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角川書店編ビギナーズ・クラシックスの万葉集です。
去年は調首子麻呂とか聖徳太子とか天武朝などにはまっていたので
万葉集に行き着くのは自然な流れかな。
「あなたの心情を歌った作品がひとつはある」といわれる万葉集。
驚いたことに第二次世界大戦中は兵隊さんたちが万葉集を持って戦地に赴き、
厳しい検閲の中、万葉集の歌を使って自分の気持ちを表現したそうです。
例えば、戦地から恋人や家族や友達に宛てた手紙の中に
「万葉集何番が今の自分の気持ちです」と書くことで。
どうしてこんなことができるかというと、万葉集に収められている歌の作者が
王族や貴族にとどまっていないから、だそうです。
防人の歌やその妻の歌などは家族を慕う心情が方言で綴られていたりします。
大伴旅人の作品のように酒を讃える歌もあります。
もちろん恋の歌も。
ところで、わたしが大好きな歌は額田王のこちら↓の歌。
熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
熟田津で船出しようと月の出を待っていると、潮もちょうどよく満ちてきた、さあ、漕ぎ出そう。(本書より)
国語の教科書でもお馴染みの歌です。
斉明天皇の新羅遠征船団が愛媛県松山市今の道後温泉のあたりで
しばらくとどまった後、出航するときに額田王が歌った歌。
当時は斉明天皇と中大兄皇子(後の天智天皇)との仲が微妙で
かつ朝鮮半島の国々との外交も複雑を究めた時期。
非常に厳しい状況の中で、みんなの気持ちを鼓舞し
天皇の権威を高める歌を作らなければならなかった額田王。
才智溢れる彼女が作ったこの非常に力強い歌は
何か新しいことを始めるときに必ず頭に浮かんでくるのです。