ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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@バイエルン フィガロの結婚・私見

2010-10-09 22:48:58 | ドイツのこと
遅くなりましたー。バイエルン歌劇場のフィガロの結婚の感想をば。
あくまで私見なので、この感想はどうなの?とか、それはアリ?とか思っても、そこはご容赦くださいましね。
評論家でもない人間の感想なので。

まず、ケルビーノはスタジオ出身の優秀な人だったらしいのですが、正直ちょっと期待外れ・・・伯爵夫人も強さがなくて、何か大和撫子的な感じが。好みもあると思うのですが。

皆さん気になる、スザンナの中村恵理さんは、女性陣の中ではやはり一番安定感があって綺麗な声!
やはり日本人でメインを張る方というのはすごいですねえ~。
ただ見た感じですが、今回のようなコミカルな要素が多いスープレット役ももちろん良かったですが、リリックな役どころの方が彼女の魅力がもっと出るのではないのかな、という気もしました。
この後に『魔笛』のパミーナや、『カプレーティ家とモンテッキ家』のジュリエッタをやるそうなので、そっちの方が楽しみかも。

オケは良くも悪くもエネルギッシュ。とにかく指揮者でしょうねえ~。
オケの曲だけで聴いてみたい気もしました。一人一人をソリストとしての音色をkeepしつつ、まとめあげているのはお見事ですが・・・それゆえ、オケの音色が強すぎて歌とかみ合わなくなってる所もちらほら。
ただ、だからこそアリアのオーケストラで、
ひぃぃぃぃぃ!こんな音がこんなところにあったなんて!!((゜д゜;))))モーツァルトすげぇ!!

と思ったり

あの音を出すかあ~!?(-д-;)

と思ったり・・・
よくも悪くも、聴きごたえはあったように思います~。若手でしょうか?発散系で、ベッタベタなディナミークをつけていて、やり過ぎ感もあったように思いますが、嫌味ではなかった。ああいうのが嫌味にならないっていうのはすごい~。
オペラなら、ドニゼッティとかで聴いてみたいです。この指揮者だと、ドニゼッティの、

『控えい~控えい!こちらにおられるお方をどなたと心得る!?』
・・・とでもいいたくなるような、水戸黄門と言いますか、遠山の金さんと言いますか・・・時代劇的な、ドニゼッティのオーケストレーションがコテコテ~に出して頂ける気がする。しかも嫌味にならずに。

ちなみに振ってる姿がMr. ビーンに似ていたのはご愛敬(笑)

ただ、その自己主張ゆえに、最後の四幕のスザンナのアリアに『夜』の匂いがしなかったように思うのは残念・・・発散系でしたが、やはりあの曲は『夜』の静寂と、その匂いが命だと思うので・・・

演出で印象的だったのは、三幕から四幕の頭。休憩なしなので、舞台転換のために絵が描いてある軽い幕を降ろして、四幕頭はその前で話が進んでいくんですけれど。
三幕、陽気な合唱で終わった直後、その幕が降りる。誰もいない中、何とも哀しげなバルバリーナのカバティーナ前奏。幕の下から、すっと、女の手がでてくる。
手探りで、何かを探している、探している、肘から下だけが見える。
そして幕をくぐりぬけてバルバリーナが全身を出して歌いだします。「なくしちゃった、どうしよう・・・」
一番印象に残った場面でした。

今回の目玉は、伯爵のクリスティアン・ゲアハウアー・・・だったのでしょうが、なんか調子が悪くて声が本調子じゃなかったそうで。風邪だったのか?わざわざ始まる前にひと言がありました。
でも歌ってた。
なので、何ともいえないですねえ・・・とりあえず聴いた感じは、正直フツー(笑)モーツァルトイヤーのザルツブルグ音楽祭の魔笛でパパゲーノやってましたが。
オーパンヴェルト(ドイツ版『音楽の友』・・・な感じかな?)で最優秀歌手として発表された直後だったからなあ。なんか、期待しすぎてちょっとがっかり・・・とも思いましたが。
だた、いかんせん本調子でなかったので、このコメントは彼にとっては不当ですね。あくまで良いコンディションの時に聴いてみる事があったら、改めてきちんと感想を書きたいです。

さてさてさて。
ここからです、すごいのは。

いやもう、すさまじい人がいたんですよ。

アントニオ役の、アルフレド・クーン!!
私、アントニオで泣く事になるとは思いませんでした(笑)
んもーーーーーーーーーっっっっ!すごいっっっっ!!
一人だけ歌ってない。一人だけしゃべってる。ただ立ってるだけ。ただヨロヨロと歩いてるだけ。ただ相手の顔をじろりと見てるだけ。
なのにもう、すごい。すごすぎる。

ああ・・・こんな歌い手になれたら・・・
無理だろうけど・・・しゃべってるだけ。何も歌ってないんですよ?音符があるとは思えない。なのに、音は合っている。

あんなすごい歌い手を見れるとは思えなかった・・・あぁドイツ来て良かったーっっっっっ!!!

80歳をいってる、ベテランのおじーちゃんだそうです。アンサンブルとかのキャリアが多いみたいで。メインでやってたタイプではないのでしょうが・・・あんな人がいるなんて。
シェイクスピアを観に行ったら、笠智衆がいた、みたいなそんな感じ・・・そのくらいの違和感(笑)に、そのくらいの衝撃でした。もう涙が止まらなかったです。
あんな風になれたら・・・

あと、マルチェリーナが、何か良かったです。でも歌う所が少ないので何とも。
それからバジリオにこだわっている私としては、バジリオがいまいちだったのが残念・・・
フィガロはもっとひねくれてる感じと機敏さがほしかったような・・・これも好みですけどね。何故なら、Myラブなフィガロは、ワルター・ベリーとカルロス・ショーソン。

わかるでしょ?ひねくれてる、て感じ・・・(笑)




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