【書評など】
1)エフロブ「買いたい新書」の書評No.305に、 ジョナサン・ スウィフト「召使心得・他4篇」(平凡社ライブラリー)を取り上げました。
政府批判にもろに感情を込めると嫌みになるが,事実に多少のレトリックをまじえて淡々と書けば皮肉や風刺となる。理想国家を描いたトマス・モアの「ユートピア」や「ガリバー旅行記」に出てくるいくつかの国がそうである。
本書は彼の死(1745年,78歳)後に遺著として出版されたもので,召使いが守るべきマニュアルを執事,料理人,下男,女中,小間使い,乳母,家庭教師など16職種について,詳細に述べている。総論と職業別各論に分かれているが,総論は「サラリーマン心得」として現在でも当てはまる。いかに熱心に仕事をするかのように見せかけて,自分の得をはかるかが書かれている。
岩波文庫「奴婢訓」は訳文と訳語が古風すぎて紹介できなかったが,「アイルランドの貧民児童利用策」(平凡社版では「慎ましき提案」という題)というスウィフトの著作(1729) が含まれている。彼の全作品中でもっとも過激で辛辣な「提案」だ。2015年,原田範行訳の本書は,上記2篇のほかに「ビカースタフ文書」「ドレイピア書簡」「淑女の化粧室」という短篇3作をふくんでいる。いずれも辛辣な風刺と諧謔に充ちている。
アイルランド農業はもとカラスムギと牧畜が主産物だったが,1700年頃ジャガイモが主作物となって急激な人口増加が生じた。イングランドでは産業革命が興り農村の余剰労働力を吸収したが,ほとんどがカトリック教徒の農業国アイルランドでは子沢山の貧乏人が増えて,至るところに子連れの乞食があふれた。著者は奇想天外な人口問題の解決策を提案する。満1歳になった赤ん坊を殺して食ってしまえというのだ。スィフトの全作品の中で最も辛辣なものだ。
以下こちらで、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1451969062
2)高松市の印藤克彦先生(内科医)から「日本社会の生活習慣病No.23」の謹呈を受けた。厚くお礼申し上げます。昨年7月に青森から秋田、岩手、宮城を巡る家族旅行をしたことが書いてあり、興味深く読んだ。
一昨年だったか、新潟で学会があった折に、イサベラ・バード「日本奥地紀行」のルートに従い、新潟・山形・秋田をへて青森に向かうトリップを仲間と計画したのだが、別の事情で中止せざるをえなかっただけに、うらやましく思った。今後も健筆を期待したい。
3)医薬経済社から「医薬経済」1/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
日経の「経済学教室」レベルの記事なら楽しんで読めるだけの知識はあるつもりだが、この雑誌の記事は、薬剤業への特化がつよく、「崩れる検察のストーリー、ディオバン事件、医師が加筆し架空症例の報告も」、「かかりつけ薬局で自分を守ろう」、「オブジーボが描く日本の医療過酷な未来」くらいしか、読んで分かる記事がない。「ナイコメッド対策とMRの峻別」という記事に至っては全文を読んでも「ナイコメッド」が何か、わからなかった。
長い記事は「リード文」を冒頭に置くと、分かりやすくなると思う。
鍛冶孝雄「読む医療No.41」が木村敏「からだ・こころ・生命」(講談社学術文庫, 2015)を取り上げていて、興味深く思った。木村は京大精神科教授で「生命のかたち/かたちの生命」,青土社,1992/7を出しており、あるいはその一般化された本かも知れないが、こういう文庫があることを、この記事で知った。
1)エフロブ「買いたい新書」の書評No.305に、 ジョナサン・ スウィフト「召使心得・他4篇」(平凡社ライブラリー)を取り上げました。
政府批判にもろに感情を込めると嫌みになるが,事実に多少のレトリックをまじえて淡々と書けば皮肉や風刺となる。理想国家を描いたトマス・モアの「ユートピア」や「ガリバー旅行記」に出てくるいくつかの国がそうである。
本書は彼の死(1745年,78歳)後に遺著として出版されたもので,召使いが守るべきマニュアルを執事,料理人,下男,女中,小間使い,乳母,家庭教師など16職種について,詳細に述べている。総論と職業別各論に分かれているが,総論は「サラリーマン心得」として現在でも当てはまる。いかに熱心に仕事をするかのように見せかけて,自分の得をはかるかが書かれている。
岩波文庫「奴婢訓」は訳文と訳語が古風すぎて紹介できなかったが,「アイルランドの貧民児童利用策」(平凡社版では「慎ましき提案」という題)というスウィフトの著作(1729) が含まれている。彼の全作品中でもっとも過激で辛辣な「提案」だ。2015年,原田範行訳の本書は,上記2篇のほかに「ビカースタフ文書」「ドレイピア書簡」「淑女の化粧室」という短篇3作をふくんでいる。いずれも辛辣な風刺と諧謔に充ちている。
アイルランド農業はもとカラスムギと牧畜が主産物だったが,1700年頃ジャガイモが主作物となって急激な人口増加が生じた。イングランドでは産業革命が興り農村の余剰労働力を吸収したが,ほとんどがカトリック教徒の農業国アイルランドでは子沢山の貧乏人が増えて,至るところに子連れの乞食があふれた。著者は奇想天外な人口問題の解決策を提案する。満1歳になった赤ん坊を殺して食ってしまえというのだ。スィフトの全作品の中で最も辛辣なものだ。
以下こちらで、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1451969062
2)高松市の印藤克彦先生(内科医)から「日本社会の生活習慣病No.23」の謹呈を受けた。厚くお礼申し上げます。昨年7月に青森から秋田、岩手、宮城を巡る家族旅行をしたことが書いてあり、興味深く読んだ。
一昨年だったか、新潟で学会があった折に、イサベラ・バード「日本奥地紀行」のルートに従い、新潟・山形・秋田をへて青森に向かうトリップを仲間と計画したのだが、別の事情で中止せざるをえなかっただけに、うらやましく思った。今後も健筆を期待したい。
3)医薬経済社から「医薬経済」1/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
日経の「経済学教室」レベルの記事なら楽しんで読めるだけの知識はあるつもりだが、この雑誌の記事は、薬剤業への特化がつよく、「崩れる検察のストーリー、ディオバン事件、医師が加筆し架空症例の報告も」、「かかりつけ薬局で自分を守ろう」、「オブジーボが描く日本の医療過酷な未来」くらいしか、読んで分かる記事がない。「ナイコメッド対策とMRの峻別」という記事に至っては全文を読んでも「ナイコメッド」が何か、わからなかった。
長い記事は「リード文」を冒頭に置くと、分かりやすくなると思う。
鍛冶孝雄「読む医療No.41」が木村敏「からだ・こころ・生命」(講談社学術文庫, 2015)を取り上げていて、興味深く思った。木村は京大精神科教授で「生命のかたち/かたちの生命」,青土社,1992/7を出しており、あるいはその一般化された本かも知れないが、こういう文庫があることを、この記事で知った。
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