞いたことがないが、以下のようなジャーナリストらしい。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%A3%B5%C8%B2%ED%BD%D5
ところどころ、難解な金融工学の用語が出て来るが、財務省理財局の課長浅田敏子が主人公で、2012年3月から話が始まり、2014年10月に日本の財政が破綻し、ハイパーインフレーションが起こって、公務員の定数が50%削減され、年金が40%カットされるというところで終わる。もちろん野田内閣は総辞職し、橋下徹を首班とする連立内閣が成立しており、橋下首相のリーダーシップでこれが行われる。
実在の人物名や、ごく近未来の時間と場所が設定されており、「これは予測がはずれたら、大ごとだな」と思いながら読んだが、国債発行残高だけでなく、日本国債を買っている機関投資家や「日本国債の先物」を売っている投資家のことも書いてあり、また野田首相が、マニフェスト違反であるのに、なぜ「税と社会保障の一体改革」ということを「政治生命をかけてやる」といいだしたのか、これを読んでよくわかった。
庶民は銀行に金を預ける。他の投資先を知らないからだ。銀行はその金で利率の高い日本国債を買う。国は売った金で不足する予算を補っている。要するに金の流れが、庶民→銀行→政府→社会保障費となっていて、企業に流れて行かない。これが不況の最大原因である。この国債による負債は、1000兆円にもなっている。この95%は銀行と生命保険会社という国内機関投資家が保有している。残りの5%が個人と外国の機関投資家により保有されている。
国家が年間税収の20倍の累積した借金を抱えているのだから、金利負担と期限が来た年金の償還原資として、また新たに国債を発行する、という事態になっている。やがて、ギリシアと同様に、日本国債の国際的評価が下げられ、買い手がなくなるので、金利を上げざるをえなくなる。そうすると日本国債への信頼がなくなり、銀行や生保が売り始め、新規国債を引き受けなくなる。
すると政府は日銀法を改正して、「日銀が直接、国債を買う」という非常措置に出ざるをえなくなる。これは日銀が輪転機を動かして紙幣を増刷すること、還元すれば通貨流通量の増大を意味する。「モノ」の量が固定している場合に、通貨を増発すれば、モノの値段は上がる。
つまり意図的なインフレーション誘導である。こうなると庶民は、預金を解約して「保存が利き、値上がりを待って売れる」モノを買うようになる。外貨預金もその選択肢に入る。政府は信頼を回復し、支出をカットするために、国家公務員の削減と年金カットをやらざるを得なくなる。
十分ありえるシナリオである。恐らく政府には一般に公開していない秘密があって、官僚のトップしか知らず、本当に信頼のおける政治家にしかその秘密を明かさないのだと思う。鳩山や菅が、秘密を知らされたとはとても思えない。しかし、野田はおそらく国家の最高機密を財務官僚のトップから教えられたにちがいない。それが彼の「君子豹変」として表れているのだろうと、私は勝手に解釈した。
今の国家財政が、太平洋戦争末期の1945年のそれに酷似していることは、前にも指摘した。この年の一般予算は215億円、「戦時国債」の発行が850億円。1937年(日支事変発生)からの戦時国債の発行総残高は、2,221億円つまり一般会計(税収)の11倍に達していた。見方によっては、今の財政状態のほうがもっと悪い。
戦争中に国民が買った戦時国債は、戦後のハイパーインフレーションで紙くずになった。その苦い経験がある世代は、そもそも国債を買わないそうだ。個人で買っているのは、かつて国債が紙くずになったことを知らない、高度成長経済の時代以後の人たちだそうだ。私は母から、その経験をよく聞かされているから、国債は1枚ももっていない。
まあ、現在の事態の解釈には、人により差があると思うが、かつて「NHK週間こどもニュース」の「お父さん」役をやっていた池上彰が中曽根康弘から塩川正十郎まで、7人の政財界人に「戦後不況史」について連続インタビューを行ってiいる。「新・日本の自殺」と合わせて誌面の1/3を占めており、840円で買う価値のある号だと思います。
元財務大臣の塩川正十郎がこう語っている。「それ(国債発行)や。それがあかんかった。それをやり続けたあげく、本年(12年)度末には、国と地方の長期債務残高は合計940兆円に達する見込みです。対GDP比で196パーセントですよ。この数字、太平洋戦争末期の水準だと言ったら、いくらなんでも、少しはゾッとしてくれるかもしれませんな。」
塩爺がいっていることは、私と同じですな。いまや、国民1人あたり(赤ん坊から超高齢者まで)の借金は、544万円という信じがたい額である。4人家族だと2,200万円近くになる。
この特集のどこにも書いてないが、戦後の国債発行は1973年の「第一次オイルショック」の後で始まり、ケインズ経済学の信者である宮澤喜一が大蔵大臣と総理を務めた80年代に拡大したと思う。国債はサラ金と同じで、打ち出の小槌みたいに金が入るのだから、すぐに国家という法人が、麻薬中毒患者のようになってしまう。
このくだりに、編集者が「<花見酒>をやめない日本」という小見出しを付けているが、もう若い世代だから、「花見酒」が三遊亭小円馬の得意だった落語演目で、「実態のない経済」のことだと知らないのではなかろうか。つまり「花見酒の経済」を「お花見に浮かれて酒を飲むような経済」と字面解釈しているのであろう。
米国ではロナルド・レーガンという、ハリウッドのB級映画の俳優上がりの大統領が出てきて、古典派経済学へ回帰し、いわゆる「レーガノミックス」で財政危機を救ったが、日本にはそういう政治家が出なかった。ケインズ経済学はもう古い。経済学の元の言葉である「オイコノミコス」(家政学)にいったん戻るべきだろう。国家の経済も、個人の経済も基本的には変わらないことは、プラトンのライバルで、スパルタに亡命し、荘園経営者として成功したクセノフォンが、一書をあらわしている。
読んで頂ければ解るとしか言えない。
コンピューターのような記憶力と、天才的な分析力、
修復腎移植を学術的に分析し、容認する見解を早くから発表された方で、
そのことで、出会った方なのです。
ぜひ、お読みください。
//ここから
【新・日本の自殺】学習院大学の教授をしていた香山健一のグループが、「グループ1984」の名前で『日本の自殺』(今、PHP文庫)を出したのは1976年末のことだ。香山は「未来学」のパイオニアでもあった。グループ名はもちろんオーウェルの『984年』(ハヤカワ文庫)にちなんでいる。この本は今でも知的刺激を与えてくれる本だ。アップル社が、「広告の金字塔」といわれる「1984年」をパロディにした有名なテレビ・コマーシャル、を作ったのは1984年1月である。
但しオリジナルな『日本の自殺』には、国債発行の危険性が論じられていない。
「文藝春秋」5月号に「シミュレーション 国家破綻:新・日本の自殺」という、近未来小説風の論文が載っている。まとめたのは「藤吉雅春とグループ<1984Ⅱ>」とある。藤吉という人は聞いたことがないが、以下のようなジャーナリストらしい。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%A3%B5%C8%B2%ED%BD%D5
ところどころ、難解な金融工学の用語が出て来るが、財務省理財局の課長浅田敏子が主人公で、2012年3月から話が始まり、2014年10月に日本の財政が破綻し、ハイパーインフレーションが起こって、公務員の定数が50%削減され、年金が40%カットされるというところで終わる。もちろん野田内閣は総辞職し、橋下徹を首班とする連立内閣が成立しており、橋下首相のリーダーシップでこれが行われる。
実在の人物名や、ごく近未来の時間と場所が設定されており、「これは予測がはずれたら、大ごとだな」と思いながら読んだが、国債発行残高だけでなく、日本国債を買っている機関投資家や「日本国債の先物」を売っている投資家のことも書いてあり、また野田首相が、マニフェスト違反であるのに、なぜ「税と社会保障の一体改革」ということを「政治生命をかけてやる」といいだしたのか、これを読んでよくわかった。
庶民は銀行に金を預ける。他の投資先を知らないからだ。銀行はその金で利率の高い日本国債を買う。国は売った金で不足する予算を補っている。要するに金の流れが、庶民→銀行→政府→社会保障費となっていて、企業に流れて行かない。これが不況の最大原因である。この国債による負債は、1000兆円にもなっている。この95%は銀行と生命保険会社という国内機関投資家が保有している。残りの5%が個人と外国の機関投資家により保有されている。
国家が年間税収の20倍の累積した借金を抱えているのだから、金利負担と期限が来た年金の償還原資として、また新たに国債を発行する、という事態になっている。やがて、ギリシアと同様に、日本国債の国際的評価が下げられ、買い手がなくなるので、金利を上げざるをえなくなる。そうすると日本国債への信頼がなくなり、銀行や生保が売り始め、新規国債を引き受けなくなる。
すると政府は日銀法を改正して、「日銀が直接、国債を買う」という非常措置に出ざるをえなくなる。これは日銀が輪転機を動かして紙幣を増刷すること、還元すれば通貨流通量の増大を意味する。「モノ」の量が固定している場合に、通貨を増発すれば、モノの値段は上がる。
つまり意図的なインフレーション誘導である。こうなると庶民は、預金を解約して「保存が利き、値上がりを待って売れる」モノを買うようになる。外貨預金もその選択肢に入る。政府は信頼を回復し、支出をカットするために、国家公務員の削減と年金カットをやらざるを得なくなる。
十分ありえるシナリオである。恐らく政府には一般に公開していない秘密があって、官僚のトップしか知らず、本当に信頼のおける政治家にしかその秘密を明かさないのだと思う。鳩山や菅が、秘密を知らされたとはとても思えない。しかし、野田はおそらく国家の最高機密を財務官僚のトップから教えられたにちがいない。それが彼の「君子豹変」として表れているのだろうと、私は勝手に解釈した。
今の国家財政が、太平洋戦争末期の1945年のそれに酷似していることは、前にも指摘した。この年の一般予算は215億円、「戦時国債」の発行が850億円。1937年(日支事変発生)からの戦時国債の発行総残高は、2,221億円つまり一般会計(税収)の11倍に達していた。見方によっては、今の財政状態のほうがもっと悪い。
戦争中に国民が買った戦時国債は、戦後のハイパーインフレーションで紙くずになった。その苦い経験がある世代は、そもそも国債を買わないそうだ。個人で買っているのは、かつて国債が紙くずになったことを知らない、高度成長経済の時代以後の人たちだそうだ。私は母から、その経験をよく聞かされているから、国債は1枚ももっていない。
まあ、現在の事態の解釈には、人により差があると思うが、かつて「NHK週間こどもニュース」の「お父さん」役をやっていた池上彰が中曽根康弘から塩川正十郎まで、7人の政財界人に「戦後不況史」について連続インタビューを行ってiいる。「新・日本の自殺」と合わせて誌面の1/3を占めており、840円で買う価値のある号だと思います。
元財務大臣の塩川正十郎がこう語っている。「それ(国債発行)や。それがあかんかった。それをやり続けたあげく、本年(12年)度末には、国と地方の長期債務残高は合計940兆円に達する見込みです。対GDP比で196パーセントですよ。この数字、太平洋戦争末期の水準だと言ったら、いくらなんでも、少しはゾッとしてくれるかもしれませんな。」
塩爺がいっていることは、私と同じですな。いまや、国民1人あたり(赤ん坊から超高齢者まで)の借金は、544万円という信じがたい額である。4人家族だと2,200万円近くになる。
この特集のどこにも書いてないが、戦後の国債発行は1973年の「第一次オイルショック」の後で始まり、ケインズ経済学の信者である宮澤喜一が大蔵大臣と総理を務めた80年代に拡大したと思う。国債はサラ金と同じで、打ち出の小槌みたいに金が入るのだから、すぐに国家という法人が、麻薬中毒患者のようになってしまう。
このくだりに、編集者が「<花見酒>をやめない日本」という小見出しを付けているが、もう若い世代だから、「花見酒」が三遊亭小円馬の得意だった落語演目で、「実態のない経済」のことだと知らないのではなかろうか。つまり「花見酒の経済」を「お花見に浮かれて酒を飲むような経済」と字面解釈しているのであろう。
米国ではロナルド・レーガンという、ハリウッドのB級映画の俳優上がりの大統領が出てきて、古典派経済学へ回帰し、いわゆる「レーガノミックス」で財政危機を救ったが、日本にはそういう政治家が出なかった。ケインズ経済学はもう古い。経済学の元の言葉である「オイコノミコス」(家政学)にいったん戻るべきだろう。国家の経済も、個人の経済も基本的には変わらないことは、プラトンのライバルで、スパルタに亡命し、荘園経営者として成功したクセノフォンが、一書をあらわしている。
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