ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【刺激的な】難波先生より

2013-03-09 22:13:08 | 難波紘二先生
【刺激的な】本だ。近藤誠さんの『医者に殺されない47の心得』(アスコム)が2012/12/19日1刷、3/4,7刷で31万部売れたらしい。1948年生まれとあるから、私より7歳若い。よく「病理診断には誤信が多い」と書いているが、学生結婚した奥さんは病理専門医だ。この本は2012年に彼が「第60回菊池寛賞」を受賞した記念作で、「アスコム」が全力をあげて作ったらしい。(印刷・製本=廣済堂となっているが、キオスクに置く本を作るところか?)
 昔の映画は主な俳優と脚本、音楽、監督くらいしかクレジットが出なかったが、最近の洋画では協力者全部の名前がエンディング・クレジットで長々と出る。観客の多くは立ち上がって帰るが、中には終りまで見て、自分の名前や知った人の名前を見て感激する人もいるだろう。


 一冊の本も同じで、著者以外に編集者、校閲者、営業、広告、経理、調査など多くの人の協力で出版と配布が可能となる。ところが日本の本の奥付をみると、それが書いてない。ひどいのは著作権の帰属、成立年も書いてない。出版契約書もない。「こんな商売やがて滅びる」と思って来た。

 それで『大学新入生に薦める101冊の本』(岩波書店)では、奥付のところに映画と同じように関係者のクレジットを入れた。高校の同級生の病院長が主旨に賛同して制作費100万円を寄付してくれた。私はいつもそうやっていつも、新しいアイデアで無から有を生み出してきた。
 近藤さんのこの本も奥付のところに、アスコム社の関係者の役割分担が掲載されている。こうやるとスタッフにやる気が出る。それがベストセラーにつながる。


 第1章:どんなときに病院に行くべきか
 第2章:患者よ、病気と闘うな
 第3章:検診・治療の真っ赤なウソ
 第4章:100歳まで元気に生きる「食」の心得
 第5章:100歳まで元気に生きる「暮らし」の心得
 第6章:死が恐くなくなる老い方
 と6章に分かれ、最後に「近藤誠のリヴィングウィル」というのが載っている。「心得」が47あるのは「イロハ47字」か「赤穂47士」からの連想か?


 <たとえば最近「予防医学」が全盛ですが、その実態は「”患者を呼ぼう”医学」。医者の”おいしい”お客様にならないよう気をつけましょう。
 大学病院、日赤、国立がん研究センターなど、世間で「いい病院」と言われる設備のととのった大病院は、「いい実験を受けられる病院」だと思って下さい。…
 医者に殺されない方法をしっかり身につけて、ムダ死にから身を守ってください。
 たったひとつしかない自分の命、自分の体、自分の人生なのですから。> と前書きにある。


 むかし大学院生の頃、アルバイト先に病院に提出する必要があって、図書館のコピー機(ゼロックスはここにしかなかった。1枚が50円もした)で医師免許証をコピーしていたら、そばに丸善の外商の女の子がいて、排出されたコピーをみて、「殺人免許ですね」といった。その頃ジェームス・ボンドの映画が流行っていて「007は殺しの免許」というフレーズが膾炙していたから、それをもじっての発言だが、「うまいことをいうな」と思ったことがある。


 それにしてもこの前書きの惹句は刺激的だから、多くの病院勤務医を怒らせるだろう。世間の人は開業医と勤務医の区別がついておらず、医者は全部金持ちだと思っている。そんなことはない。万波誠はずっと、はずれたバンパーをガムテープでくっつけたオンボロ中古車に乗っていたが、今回初めてヴィッツの新車に買い換えた。「あんたの家に一度泊めてもらいたいな」と言ったら「イヌがほじって、壁に穴が明いて崩れかかっている」と返事があったくらいだ。


 本文のテキストはかなりまじめで、さほど間違ったことは書かれていないが、「心得」としてまとめられている条文には誤解を与えるものが多々ある。これは見出しを編集部がつけたせいだろう。全体の内容は近藤さんがこれまで主張してきた。「がんの広範全摘は無意味」、「早期がんのほとんどはがんもどき」、「検診に意味はない」、「固形癌の化学療法は無効」などの意見をよりわかりやすく(単純化して)述べたものだ。


 慶応大の定年は70歳だから、2018年までは慶応病院にいられるはずだが、早めに退職するのかもしれない。老化とかぼけの話を書き出したら、本人にもその自覚が出てきたということで、サミュエル・ウルマンの「青春」という詩を引用している。これは何種か邦訳がある。
 この本は近藤さんのこれまでの本と違い、参考文献や参考書の呈示がない。読者層からみて、不要と判断したのだろう。
 ベストセラーになるためには、これだけ単純に書かないとダメなのだな、と参考になる本だ。
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