ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【朝日騒動】難波先生より

2014-09-15 11:43:34 | 難波紘二先生
【朝日騒動】
 8/7のメルマガで8/5-6「朝日従軍慰安婦」検証記事を取り上げたが、その後5/20同紙「所長命令に違反して福島第一原発職員が待避」という記事の誤報問題や週刊誌広告の掲載拒否、記事取り消しに対する謝罪がないことを問題にした「池上コラム」の掲載拒否などが相次ぎ、「朝日」は絶体絶命の境地に追い込まれた。
 「正論」、「WILL」、「SAPIO」、「文藝春秋」などの月刊誌、「週刊新潮」、「週刊現代」、「週刊ポスト」などの週刊誌も「反朝日」の記事を満載して、追撃の構えをゆるめていない。
 「珊瑚礁事件」よりもたちの悪い誤報だから、社長が謝罪し責任を取るのが当たり前だとは思ったが、だまって様子を見ていた。今日9/11になって9/8NYへの出張を直前に取りやめた朝日の木村伊量社長が記者会見し、「吉田所長記事」の取り消し、慰安婦記事への謝罪を行い、辞任を示唆したという。
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014091100781
 政府が「吉田昌郎調書」の公開を決めたから、情報源の朝日独占が崩れ、ウソがはっきりと他紙にもわかり、9/11「毎日」までが「朝日慰安婦報道」検証特集を載せたくらいだから、今朝の同紙面を見て覚悟したのだろう。「過ちて改めることなきを過ちという」というから、遅きに失しているが、訂正と謝罪はないよりあった方がよい。
 しかし、これは早くから「朝日慰安婦報道」や「吉田所長命令違反」の間違いを指摘してきた「産経」の前面勝利だなと思う。部数は少なくても報道の質により、影響力のある知識人を動かし、世論に影響を及ぼす新聞を「クオリティペーパー」といい、かつてのワシントンポストがその典型だが、いまや「産経」はそういう新聞になったと思う。
 9/11 21:00のNHKTVニュースはちゃんと朝日新聞社長の記者会見を報じたが、朝日系の「報道ステーション」はこの間1ヶ月以上、「朝日慰安婦問題」についてまったく報じなかった。前は10時前になると母屋に戻り、この番組を見ながら晩酌するのが常番になっていたのだが、8月の中旬頃になって「さてはやらないつもりだな」と腹が読めたので、見る気がしなくなった。つまり番組に対する信頼性を失った。
 それで仕方ないからNHKのニュースを早めに見るようにしたら、これも結構面白い。それで最近はもっぱら美人の顔を見ている。コメンテーターの恵村氏の陰気な顔を見ているより、よっぽど楽しい。
 ところが9/11の夜に限って急遽「慰安婦問題と朝日」の番組を流したのだそうだ。これも「後出しジャンケン」。
 9/12韓国「中央日報」は朝日騒動をこう報じている。
<日本の朝日新聞が相次ぐ誤報波紋で危機を迎えている。…朝日新聞はこの1カ月間に2件の大型誤報波紋で少なからず打撃を受けることになった。8月5、6日付では、済州道で多くの女性が慰安婦として強制連行されたという故・吉田清治氏の主張を報道した自社の過去の記事が誤報であることを認めて取り消した。 
  これに対し自民党の政治家や読売など保守新聞が「朝日たたき」に乗り出している。>
http://japanese.joins.com/article/949/189949.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp|main|top_news
 当初、韓国の新聞は「朝日」を擁護していたが、事実関係が詳細に明らかにされたので、もうそういう論調は新聞からは姿を消したようだ。

 9/12「朝日」は「吉田調書」誤報問題について「(5/20の)記事を書いた時点では、所員側にその点(吉田所長命令をどう理解していたか)を確認する作業が不足していた」と釈明している。つまり必要な「ウラ取り」をしていないということだ。これは「植村隆記者慰安婦報道」とまったく同じ構造だ。金学順の証言テープを「挺対協」で聴かされて、金学順がキーセン学校に行っていた芸妓であり、義父により売られたということを全く調べないで、「挺身隊として拉致された」と書いた。それらをチェックすべきデスクもまっとうに機能していなかった。
 それにしても門田隆将『死の淵を見た男:吉田昌郎と福島第一原発の500日』(PHP, 2012/4)を「朝日」の「エリート記者たち」は読まなかったのであろうか?ここには福島第一が最悪の局面を迎える中、2011年3月15日朝、吉田所長が「各班は、最少人数を残して待避」という命令を発し、それに基づいて残留した69人のスタッフ以外の、約600人の職員、協力企業従業員が福島第二に避難したことが、福島第一の職員伊沢郁夫(3/11の1,2号機中央制御室の当直長)、猪狩典子、佐藤真理の証言により描かれている。そしてこの証言内容によるストーリーは、今回「朝日」が5/20記事を取り消し、最終的に「正しい」と報じた内容と一致している。
 政府事故調以外に、生前の吉田にインタビューした唯一のジャーナリストである門田が、自分のレポートを真っ向から否定した「朝日」記事に対して、怒り狂うのは当たり前であろう。ここにも「吉田調書」を独占入手し、その文面の独断的解釈に依拠して、「ウラ取り」の努力をせずに記事を書いた「朝日」の「エリート的思い込み」がある。
 「ウラ取り」はニュース報道においては、科学における「再現実験」と同じような意義をもっている。「旧石器遺跡捏造」事件と「STAP細胞」事件は、一次情報の真偽を確認しないで、そのまま鵜呑みにしたのが後に大事件となる出発点だが、「朝日」記事も「一次情報」のウラ取り(再確認)がないところから発生したという点で同じカテゴリーのミスだと思う。このことは前にも指摘した。

 科学における「原著論文」(何か新しい事実を報告する論文)は4部から成り立っている。
 第1は「序論」で、目的とその分野での過去の論文を検討し、何が明らかで何が不明かを述べた部分。ここでは自分の意見と反対の論文も取り上げられなければいけない。
 第2は「材料と方法」で、自分の疑問や仮説を検証するために、どのような材料(素材、実験動物)を用いてどのような実験系を組んだかを記述する。実験回数も書く。
 第3は「結果」で、実験の結果えられた数値や変化を、できるだけ定量的に記述する。
 第4は「考察」で、実験結果からどのような解釈が成立するかを、自分の過去の報告や他の研究者の報告を援用しながら論じる。その際に対立する結果や意見を述べている他の研究者の論文も扱わなくてはならない。
 これらのテキストの後に、重要な既報告論文のリストが付き、番号により本文の該当箇所と対応づけられる。
 最後に「抄録」ないし「要約」が作成され、論文の冒頭に置かれる。
 最近ではここも序論、方法、結果、考察という構成になっているのが普通である。多数の論文が発表されるために、研究者がすべての論文の本文を読むことは不可能になっており、せめて自分の論文の要約だけでも読んでもらい、信じてもらおうとするためである。この要約部分を集めたものが「新聞記事」である。
 従って、よい新聞記事は、やはり科学論文と同じように、記者が取材した方法と対象者、そこで観察された事象とそれについての記者の「解釈」がちゃんと区別されていなければいけない。他の解釈や別の事実がある場合には、それにも考察が及んでいなければならない。

 「従軍慰安婦第1号」に関する1991/8の「朝日」植村隆記者報道は、挺身隊と慰安婦を混同するという初歩的な無知があり、身内(義母)が慰安婦問題を追及する韓国の市民団体の幹部であり、「挺対協」から渡された金学順のテープを一方的に聴いて記事を書くなど、中立公正な立場からの取材といえない。この点でプロパガンダ紙ならともかく、普通の新聞記事としては失格である。
 5/20「朝日」吉田調書報道も同様で、「調書の誤読」の上に、所長命令が出た時、現場にいた職員からのウラ取りが欠如したまま、記事にされた。それは「他者は吉田調書を入手できない」という自信があったからであろうが、恐ろしいことだ。それは「バレなければ何を書いてもよい」という無意識の発想があったためではないか。それを山本七平は「空気」と呼んだ。
 さらに9/14「産経」は2年前に「朝日」が会社(任天堂)のHPから記事をパクリながら、インタビューしたように見せかけた記事を載せたことを報じている。
 http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140914/ent14091409490010-n1.htm
 9/14「朝日」も謝罪記事を載せている。
 http://www.asahi.com/articles/DA3S11350303.html
 これは1950/9に起こった「朝日」神戸支局記者による地下共産党幹部「伊藤律架空記者会見」の記事とそっくり同じ構図ではないか。
 これでは「STAP細胞事件」で、小保方が自分の論文に、ある民間会社のHPから画像を盗用していた問題を追及できないわけだ。いったい「朝日」はどうなっているのだろう。
 一連の騒動で、「朝日」が失った信用は大きい。

 9/13「産経」三品貴志の論評<朝日新聞吉田調書記事撤回、大メディアの「情報独占」に厳しい目>
は今回の事件を見事に総括していると思う。
 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140913/stt14091305100002-n1.htm
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【宿題代行業】難波先生より | トップ | 【書込を読んで<デング熱>... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Mr.S)
2014-09-15 18:56:32
朝日新聞というのは実に人間味のある新聞社だと感じる。
ここで言う人間味とは良い意味ではなく、「人間っぽい」という事である。
儲けるためには国も売るし、偽記事も書いてきたわけだ。
戦争を怖がって自虐意識の強い日本国民の性質を利用して反日を装い、反戦を訴えるという見せかけのスタンスはまさに儲け第一主義。実際は平和などクソくらえで中韓から攻撃される事をエネルギーとして会社の屋台骨を支えてきた極悪企業なのだ。
そこに大御所俳優・女優が同じように反戦を訴えて寄稿するのが常な日本。マスコミもおかしいがマスコミの中で活躍する輩もおかしいのが多い。
吉永小百合氏などがその典型だ。
彼女は何も知らないのかもしれないし、利用されているだけかもしれないが、一般市民に影響を与える存在である事を自ずと認識していないようで、無責任と言わざるを得ない。
返信する
Unknown (Unknown)
2014-09-16 22:17:23
朝日は「普通の新聞」ではないのでは。
プロパガンダ新聞でしょう。今回の朝日で一番おもしろい解説は:
http://www.youtube.com/watch?v=Vfn4Z3A8X8U

吉永小百合は確信犯。「反戦,平和」で自分を高く売っているが,その卑しさは西武との関係からも分かる。
返信する
Unknown (Mr.S)
2014-09-17 03:07:10
一時間以上も見てられないよ。最初の10分だけで満足した。
返信する

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事