【<修復腎移植>論文の掲載】
「国際移植(Transplant. International)」という移植専門雑誌の2015/9月号に米フロリダ大学医学部から小径腎がんをもちいた修復腎移植の4例が報告されている。
Lugo-Baruqui JA他:Living donor renal transplantation with incidental renal cell carcinoma from donor allograft. Transpl Int. 2015 Sep;28(9):1126-30
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25898787
「偶発的なドナー腎の腎細胞がんを伴う生体腎移植」という表題で435例の生体腎移植例中に4例の小径腎がん(RCC淡明細胞型2,乳頭状1,多発性1)があり、いずれもバック・テーブルで切除修復した後、移植に用いた。患者追跡の中央値が36ヶ月だが、<At the end of follow-up period, all patients had remained free of tumor.>と最終追跡時点で、4例とも腫瘍再発はないという。
<Donors with suspicious renal masses might be accepted for living donation. Partial nephrectomy before transplantation could offer a cure for the disease without risks for the recipient with therapeutic benefit for the donor.>(腎がんの疑いがある生体ドナーも受け容れてよい。移植前の病変部の部分切除はレシピエントの原病に治療効果があるがあるだけでなく、ドナーにも治療利益がある)と結論している。
「互恵的利他主義」の原則の応用例として述べられたものだ。
これは「修復腎移植はドナーに害がある」という、日本移植学会の主張を完全に否定している。
同じく、日本の臨床研究としておこなわれている「修復腎移植」10例の報告論文が、
Ogawa Y他:Transplantation of Restored Kidneys From Unrelated Donors After Resection of Renal Cell Carcinoma: Results From 10 Patients. Transplant Proc. 2015,47(6): 1711-9.
として「移植紀要(Transplant Proc.)」誌に掲載になった。おめでとうございます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26293039
筆頭著者の小川由英先生ほか、万波誠以下の「瀬戸内グループ」と安富祖徳州会理事が共著者になっている。この論文には雑誌編集部による、「ハイライト」という要約がついているので、それを紹介する。
<論文表題「他人ドナーから腎細胞がんを切除した後に、修復腎移植を行った10例の結果」
強調点=
★ 小径腎がんを用いた修復腎移植10例を行った。
★ 32〜58ヶ月の経過観察により、9例は腫瘍再発なく生着生存中である。(1例は急性心不全で死亡)
★ 小径腎がんを用いた修復腎移植は、(腎移植を受けないと命の危険がある)高リスク患者に妥当性がある。>
内容は、小川先生に拙訳の「抄録」を送ったところ、丁寧な著者抄録の日本語版をいただいたので、それを紹介に代えたい。
<考察の中では、難波先生のご指摘の
① 修復腎移植は第三の移植であり、ドナー不足の解消に役立つ可能性がある。
② 中国などでの渡航移植の増加の歯止めになりうる。
③ この10例の中のドナー4名は70歳以上であったが、移植した後の腎機能が良好であったことより、高齢者の腎臓でも有益であった。
④ がんの伝搬/再発がなかった点は、世界中で実施されている100例以上の小径腎がんを修復腎移植した結果を再確認した。
⑤ 堤先生の指摘および厚労省と泌尿器科学会での報告より、小径腎がんの腎摘が多いわが国では、毎年数千個にのぼる摘出腎を捨てるのは勿体ない、
などの点を105にわたる論文を引用して詳細に述べている。>
このうち③の「70歳以上の高齢者の腎臓でも有益であった」という結果は、私が唱える「個体の寿命と臓器の寿命は一致しない」という説を実証するものとして興味深い。
44歳のKさんが、75歳の老人からもらった修復腎は、ドナーが83歳で死んだのに、術後20年以上にわたり生着機能した。
同じく44歳のHさんが、62歳の男性からもらった修復腎は、18年にわたり生着して機能している。
ともかく今回の論文掲載がはずみとなり、「先進医療」再申請と認可→保険診療承認という大きな流れが生じることを期待したい。
<付記>
この前、「第33回中四国臨床臓器移植研究会」のことを書いたら、当番世話人の筧・香川医大泌尿器科教授からプログラムが郵送されてきた。「え、学会長からの招待状?!」と一瞬思ったが、昨年広島でおこなわれた別の講演会に出席し、名簿に名前を記入したので、「現役の移植医」と間違われたものらしい。広島大学病院から転送されてきたものだった。
だが私はこれを「天啓」ととらえ、8/29(土)13:00〜18:15、「JR高松ホテル・クレメント」で開催される研究会に出席し、修復腎移植や渡航移植についての演題を拝聴し、会場での議論に耳を傾けることにした。新聞や論文でお名前は知っているが、お会いしたことがない方にも会えることを期待している。岡山大の粟屋先生にもお会いできたらと思う。
土曜日1泊し、翌日の夕方に自宅にもどる予定でいる。
「国際移植(Transplant. International)」という移植専門雑誌の2015/9月号に米フロリダ大学医学部から小径腎がんをもちいた修復腎移植の4例が報告されている。
Lugo-Baruqui JA他:Living donor renal transplantation with incidental renal cell carcinoma from donor allograft. Transpl Int. 2015 Sep;28(9):1126-30
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25898787
「偶発的なドナー腎の腎細胞がんを伴う生体腎移植」という表題で435例の生体腎移植例中に4例の小径腎がん(RCC淡明細胞型2,乳頭状1,多発性1)があり、いずれもバック・テーブルで切除修復した後、移植に用いた。患者追跡の中央値が36ヶ月だが、<At the end of follow-up period, all patients had remained free of tumor.>と最終追跡時点で、4例とも腫瘍再発はないという。
<Donors with suspicious renal masses might be accepted for living donation. Partial nephrectomy before transplantation could offer a cure for the disease without risks for the recipient with therapeutic benefit for the donor.>(腎がんの疑いがある生体ドナーも受け容れてよい。移植前の病変部の部分切除はレシピエントの原病に治療効果があるがあるだけでなく、ドナーにも治療利益がある)と結論している。
「互恵的利他主義」の原則の応用例として述べられたものだ。
これは「修復腎移植はドナーに害がある」という、日本移植学会の主張を完全に否定している。
同じく、日本の臨床研究としておこなわれている「修復腎移植」10例の報告論文が、
Ogawa Y他:Transplantation of Restored Kidneys From Unrelated Donors After Resection of Renal Cell Carcinoma: Results From 10 Patients. Transplant Proc. 2015,47(6): 1711-9.
として「移植紀要(Transplant Proc.)」誌に掲載になった。おめでとうございます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26293039
筆頭著者の小川由英先生ほか、万波誠以下の「瀬戸内グループ」と安富祖徳州会理事が共著者になっている。この論文には雑誌編集部による、「ハイライト」という要約がついているので、それを紹介する。
<論文表題「他人ドナーから腎細胞がんを切除した後に、修復腎移植を行った10例の結果」
強調点=
★ 小径腎がんを用いた修復腎移植10例を行った。
★ 32〜58ヶ月の経過観察により、9例は腫瘍再発なく生着生存中である。(1例は急性心不全で死亡)
★ 小径腎がんを用いた修復腎移植は、(腎移植を受けないと命の危険がある)高リスク患者に妥当性がある。>
内容は、小川先生に拙訳の「抄録」を送ったところ、丁寧な著者抄録の日本語版をいただいたので、それを紹介に代えたい。
<考察の中では、難波先生のご指摘の
① 修復腎移植は第三の移植であり、ドナー不足の解消に役立つ可能性がある。
② 中国などでの渡航移植の増加の歯止めになりうる。
③ この10例の中のドナー4名は70歳以上であったが、移植した後の腎機能が良好であったことより、高齢者の腎臓でも有益であった。
④ がんの伝搬/再発がなかった点は、世界中で実施されている100例以上の小径腎がんを修復腎移植した結果を再確認した。
⑤ 堤先生の指摘および厚労省と泌尿器科学会での報告より、小径腎がんの腎摘が多いわが国では、毎年数千個にのぼる摘出腎を捨てるのは勿体ない、
などの点を105にわたる論文を引用して詳細に述べている。>
このうち③の「70歳以上の高齢者の腎臓でも有益であった」という結果は、私が唱える「個体の寿命と臓器の寿命は一致しない」という説を実証するものとして興味深い。
44歳のKさんが、75歳の老人からもらった修復腎は、ドナーが83歳で死んだのに、術後20年以上にわたり生着機能した。
同じく44歳のHさんが、62歳の男性からもらった修復腎は、18年にわたり生着して機能している。
ともかく今回の論文掲載がはずみとなり、「先進医療」再申請と認可→保険診療承認という大きな流れが生じることを期待したい。
<付記>
この前、「第33回中四国臨床臓器移植研究会」のことを書いたら、当番世話人の筧・香川医大泌尿器科教授からプログラムが郵送されてきた。「え、学会長からの招待状?!」と一瞬思ったが、昨年広島でおこなわれた別の講演会に出席し、名簿に名前を記入したので、「現役の移植医」と間違われたものらしい。広島大学病院から転送されてきたものだった。
だが私はこれを「天啓」ととらえ、8/29(土)13:00〜18:15、「JR高松ホテル・クレメント」で開催される研究会に出席し、修復腎移植や渡航移植についての演題を拝聴し、会場での議論に耳を傾けることにした。新聞や論文でお名前は知っているが、お会いしたことがない方にも会えることを期待している。岡山大の粟屋先生にもお会いできたらと思う。
土曜日1泊し、翌日の夕方に自宅にもどる予定でいる。
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