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東京目黒から山梨へ育児のためにお引越し。40代高齢出産ママの雑記帳です。

恋する伊勢物語(俵万智)

2009年02月26日 | 本のこと
恋する伊勢物語 (ちくま文庫)恋する伊勢物語 (ちくま文庫)
俵 万智

筑摩書房 1995-09
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伊勢物語そのものを読む気力はないけれど、ちょっとだけそのエッセンスに触れたいという
まさにわたしのような読者にお勧めの本書。

著者が伊勢物語の現代語訳をしたときのこぼれ話や自分の恋愛体験なんかを
織り交ぜて伊勢物語の魅力を語る。

例えば、各章が「むかし男ありけり」の書き出しで始まる伊勢物語。
一般には源氏物語のモデルともいわれる在原業平の物語と言われているらしいが
この書き出しを見る限り、ひとりの人間に特定できない、のだとか。


それにしても、いわゆる大和言葉の響きはやわらかくてよいなあ。
最近わたしは若白髪に悩んでいるのですけど、
「しらが」って言葉の響き、本当にイヤ。

そこいくと、昔の人は白髪のことを「九十九髪」と書いて「つくも髪」と読んだそうな。

ところで、なんで「つくも髪」が「白髪」なのかというと、
俵さん曰く、「つくも」は「九十九」のことで
「百」という字から「一」を抜くと「白」になることから
「つくも髪」は「白髪」という意味になるんですって。

見たまんまの色じゃなくて、婉曲な描写だわね。とんちみたいに捻りが効いている。

直接描写は物事をスムーズに運びたいときには非常に効果的な表現だけど
人間関係においては、これぐらい婉曲な言葉遣いで
ユーモアと思いやりの気持ちを常に持っていたいものです。
実際は難しいことだけど・・・

ちなみに、白髪にかかわる話は第六十三段です。



本書を読んでいて思い出しましたけど、学生の頃、第二十三段「筒井筒」の歌が好きだったなあ。

筒井つの井筒にかけしまろがたけすぎにけらしな妹見ざるまに
筒井を囲う井筒と比べていた私の背丈は、もう過ぎてしまったようです。あなたに長くお会いしないうちに・・・。(本書より)

くらべこしふりわけ髪も肩すぎぬ君ならずしてたれかあぐべき
ふりわけ髪のころから、その長さを比べあったりして遊んできましたが、その髪も、もうずいぶん長くなりました。あなた以外の誰のために、髪をあげましょうか。私が大人になるのは、あなたのためなのです・・・。(本書より)

この2人、お互いが初恋の相手なのですが、この歌をみると両思い。
ですから、てっきりこの話はハッピーエンディングだと思っていたら
実は違ったんですね。

なんてことも、発見しながら楽しんで読んだ後は、伊勢物語現代語訳も読める気がしてきた、ような。