ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】高木仁三「原子力神話からの解放」/難波先生より

2016-05-09 11:53:00 | 難波紘二先生
【書評など】
1) エフロブ「買いたい新書」の書評No.320に高木仁三「原子力神話からの解放」(講談社+α文庫,2011/5)を取り上げました。
 副題が「日本を滅ぼす九つの呪縛」となっている。高木仁三(1938-2000)は東京大学理学部化学科を卒業後,核物理学を専攻し東京都立大助教授となったが,宮沢賢治「羅須地人協会」に共鳴して1975年,職を辞し原発問題を考える「原子力資料情報室」を設立。市民科学者として原子力に関する市民への正しい情報の普及に全力を注いだ。代表作に「市民科学者として生きる」(岩波新書, 1999)などがある。
 本書は高木の死去(2000/10, 大腸がんの肝転移)直前の8月に光文社・カッパブックスとして刊行された。2011/3/11高木の死後に「福島第一原発」事故が発生すると,「恐るべき予言の書」として,同年5月講談社から文庫として再刊された。この本で著者が「九つの神話」として取り上げた問題は,悲惨な福島原発事故から5年を経ても一向に消滅する気配がない。
 以下はこちらに
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1460616184

2) 献本お礼など
★ 「医薬経済」5/1号(医薬経済社)のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
 小野薬品の画期的「免疫チェックポイント阻害剤」オプジーボをめぐる
<画期的新薬「受難」の時代に:出る杭以前の「もぐら叩き型」薬剤費抑制>
 という記事は、ちょうど5/7「日経」が<小野薬品、純利益93%増、前期250億円に上方修正。がん免疫薬の使用増える」とオプジーボの売り上げ増を報じており、5/7「産経」の花田紀凱「週刊誌ウォッチング」でも「週刊新潮」5/5・12合併号での「曽野綾子・里見清一対談:<夢の薬>みんなで使えば国が持たない」を特筆したところで、面白く読んだ。

 鍛冶孝雄「読む医療」No.48<医者のこれからの仕事は「慰める」がのしかかる>では、里見清一「医者と医療のコミュニケーション論」(新潮新書)と「医師の一分」(新潮新書)を取り上げていた。近藤誠とちがい、「里見清一ファン」は着実に増えているようだ。
 で、鍛冶は「1992年当時が、がん関連学会の取材で、<告知すべき>という見解が主流になっていく分水嶺の状況だった」と書いている。
 「うーん」とうなった。私の個人的体験でも1970年代には米国では「告知」が当たり前であり、告知しないと訴えられたら医者が負けるという相場になっていた。この問題についてボスの奥さんスーにさらに質問したら、「1960年代初めにはがん告知が当たり前になった」という。

 世の中「複雑系」だから、何がどうつながるかわからない。
 私の理解では、日本人で最初に主治医から「がん告知」を受けた人物は、
「死を見つめる心:ガンとたたかった十年間」(講談社文庫、1973/3)を残した東大文宗教学の教授岸本英夫だと思う。
 彼は1957年9月、留学中のスタンフォード大学で左頸部リンパ節腫大を来たし、リンパ節生検の結果「メラニン非産生性メラノーマ」の診断を受け、原発巣が左前額部頭皮内の色素性母斑の悪性化であると、確定している。その後、同大病院で左頸部リンパ節の「廓清手術」を受けた。
 帰国後、五反田のKT(関東逓信?) 病院などで、放射線療法や化学療法を、約10年にわたり受けている。(この記録は1960年代の「がん治療」の実態を伝えるものとして貴重だ。)

 岸本の著書を何十年ぶりかに読みなおしたが、日本人には悪性黒色腫(メラノーマ)は少なく、米国と日本で診断基準に大きな差があり、「色素非産生性のメラノーマ」を日本の病理学者が「メラノーマ」として受け入れようとせず、「原発不明の転移がん」としようとする態度に一際興味を持った。
 さてそのメラノーマだが、その「特効薬」として開発されたのが「オプジーボ」なのである。メラノーマは白人には多いが、日本人には少ない。ところがオプジーボに「小細胞性肺がん」にも著功があることが判明し、これが保険適用になったら、とたんに小野薬品のオプジーボの売り上げが伸びた。

 小細胞性肺がんには「神経内分泌幹細胞」的な要素が認められ、発生学的にはメラノーマと類似した点がある。これが、オプジーボが効くことの基盤にあるのではないか、と私は考えているが、まさか岸本英夫の先駆的な「がん告知」がこれにからんでいるとは思わなかった。

★ ★雑誌「選択5月号」(選択出版KK)のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
 書店に行くと、今月は雑誌「WiLL」6月号と並んで月刊「Hanada」6月創刊号というのが並んで売られていた。この系統の雑誌には他に「正論」6月号がある。今月は週刊金曜日編「安倍政治と言論統制:テレビ現場からの告発!」(週刊金曜日)まで買ったので、テレビメディアの裏情報はたくさん読んだが、「ユダヤ人虐殺はなかった」という歯科医の論説を載せて、「マルコポーロ」を廃刊に至らせた花田が立ち上げた「WiLL」から、なぜ編集者4人とDTP担当者1人を共にして彼が新雑誌「Hanada」を新たに立ち上げたのか、「WiLL」にも「Hanada」にも書いていないし、週刊誌ネタなのに「身内」だからか、他誌も取り上げようとしない。
 その辺の事情が「選択」編集後記の「マスコミ業界ばなし」にばっちり書いてあり、ずいぶん参考になった。同誌によればこれは「保守勢力での<内ゲバ>」だそう。
 「WiLL」を出版してきたワック出版の鈴木隆一社長と花田紀凱との対立が根本にあり、花田一家が6人で飛鳥新社に移籍し「雑誌新WiLL」を立ち上げようとしたら、鈴木社長が「誌名差し止め」を起こし、4/13に「月刊Hanada」の広告を掲載した「産経」に対して、「ワック幹部が弁護士を率いて、産経本社に抗議に乗り込んできた」という。
 「正論」「WiLL」「Hanada」ともに、執筆者は曽野綾子、櫻井よしこ、藤岡信勝、西尾幹二、加地伸行など右派の常連で、執筆者がほぼ共通している。これではすぐに飽きられるだろう。右派の内ゲバ、これは今後が見ものだ。

 「時代錯誤のフランスワイン市場主義:日本のソムエリエ<田舎っぺ>ばかり」という日本のワイン文化に対する批判記事は面白かった。
「ソムリエ」たって、日本にはその資格保持者が2万人以上いる。
 私は、ワインは自分の舌で味わって飲む。産地も銘柄も気にしない。安いチリ・ワイン、オーストラリア・ワインにも上等のものがある。それを見つけるのが、またワインの楽しみだ。
 日本在住者で初の「マスター・オブ・ワイン」資格をとったオーストラリア人のネッド・グッドウィンという人が、「日本のソムリエは、不勉強で上から目線で、ボルドー、ブルゴーニュなどのフランスワインだけに眼が行っている、温室暮らしのガラパゴス状態」と批判したコラムが中心になっている。
 この雑誌、なかなか面白い記事が満載されているようだ。
コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5-9-2016鹿鳴荘便り/難波先... | トップ | 【フジ見物マップ】難波先生より »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2016-05-31 01:33:35
山梨神話も消え去りましたよ。
返信する
Unknown (Unknown)
2016-05-15 11:34:32
age
返信する
Unknown (Unknown)
2016-05-11 22:14:05
日本のソムリエがどんな感じか知らんけど、美味しい赤ワインはボルドーとブルゴーニュに多いのは、争う余地のない事実だと思うよ。特に、チーズとともに口に含むと感動で言葉がなくなるようなフルボディはボルドーでなきゃ味わえんでしょ。安ワインで満足できる人は本物を味わった事がナインじゃない?
返信する
Unknown (花土子)
2016-05-11 20:41:12
カミツキガメ、凶暴らしい。
温度で性別が決まるなんて面白い奴ですね。
返信する
Unknown (Mr.S)
2016-05-11 06:29:39
地球に日本だけなら、原発は不要です。猛獣も不要。
最近はそこら辺の池や沼で「カミツキガメ」が見つかるという恐ろしさ。そのうち近所の川で大きなワニやピラニアが生息しだしますぜ。
返信する
Unknown (Unknown)
2016-05-10 22:06:04
単に、ナンバくんが「郎」の字を間違って「」って書いちゃったから、文字化けしてアノニマスさんのパソコンの設定では表示されてないだけじゃないの?
返信する
Unknown (花土子)
2016-05-10 17:51:18
一国の総理者と一般市民では選択も変わるのでしょう。
安倍政権には国民を守る責任があるので原発を維持しているだけでしょうね。地球に日本だけなら反原発でいいのです。
返信する
著者名 (アノニマス)
2016-05-09 14:25:03
先生の記事では

>高木仁三・「原子力神話からの解放」(講談社+α文庫,2011/5

と書かれいますが、
高木仁三⇒高木仁三郎
が正しいです。同じ本で確認しました。
返信する

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事