【渡航移植問題、イスラエルの対応】
中国では年間に1万件の腎移植が行われているが、ドナーが家族のものは100件に満たない。中国政府は、残りは死刑囚に由来すると発表している。しかし年間の死刑執行数からみて、最大でも3,000個の腎臓しか得られないはずだ。すると残りの約6,900個の腎臓は誰から来るのか?
これが法輪講学習者など「良心の囚人」に由来するというのが、カナダの弁護士D.マタスと同じく政治家・弁護士D.キルガーの詳細な調査による結論だ。(『中国臓器狩り』2013,原著2009)2人は、2000〜2005までの6年間の犠牲者数を約4万1500人と推定している。
他方、E.ガットマンは別の計算法により法輪講収容者のうち、2000〜08の9年間に、生体解剖され臓器と生命を奪われた人数は約6万5000人と推計している。(ガットマン推計の6年間分は約4万3000人となり、両者の数値はほぼ一致する。)
中国全土で「強制収容所」に押しこめられた法輪講学習者は50万〜200万人いるという。彼らは死刑囚ではなく、裁判にもかけられていない。それが「オンデマンド方式」で移植病院の都合にあわせて生体解剖され、臓器を摘出されている。その数、年間約7000人!
比較のために、悪名高い関東軍の「731部隊」が研究実験に用いた中国人捕虜等の総数を上げると、約1000人と推定されている。(「世界戦争犯罪事典」項目執筆:常石敬一)
法輪講が禁止され、学習者が強制収容所に送られた1999年以後、中国は有り余る「ドナー候補」を抱え、見る見るうちに移植手術件数が増加し、米国に次ぐ世界2位の移植大国になった。
この移植は海外からの患者を対象に行われ、「臓器売買」が軍その他の移植病院の重要な資金源となっている。この非人道的な臓器売買と海外渡航移植を防止するために、国際移植学会の「イスタンブール宣言」(2008)やWHOの「移植指針」(2010)が出された。
この二つの宣言に対して、日本の移植学会がとった措置は、「臓器売買により移植した患者の管理を断った場合においても医師は何らの制裁を受けない」(寺岡慧移植学会理事長「非倫理的生体腎移植の防止のために」, Pharmacia Medica, 2011/11号)という見解の流布で、これが中国での腎移植患者の受入拒否につながった。これは「Do No Harm」という医師の基本倫理に違反している。WHOの条文注釈の誤読でもある。WHOは「他の医師に紹介するなら」と条件を付けている。
同じように中国への渡航移植が多かったイスラエルの場合はまったく対応が違う。それは日本でも参考になると思うので以下に紹介したい。
人口745万人のイスラエルでは、2006年に「海外渡航移植」を受ける国民が155人あった。同国の心臓外科医ヤコブ・ラビ—(Jacob Lavee:シバ医療センター心臓移植科)は、2005年に心移植のために待機中の受け持ち患者が、「医療保険会社から2週間以内に中国に渡航し、心臓移植を受けるようにと言われた」と告げるのを聴き愕然とした。手術予定日も決まっているという。その後、患者は渡航し予定された日に心臓移植の手術を受けた。
(中国では裁判は一審制で死刑判決の場合、一週間以内に処刑されるから死刑囚ドナーの場合「2週間以内に渡航し、予定された日に心臓移植術を受ける」ということはありえない。これは「オンデマンド」方式で、死刑囚以外の者から心臓が摘出されることを意味している。)
医師としてあるいはホロコーストを経験したものとして、ラビーは良心につき動かされて「中国渡航移植」の実態を調査し、「移植臓器のほとんどが死刑囚あるいは良心の囚人に由来し、臓器提供の同意はまったくない。死刑執行日は、臓器の販売価格が支払えるレシピエントの都合で決められる」という驚愕の事実を把握した。
ユダヤ正教による脳死移植反対論もあり、2009年の臓器提供率は8.8人(人口100万人当たり)だった。それでも同年の日本の0.8人にくらべると10倍以上もある。ところが、ラビ—博士の調査報告を受けて、ユダヤ正教が「中国の死刑囚の臓器を金で買うのはユダヤ教の思想に反する。レシピエントの死が避けられないとしてもいたしかたない」という立場を表明した。
これで「海外渡航移植」を規制する動きに一挙にはずみがつき、2008/3に「改正臓器移植法」が成立した。新臓器移植法では、以下の3条項が盛り込まれた。
1. 移植のための中国への移植ツアー禁止
2. 違法な臓器取引きが行われていることが知られている国での臓器移植医療に対して、保険会社が被保険者に給付することを禁止(このため2011年の渡航移植は26人に激減)
3. 自国内で臓器提供を増やすための新措置の実施
注目すべきは第3項で、
1) レシピエントの「ただ乗り」を防ぐために、あらかじめ移植ネットワークに「ドナー登録」をしていた者に対して、優先的に臓器を配分する。これはドナー登録率を上げようという政策だった。
2) 国内の生体親族ドナーを増加させるための、政府による「ドナー経済補償」の導入。これには、提供前の収入40日分の支給、ドナーと家族に対する交通費、1週間の回復手当、過去5年間の医療・休職・生命保険掛け金の払い戻しなどが含まれ、ドナーとなるインセンティブを増加させるように配慮されている。
この2つの施策により、2011年の臓器提供率は前年比で68%増加し、中国への渡航移植はゼロになったとしている。(『中国の移植犯罪:国家による臓器狩り』第8章)
私は日本でも、1)ドナー登録をした人に優先的に臓器を配分するというのは、「互恵的利他主義」に基づくものでよい方法だと思う。見返りがまったく期待できない現行の日本のシステムだと、ドナー登録者は増えないだろう。いつか広島市で移植医の集まる講演会があり、北海道からの講師が「この中でドナーカードを持っている方は挙手してください」といったところ、手をあげたのはおよそ10人に1人だった。2013年のカード普及率については、「臓器移植ネットワーク」が<臓器提供に関する意思を記入している方は、5年前の平成20年度の調査の3倍の12.6%と増加しました>と公表しているが、実数があげてないので意味不明だ。
私の解釈では2008年の普及率が約4.2%で、それが5年間に約3倍の12.6%に増えたという意味であろう。
ドナー及び家族に対する「経済的補償」制度も真剣に考えるべきだ。「無償の愛の贈り物」という美名では、もう国民は納得しないだろう。
日本もイスラエルをモデルとして、臓器移植システムのあり方を根本的に見直すべきだろう。「修復腎移植」の保険診療適応もこの中に入る。
国内における臓器売買について、ライブドアがこう報じている。
http://news.livedoor.com/article/detail/10436594/
<7月21日、警視庁は臓器移植法違反などの容疑で指定暴力団住吉会系幹部(71)とホームレス男性(44)を逮捕した。この事件により国内における臓器売買ビジネスの存在、そこへの暴力団の介入、ターゲットとしてホームレスや貧困層が狙われている実態が明らかになった。だが今回の事件の発覚はほんの氷山の一角だという。
では、病院、ヤミ金、貧困ビジネス、これらルートで実際に売買される臓器の額とはいかばかりなのか。
角膜は10万円、肝臓は200万~300万円
「眼球、つまり角膜だけど、相場では10万円、急ぎだと50万円の値がつくこともある。肝臓と腎臓はせいぜい200万円から300万円程度だな。いずれも臓器提供する本人が手にする額だよ」(前出・医療業界関係者)
この額が適正かどうかはさておき、国内における非合法臓器売買ビジネスで売買される臓器は、先述の角膜、肝臓、腎臓のほか、心臓もある。これは脳死状態にある人のそれを移植するもので今でも病院ルートが主流だという。…
「肝臓と腎臓なら、ビジネスとしてはせいぜい数百万円程度だ。臓器提供者に200万円渡し、執刀した医師たちに100万円程度、そこにブローカーの手数料で100万から200万円、実際に肝臓や腎臓を買うなら最低600万円用意しなければならない。もし1000万円払ったという者がいたら、それはブローカーがそうとうボってるね」(同)>
国内にも東京近辺にそういう移植手術をやっている病院があるということだろうか?信じられない…。一刻もはやくイスラエル・モデルを導入すべきだろう。
中国では年間に1万件の腎移植が行われているが、ドナーが家族のものは100件に満たない。中国政府は、残りは死刑囚に由来すると発表している。しかし年間の死刑執行数からみて、最大でも3,000個の腎臓しか得られないはずだ。すると残りの約6,900個の腎臓は誰から来るのか?
これが法輪講学習者など「良心の囚人」に由来するというのが、カナダの弁護士D.マタスと同じく政治家・弁護士D.キルガーの詳細な調査による結論だ。(『中国臓器狩り』2013,原著2009)2人は、2000〜2005までの6年間の犠牲者数を約4万1500人と推定している。
他方、E.ガットマンは別の計算法により法輪講収容者のうち、2000〜08の9年間に、生体解剖され臓器と生命を奪われた人数は約6万5000人と推計している。(ガットマン推計の6年間分は約4万3000人となり、両者の数値はほぼ一致する。)
中国全土で「強制収容所」に押しこめられた法輪講学習者は50万〜200万人いるという。彼らは死刑囚ではなく、裁判にもかけられていない。それが「オンデマンド方式」で移植病院の都合にあわせて生体解剖され、臓器を摘出されている。その数、年間約7000人!
比較のために、悪名高い関東軍の「731部隊」が研究実験に用いた中国人捕虜等の総数を上げると、約1000人と推定されている。(「世界戦争犯罪事典」項目執筆:常石敬一)
法輪講が禁止され、学習者が強制収容所に送られた1999年以後、中国は有り余る「ドナー候補」を抱え、見る見るうちに移植手術件数が増加し、米国に次ぐ世界2位の移植大国になった。
この移植は海外からの患者を対象に行われ、「臓器売買」が軍その他の移植病院の重要な資金源となっている。この非人道的な臓器売買と海外渡航移植を防止するために、国際移植学会の「イスタンブール宣言」(2008)やWHOの「移植指針」(2010)が出された。
この二つの宣言に対して、日本の移植学会がとった措置は、「臓器売買により移植した患者の管理を断った場合においても医師は何らの制裁を受けない」(寺岡慧移植学会理事長「非倫理的生体腎移植の防止のために」, Pharmacia Medica, 2011/11号)という見解の流布で、これが中国での腎移植患者の受入拒否につながった。これは「Do No Harm」という医師の基本倫理に違反している。WHOの条文注釈の誤読でもある。WHOは「他の医師に紹介するなら」と条件を付けている。
同じように中国への渡航移植が多かったイスラエルの場合はまったく対応が違う。それは日本でも参考になると思うので以下に紹介したい。
人口745万人のイスラエルでは、2006年に「海外渡航移植」を受ける国民が155人あった。同国の心臓外科医ヤコブ・ラビ—(Jacob Lavee:シバ医療センター心臓移植科)は、2005年に心移植のために待機中の受け持ち患者が、「医療保険会社から2週間以内に中国に渡航し、心臓移植を受けるようにと言われた」と告げるのを聴き愕然とした。手術予定日も決まっているという。その後、患者は渡航し予定された日に心臓移植の手術を受けた。
(中国では裁判は一審制で死刑判決の場合、一週間以内に処刑されるから死刑囚ドナーの場合「2週間以内に渡航し、予定された日に心臓移植術を受ける」ということはありえない。これは「オンデマンド」方式で、死刑囚以外の者から心臓が摘出されることを意味している。)
医師としてあるいはホロコーストを経験したものとして、ラビーは良心につき動かされて「中国渡航移植」の実態を調査し、「移植臓器のほとんどが死刑囚あるいは良心の囚人に由来し、臓器提供の同意はまったくない。死刑執行日は、臓器の販売価格が支払えるレシピエントの都合で決められる」という驚愕の事実を把握した。
ユダヤ正教による脳死移植反対論もあり、2009年の臓器提供率は8.8人(人口100万人当たり)だった。それでも同年の日本の0.8人にくらべると10倍以上もある。ところが、ラビ—博士の調査報告を受けて、ユダヤ正教が「中国の死刑囚の臓器を金で買うのはユダヤ教の思想に反する。レシピエントの死が避けられないとしてもいたしかたない」という立場を表明した。
これで「海外渡航移植」を規制する動きに一挙にはずみがつき、2008/3に「改正臓器移植法」が成立した。新臓器移植法では、以下の3条項が盛り込まれた。
1. 移植のための中国への移植ツアー禁止
2. 違法な臓器取引きが行われていることが知られている国での臓器移植医療に対して、保険会社が被保険者に給付することを禁止(このため2011年の渡航移植は26人に激減)
3. 自国内で臓器提供を増やすための新措置の実施
注目すべきは第3項で、
1) レシピエントの「ただ乗り」を防ぐために、あらかじめ移植ネットワークに「ドナー登録」をしていた者に対して、優先的に臓器を配分する。これはドナー登録率を上げようという政策だった。
2) 国内の生体親族ドナーを増加させるための、政府による「ドナー経済補償」の導入。これには、提供前の収入40日分の支給、ドナーと家族に対する交通費、1週間の回復手当、過去5年間の医療・休職・生命保険掛け金の払い戻しなどが含まれ、ドナーとなるインセンティブを増加させるように配慮されている。
この2つの施策により、2011年の臓器提供率は前年比で68%増加し、中国への渡航移植はゼロになったとしている。(『中国の移植犯罪:国家による臓器狩り』第8章)
私は日本でも、1)ドナー登録をした人に優先的に臓器を配分するというのは、「互恵的利他主義」に基づくものでよい方法だと思う。見返りがまったく期待できない現行の日本のシステムだと、ドナー登録者は増えないだろう。いつか広島市で移植医の集まる講演会があり、北海道からの講師が「この中でドナーカードを持っている方は挙手してください」といったところ、手をあげたのはおよそ10人に1人だった。2013年のカード普及率については、「臓器移植ネットワーク」が<臓器提供に関する意思を記入している方は、5年前の平成20年度の調査の3倍の12.6%と増加しました>と公表しているが、実数があげてないので意味不明だ。
私の解釈では2008年の普及率が約4.2%で、それが5年間に約3倍の12.6%に増えたという意味であろう。
ドナー及び家族に対する「経済的補償」制度も真剣に考えるべきだ。「無償の愛の贈り物」という美名では、もう国民は納得しないだろう。
日本もイスラエルをモデルとして、臓器移植システムのあり方を根本的に見直すべきだろう。「修復腎移植」の保険診療適応もこの中に入る。
国内における臓器売買について、ライブドアがこう報じている。
http://news.livedoor.com/article/detail/10436594/
<7月21日、警視庁は臓器移植法違反などの容疑で指定暴力団住吉会系幹部(71)とホームレス男性(44)を逮捕した。この事件により国内における臓器売買ビジネスの存在、そこへの暴力団の介入、ターゲットとしてホームレスや貧困層が狙われている実態が明らかになった。だが今回の事件の発覚はほんの氷山の一角だという。
では、病院、ヤミ金、貧困ビジネス、これらルートで実際に売買される臓器の額とはいかばかりなのか。
角膜は10万円、肝臓は200万~300万円
「眼球、つまり角膜だけど、相場では10万円、急ぎだと50万円の値がつくこともある。肝臓と腎臓はせいぜい200万円から300万円程度だな。いずれも臓器提供する本人が手にする額だよ」(前出・医療業界関係者)
この額が適正かどうかはさておき、国内における非合法臓器売買ビジネスで売買される臓器は、先述の角膜、肝臓、腎臓のほか、心臓もある。これは脳死状態にある人のそれを移植するもので今でも病院ルートが主流だという。…
「肝臓と腎臓なら、ビジネスとしてはせいぜい数百万円程度だ。臓器提供者に200万円渡し、執刀した医師たちに100万円程度、そこにブローカーの手数料で100万から200万円、実際に肝臓や腎臓を買うなら最低600万円用意しなければならない。もし1000万円払ったという者がいたら、それはブローカーがそうとうボってるね」(同)>
国内にも東京近辺にそういう移植手術をやっている病院があるということだろうか?信じられない…。一刻もはやくイスラエル・モデルを導入すべきだろう。
それよりも安楽死法を制定する方が先だ。
現状は、判例(名高判昭37.12.22)により、不治の病で苦痛が著しい場合に、もっぱら死苦の緩和を目的として医師の手により妥当な方法で行われる場合は、安楽死は許可されています。基本的には、本人の同意が必要とされます。同意がなかった場合は、殺人罪の有罪で情状酌量により執行猶予の判決(横浜地判平7.3.28)が出ています。
終末期でなくとも、ある治療の施しが無ければ死に至ると判断できれば安楽死を望めるものにしなければならないと思う。
末期がんでなくとも死を望めるようにするべき、という事だ。
もっと簡単にいうとに言うと、病気に関わらず健康体であっても死を望めるようにすべきだ。
耐えがたい心の苦痛から解放されたいと望めば、自由に死を選べるという事だ。
「生」は自由ではない。せめて「死」は自由に選びたい。
それを他人にやってもらう行為は、安楽死に必要な要件を満たさない限り、現行の日本の法体系では許されない。どうしてだか、分かるかな?
どうしてだか、分かるかな?
死にたい人は自分で死ねば良い。他人の手を借りる場合は、消極的な例(尊厳死)は許可し、積極的な例には厳しい条件を課す事で安直な殺人を防ぐという日本の判例は、いい線引きをしていると自分は思う。
アメリカの一部の州では、日本のような制約がなくても安楽死を許可している州があったはず(オレゴンだったっけ)。どうしてもという人は、そういう州に移住したらいいのでは?