ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】松本清張「喪失の儀礼」/難波先生より

2016-05-17 07:36:44 | 難波紘二先生
【書評など】
1)エフロブ「買いたい新書」の書評No.321に松本清張「喪失の儀礼」(新潮文庫)を取り上げました。「明和医科大学病院」内科講師住田友吉は,「栄光製薬」がスポンサーになって開かれた,愛知県・犬山での学会に参加,学会場の観光ホテルでの宴会を抜け出して名古屋市に向かったが,翌日名古屋のホテル浴室で他殺死体となって発見された。続いて世田谷で開業する外科の院長香原順治が,三鷹の森林公園で殺害される事件が起こった。被害者の上着ポケットには犬山の学会で買った土産物のレシートがあった。同じ学会に出席していたのだ。
 警察の捜査は,生前の住田と最後に立ち話した栄光製薬のMR(外交員)係長小池為吉に向けられる。住田は「青柳刃治」という筆名で週刊誌「医事通信」に医学界や医療の不正を暴く「◯◯を斬る」という辛口の論評を連載していた。その筆は「明和医大病院における薬局長と栄光薬品の癒着」に及ぼうとしていた。ここまで読むと,「白い巨塔」の製薬業界版か?という印象を受けるが,後半になると事件は意外な展開を見せる。第一容疑者と見られていた栄光薬品の小池が殺されたのである。それも民間アパートの浴室で絞殺後に,水道を流し放しの水風呂に浸かった状態で。
 この複雑怪奇な連続殺人事件を,名古屋県警と警視庁の4人の刑事たちは,二組にわかれて地道な捜査で少しずつ筋道をつけて解明していく。つまり「点」であった殺人と犯行現場が「線」としてつながってくる。清張が「点と線」で用いた技法である。
 下重暁子「家族という病」(幻冬社新書)がベストセラーになっているが,1972年発表の清張作品は「家族関係」に隠された病根を美事に描いていて,優れた社会派ミステリーとなっている。2016年の現代,「家族はもっと病んでいる」。本書は60年代における国民皆保険の実現と戦後社会における家族関係の変容を踏まえて,起こりえる事件を予言した作品といえる。殺人の動機,方法,実行者を解き明かす謎解きの面白さも抜群である。以下はこちらで、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1463126396

2)献本お礼など=
 高松市で内科医院を開業している、医学部の同級生印藤孝彦君から随筆集「日本社会の生活習慣病 No.24」をご恵送いただいた。お礼申し上げます。No.23の刊行奥付が2016/1となっており、No.24が2016/4なので年4回の刊行かと思う。それにしても大変な執筆意欲だ。各冊130〜140頁あるので、年に単行本1冊の勘定になる。
 昨年の11月「卒業50周年記念・クラス会」で、広島で会った時には、脊柱管狭窄症で車椅子だったが、今回の冊子を拝見すると昨秋2度も京都旅行されたようで、安心した。
 書くためには情報の収集と確認が必要だし、一定の論理も必要となる。けだし「ボケ防止」のためには有効な手段であることは論をまたない。野上弥生子は100歳を超えても、原稿用紙1日1枚の執筆を自らのノルマとして課していた。
 印藤君のご健勝とご健筆を祈ってやまない。
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