未熟者武道記

空手徒然。
二つの戈を止める武を核とし、諸諸と調和して溶け込んで。(いけたらいいな)

《引き》こそ武の美学

2017-02-09 23:05:05 | 稽古
今週の少年部テーマは『前蹴り』。足の裏全体を使う面の蹴りと上足底を使う点の蹴りをミットで実践しましたが、そんな事はどうでも良く『引き足』を意識することこそが今回の目的であります。

他の武道には門外漢なので詳しくは分かりませんが、武には『引き』があります。空手ならば引き手・引き足。刀でも引かねば斬れませんし、棒で突くにしても引きの作用が無ければ流れてしまいます。

道具に関してもそうで、例えば建築ではノコもカンナも引きます。西洋ノコと西洋カンナは押して切ります。西洋のサーベルは片手握りで主に刺突。この辺りからも欧米人とは感覚が異なるのがよく分かりますね。直情的か客観的か。
和の道具は扱いが難しい。自分に近付ける為動作を一つ間違えば自分を傷付けます。道具を魂と見立てる日本人らしさは此処から生まれ、自然と仕事が丁寧に成ってきた訳ですね。

閑話休題。
この『引き』の意識こそ所謂『残心』です。即ち精神の余裕、余計な一手を加えないという高い精神性。だからこそ技には相手を傷付けない為の高い完成度が求められるのです。

偶に「数十箇所を刺されて死亡」などという痛ましい事件を耳にする事がありますがこれ程精神を欠いたものはありません。トドメは一撃で、というのが武士の情けというやつです。いや、刺したらあきませんけど。

引く事で次の動作に展開し易くもなります。身も心も一歩下がる事ができます。
しかしながら『引き手』に関しては以前にも申し上げた通り、掴んで引き寄せて極めるというエゲツない一面もあります。

清濁併せ持つ武の美学ですね。
キメる技量が有って初めて残心が可能になるとも言えます。なので基本稽古からいい加減に引かず、足も適当に下ろしたりせず『引き』をこそ意識して稽古してもらいたいと思います。





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