ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【代作】難波先生より

2014-02-07 18:48:53 | 難波紘二先生
【代作】広島の「現代のべートーベン」の話は奇怪で謎が多い。
 WIKIの人物名を調べると、
 http://ja.wikipedia.org/wiki/佐村河内守
 特に<2002年、身体障害者手帳(感音性難聴による両耳全聾、身体障害者等級第1種2級、両耳鼓膜欠落)の交付を受ける。> というのが、わけが分からない。「両耳鼓膜欠落」が事実なら「先天性欠損」か「後天性欠損」のいずれかである。
 しかし1963年生まれのこの人物は10歳まで母親からピアノ等音楽の特訓を受けているし、特別に聴覚障害はなかったと思われる。中学からは崇徳学園に進んだようだ。ここは仏教系の二流私学で「広島商業」と並んで野球が有名なところだ。音楽で有名なところではない。
 「1996年に左耳の聴力を失い、98年に全聾となる」とある。
 後天性難聴の原因には、薬物中毒、感染症、特発性難聴などがあるが、これらは「鼓膜欠損」をきたすことはない。本当に鼓膜が欠損しているのなら「外傷性欠損」つまり外耳口に強い圧力がかかったために鼓膜破裂をきたした場合である。これは耳のところを、つよい平手打ちや角材のようなもので、強打されると起こる。交通事故でも起こる。
 1982~96の間、かなり荒れた生活を送っており、1988年に弟を「交通事故」で失っているが、本人も現場に居合わせたのだろうか?
 何年か前、札幌の耳鼻咽喉科医が診断書を偽造して多数の患者に「全聾」として、不正に身体障害者手帳の交付を受けさせていた事件が発覚した。2002年の手帳交付時の診断には病理学的に見て不審点が多い。メディアは佐村河内の「障害者手帳」取得時に診断書を発行した、当時の医師にあたって、不審点を糾してもらいたいものだ。聴力検査は主観検査だから、一番騙しやすい検査だ。

 本人は「親が被爆者手帳を持っており、被曝二世であることは間違いない」と言っているそうだ。(2/7「中国」記事)本末転倒の論理だ。
 子は親を見て育つ。親は「被爆者手帳を持っているから被爆者であることは間違いない」と教えたのかもしれない。本人は1963年生まれだから、親は1940年代の生まれだろう。被曝したとしたらまだ子供だったはずだ。「佐村河内」という姓は能美島の姓だと報道にあった。能美島は江田島の一部である。江田島から広島市に救援には行ったが、子供は関係ない。親はどこでどう被曝したのか?
五日市に移住したのはいつか。ここも爆心地から20キロ近く離れており、被曝とは関係がない。
 地元紙「中国」はかろうじて「社説」で自社の見解を述べるのみにとどまっているが、被爆者を「殉教者」として神聖化して来た新聞社として、責任は重かろう。きちんとした調査報道を望みたい。

 2/5水曜日の「報道ステーション」を見て、非常に違和感を覚えたのは、
1) 本人は「記譜と読譜」ができない。
これは「週刊文春」に実際の作曲者の証言が載っている:
http://www.j-cast.com/tv/2014/02/06196121.html?p=all
2) 聴覚を失って12年以上になるのに、しゃべり方の音量やアクセントに何の異常もない、
この2点だった。
 記譜ができないのならどうやって主旋律を他人に伝達し、交響曲の作曲を依頼できるのだろうか。
 (これも上記記事から楽譜ではなく、曲のイメージ図形を渡していたことが判明)。
 読譜ができないのなら、出来上がったシンフォニーの良否がどうしてわかるのだろうか。
 オーケストラが演奏する時、曲の解釈の間違いをどうやって指摘するのだろうか。
健常人が医者を詐り世間を詐り、「全聾」のふりをすることは可能である。しかし全聾者が健常者と同様にふるまうことはできない。

 2/6木曜日午後の「実際の作曲者」による記者会見を報じたWSJ〔時事〕報道によると、
 http://jp.wsj.com/article/JJ11998826305779383311719531623321439665935.html
 どうも聴力障害があったというのはウソのようだ。肝心の音楽の方も「ピアノの演奏は初歩的」という。それならバイエルが全部弾けるかどうか。やっぱり詐欺師か…
 NHKの報道、http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140206/t10015065391000.html
によると、「実際の作曲者」は「耳は正常に聞こえていた」と証言しており、「両側鼓膜欠損」ではそれはありえないから、鼓膜欠損の方が間違い、つまり「障害者手帳」を申請したときの診断書が虚偽記載であった可能性が高くなる。もしそうなら、これも札幌の耳鼻科医の例と同様に犯罪である。

 「スポニチ」によると
 http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/02/06/kiji/K20140206007532140.html
 <彼は(全聾の作曲家という)自分のキャラクターを作り、世に出した。彼のイメージを作るために、私が協力をしたということだと思う。>と述べているから、単なる「ゴーストライター」でなく、確かに自分でも認めているように「共犯」であろう。

 先週の土曜日、呉からの帰りに広島駅に寄った。駅ビルの1Fにあった喫茶店がなくなったので、地下1階の喫煙可能な喫茶店に行った。禁煙席は空いていて喫煙席に客が多かった。斜向かいの通路寄りに黒いスーツを着た二人の若者が向きあってすわり、片方はiPAD、片方はスマフォで遊んでいた。声が全然しないので相当熱中していると思った。
 しばらくして二人が顔を合わせ、しゃべり始めた。興奮しているのか、手を前にかざして指や手頚を動かしている。が、声が全然しない。…と思ったら、これは手話による会話だった。内容はまったくわからないが、相手が手の動きに即時に反応して笑ったり、頭を振ったりするところをみると、常人と変わらない会話速度だと思う。時に唇の動きがそれに伴う。
 今度の一件をあらかじめ知っていたら、筆談ででも「いつ聴力を失ったのか、どういう病気か、何が一番不便か」、聞いておくべきだったと思う。

 2/4「毎日」が元帝京大学助教授で医学博士の男(79)を、自分で製造したがん治療薬(未承認)を8人の患者に投与し、約560万円を受け取ったとして,警視庁が医師法違反(無資格営業)で逮捕したと報道していた。
 http://mainichi.jp/select/news/20140204k0000m040064000c.html
 息子が医者で診療所を開設しており、そこを舞台に投薬を行っていたようだ。
 医師でなければ医業を行ってはならない、というのは「医師法」の定めるところで、無資格で医業を行えばニセ医者となる。医業とは「医行為」を反復して行うことをいい、有料か無料かは関係ない。医行為とは疾病の診断、治療、予防に関して特定または不特定の個人に対して介入することをいう。
 このケースの場合は、薬事法にも違反している。
 いまだに「医学博士」と「医師免許」が無関係(前者は称号、後者は免許)なことを知らない人がいるのも困りものだが、それでも「ニセ医者」はすぐに指摘できる。芸術などではそうはいかない。
 しかし、詐病で障害者手帳を取得したとしたら、それはもう立派な犯罪である。

 作曲は作家の人格個性に由来する。絵画もそうだ。ベートーベンはどれを聴いてもベートーベンだし、モーツアルトの曲はどれもモーツアルトだ。北斎の絵と広重の絵を間違える人はあるまい。
 ゴーストライターだと名乗り出た人物はちゃんと音大を出ている。
 http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/05/niigaki-takashi_n_4728709.html?utm_hp_ref=japan
 こっちは1970年生まれだから、「全聾の人」の7歳下になる。二人の接点はどこにあるのだろうか?
 NHKをはじめ大メディアはこれまですっかり騙されていた。たったひとりのフリージャーナリストがそれを指摘するまで…。なんというていたらくだろう。NHKは前にも、先天性脳性麻痺の子供が美事な詩を作るという「手品」に騙されて、「奇跡の詩人」という番組をつくりNスペで放送している。
 
 ゴーストライターの問題だが、一律に悪いとはいえないだろう。政治家の著書や芸能人の著書など誰も本人が書いたとは思わないだろう。もちろん、高峰秀子や黒柳徹子のように立派な文章を書ける人もいる。立花隆は画家香月泰男のゴーストライターだったことを、彼の死後20年ぐらい経ってから、「シベリア鎮魂歌:香月泰男の世界」(文藝春秋, 2004)で明らかにしている。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/香月泰男
 ゴーストライターが有名人の自叙伝の類を書いている分にはあまり問題がない。政治家でも政策そのものはブレーンが立てることもある。が、芸術家の本領である芸術そのものの創造性にかかわる部分を他人に委ねていたとしたら、大いに問題がある。
 これは受験の替え玉と変わらない。
 法律的には著作権上の問題とかいろいろあろうが、今はまだ事実関係が不明だから論じない。
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