ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【ユートピア】難波先生より

2013-01-29 12:19:57 | 難波紘二先生
【ユートピア】日本では何か新しい場所に「―トピア」と語尾をつけるのがはやりである。
 あれは本来、トマス・モアの造語でギリシア語のUtoposを、転じてラテン語化して「Utopia」とし、それをラテン読みの「ウトピア」でなく、英語読みの「ユートピア」と発音したものだ。もとは「どこにもない国」という意味である。
 モアの原本はラテン語で書かれている。


 そのモアは、理想国ユートピアにおける金の使用法について述べている。
 「人間はその愚かさのために、稀少なものは価値あるものとして、金銀に鉄よりも高い価値を与えた。
 この国では金銀は蔑まれ、便器はわざと金で作ってある。罪人の鎖や足かせも金で作る。」
 こういう国は、1516年の「ユートピア」出版以来まだないから、やはり「どこにもない国」なのだろう。
 大法官モアは、英国の信長ともいうべきヘンリー8世の離婚と再婚に反対して、王の逆鱗に触れ死刑になった。、


 ピーター・バーンスタイン『ゴールド:金と人間の文明史』(日経新聞社, 2001)は、トマス・モアの言葉をエピグラフに引用している。金をめぐる欲望の世界史だ。
 スペイン人がインカ国王を人質に取り、王の体重と同じ重さの金を身代金として要求したのは有名だ。
 歴史を400年ほど遡れば、スペイン人もアルカイダも一緒である。


 金は王水にしか溶けず、化学的反応を起こしにくい。有史以来、掘り出された金は膨大な量に上り、今頃は地上に溢れているはずなのに、そうならないのは「退蔵して忘れられている」からであろう。


 1970年頃、1トロイオンス=35ドルだった金は、ニクソン大統領が「ドルと金との兌換性停止」を発表すると、猛烈なドル安となり一時850ドルの高値をつけた。いわゆる「ニクソン・ショック」である。1トロイオンスは31.1グラム。
 つまり1グラムの金は国際価格で27.3ドルにまで上昇した。当時は1ドル=260円だったので、7,160円である。


 ドルが金とのリンクを捨て、「変動相場制」移行したことで猛烈な円高が進んだ。逆にいえばドルが安くなったのである。
1996年頃は、1ドル=80円を割った。円が強くなって海外旅行や輸入品が安くなった。本来、自国通貨が強くなって悪いことなど何もない。ドル建てで輸出することしか企業は考えていないから、ドルを円に換える時に安くなって「儲からない」だけだ。
 円建てで輸出すれば、デフレなら安く輸出できる。貿易技術の問題が、いつのまにか「2%インフレ目標」という政策の問題にすり替わっている。


 金のもう一つの物性は、「伸ばせばいくらでも薄い金箔をつくれる」ということだ。透明になるまで延ばせる。
 値段の高い日本酒に金箔が入っているが、あれは何の意味もない。無知な消費者を騙しているだけだ。試みに金箔を口に含んで噛んでみるがいい、仁丹ほどの大きさにもならないから。
 醸造会社にほとんど経費はかからない。高級感を出して、高く売りつけようとしているだけだ。


 それというのも、人間には「金に目がくらむ」性質があるからだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【日揮アルジェリア】難波先... | トップ | スピードが上がらない »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事