音楽劇「モーツァルトの旅」についてのブログも、これで6回目になりました。
最後に、台本と劇の構成について書きます。
今回の音楽劇の中で、ストーリーの中心となって台詞をしゃべってもらったのは、主に男声陣の登場人物たちでした。
当時はやはり男性社会。仕事の場…つまり音楽が演奏される宮廷などは男性中心の社会であり、主に男性だけで話が進んでいく為、どうしても劇の中の台詞は、男声キャスト中心にお願いする事になりました。
その中で、モーツァルト役を、女性の私が演じたのは、やはり「ズボン役」というオペラならではの特殊性も使いたかったから。
宝塚のように、『男』そのものを演じるわけではない、オペラ独特の表現方法。ズボン役といえば「フィガロの結婚」のケルビーノですから。
そして、ズボン役と言えど女性が一人でも混じっていた方が、男性だけよりも、お客さまにも比較的見やすいかと思いました。
そして色々な方からよくきかれたのが、台本と音楽、どちらをどう組み合わせて作品を作り上げるのか、という事でした。
これはやり方が完全に決まってまして。私の場合は、まず先に台本を書きあげます。ストーリー先行型です。
で、そのストーリーに沿って音楽を挟み込んでいきます。
音楽がうまくはまらなかったらどうするの、とこれもよくきかれますが、意外にうまくいくんですよね・・・こればかりは何となく、です。
ただ、作品の中でキーになる曲と言うのはありまして、今回、一幕は「劇場支配人」、二幕は「地獄落ち」が揺るがないメイン曲でした。
そもそも、この音楽劇の物語は、初め「劇場支配人」のくだりから生まれました。
この話をすると、びっくりされます。直接物語の本筋とはあまり関係ない箇所だからかな。
でも、作品の生まれ方って案外そんなところだと思うのです。
そして皆さまから大変ご好評を頂いた、最後の終幕場面に使った「フィガロの結婚」のフィナーレ。これは物語の最後に相応しい音楽だったと思っています。
あの選曲は、台本を書いてる最中に、ひょいっと何となく思い浮かんだの・・・私はラストシーンは途中で何となく思いつくパターンが多いんで。
物語の最後は、やはりハッピーエンドで終わりたい。悲しい結末となった人達も、どこか幸せになれる曲が良い。
孤独な人も、決して見捨てられた一人ぼっちじゃない。
うまく言えないけど、あそこには、やはり「フィガロの結婚」のフィナーレしかないな、と思って、これをこの音楽劇「モーツァルトの旅」の最後に持ってきました。
この曲は、何故か皆が幸せな気持ちになれるという、魔法のような、不思議な曲なのです。
そこにモーツァルトの音楽の喜びを感じるのです。
私にとってモーツァルトの音楽は、理屈じゃなくて、感覚。感じた事がモーツァルトの音楽だと思っています。
お客さまと共有出来た空気の感情が、その気持ちが、モーツァルトの音楽。
それ以上の事ではないんじゃないかな。説明したり、論理的に話す事は、私にとっては難しい。
「コジ・ファン・トゥッテ」のフィナーレに悲しいものを混ぜる事も出来るし、バジリオのアリアの明るい曲調の中にも悲劇的なものを内包させ、そしていかようにも歌う事が出来る。
「魔笛」の「愛を感じる人ならば」の二重唱の、あの説明できない音楽の美しさ。「良い曲だなあ」としか言えません。
ただ、私は知ってほしかった。
モーツァルトの作品の中には、いわゆる有名な曲以外にも、これほどまでに色々な曲があって、こんなにも多彩な表現、こんなにも様々な横顔を見せてくれる音楽がたくさんあるんだという事を。
悲劇は悲劇のみではなく、喜劇は喜劇のみには終わらない。
そんな面白さを、わかりやすく楽しく、お客様に伝えられたらなあ、と思ってこの作品を作り上げました。
お聴き下さったお客様、ほんのひと時でも「楽しかった!」と思える時間を過ごして頂けたでしょうか。もし、少しでもそう感じて頂けたなら、クラシック音楽というエンターテイメントを提供する人間として、こんな幸せな事はありません。
終演後のロビーで、私の先生が泣きながら、
「私、モーツァルトを好きだって、もちろん思っていたけど、もっと大好きだったんだという事を、改めて気付かされたわ…」
と、おっしゃって下さいました。
先生は、モーツァルトのオペラのヒロインを持ち役にして、長年ずっと演じてこられた方です。そんな先生にこんな風に言って頂けるなんて、本当に嬉しい…!
私にとっては「先生」という存在の方が、そんな風に感じて下さったなんて、嬉しい以外に言葉がないです…
最後になりましたが、私のこの作品をとりあげて、上演させて下さった東京室内歌劇場さま。
制作の前澤悦子先生。
キャスト一人一人の皆さま。
ピアニストの朴令鈴さん。
東京室内歌劇場の事務局の皆さま。
稽古ピアニストの伊藤友香ちゃん。
そして何より、いらして下さった満席のお客さま。
皆さま、ありがとうございました!
終演後に一枚。
前列中央/朴令鈴さん(ピアノ)、右隣/古澤利人さん(シカネーダー)
2列目左から/吉田伸昭先生(ダ・ポンテ)、加地笑子さん(ナンネル)、
私(モーツァルト)、末吉朋子さん(コンスタンツェ)
後列左から/田中紗綾子さん(ソプラノ歌手)、杉野正隆先生(サリエリ)、
下瀬太郎さん(レオポルド)
お世話になりましたー!
8月いっぱいかけて、7月31 日に上演された音楽劇「モーツァルトの旅」についてのブログをずっと書いてきましたが、その間にも、別のコンサートなどの打ち合せをしたり、書類を作ったり・・・と、また新しい企画も色々と進んでいます。
うまく進むかわからないもの、すでに決まったものなどなど、企画の仕事はとても大変な事も多いですが、幸せもたくさん頂いています。
出演する方達の魅力を、最大限引き出して、何よりお客様に楽しんでいただける企画を出していきたいです。すっごく楽しみ。
そして、もちろんもちろん、私は歌手です。何より歌があっての私です。
演奏のみのお仕事も、これからも今まで通り、いえ今まで以上に頑張ってやってまいりますので、皆さま、どうぞよろしくお願いします~!
歌のお仕事、お待ちしてます~!
てなわけで、次からは「モーツァルの旅」以外のブログになります。
ではまた!
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最後に、台本と劇の構成について書きます。
今回の音楽劇の中で、ストーリーの中心となって台詞をしゃべってもらったのは、主に男声陣の登場人物たちでした。
当時はやはり男性社会。仕事の場…つまり音楽が演奏される宮廷などは男性中心の社会であり、主に男性だけで話が進んでいく為、どうしても劇の中の台詞は、男声キャスト中心にお願いする事になりました。
その中で、モーツァルト役を、女性の私が演じたのは、やはり「ズボン役」というオペラならではの特殊性も使いたかったから。
宝塚のように、『男』そのものを演じるわけではない、オペラ独特の表現方法。ズボン役といえば「フィガロの結婚」のケルビーノですから。
そして、ズボン役と言えど女性が一人でも混じっていた方が、男性だけよりも、お客さまにも比較的見やすいかと思いました。
そして色々な方からよくきかれたのが、台本と音楽、どちらをどう組み合わせて作品を作り上げるのか、という事でした。
これはやり方が完全に決まってまして。私の場合は、まず先に台本を書きあげます。ストーリー先行型です。
で、そのストーリーに沿って音楽を挟み込んでいきます。
音楽がうまくはまらなかったらどうするの、とこれもよくきかれますが、意外にうまくいくんですよね・・・こればかりは何となく、です。
ただ、作品の中でキーになる曲と言うのはありまして、今回、一幕は「劇場支配人」、二幕は「地獄落ち」が揺るがないメイン曲でした。
そもそも、この音楽劇の物語は、初め「劇場支配人」のくだりから生まれました。
この話をすると、びっくりされます。直接物語の本筋とはあまり関係ない箇所だからかな。
でも、作品の生まれ方って案外そんなところだと思うのです。
そして皆さまから大変ご好評を頂いた、最後の終幕場面に使った「フィガロの結婚」のフィナーレ。これは物語の最後に相応しい音楽だったと思っています。
あの選曲は、台本を書いてる最中に、ひょいっと何となく思い浮かんだの・・・私はラストシーンは途中で何となく思いつくパターンが多いんで。
物語の最後は、やはりハッピーエンドで終わりたい。悲しい結末となった人達も、どこか幸せになれる曲が良い。
孤独な人も、決して見捨てられた一人ぼっちじゃない。
うまく言えないけど、あそこには、やはり「フィガロの結婚」のフィナーレしかないな、と思って、これをこの音楽劇「モーツァルトの旅」の最後に持ってきました。
この曲は、何故か皆が幸せな気持ちになれるという、魔法のような、不思議な曲なのです。
そこにモーツァルトの音楽の喜びを感じるのです。
私にとってモーツァルトの音楽は、理屈じゃなくて、感覚。感じた事がモーツァルトの音楽だと思っています。
お客さまと共有出来た空気の感情が、その気持ちが、モーツァルトの音楽。
それ以上の事ではないんじゃないかな。説明したり、論理的に話す事は、私にとっては難しい。
「コジ・ファン・トゥッテ」のフィナーレに悲しいものを混ぜる事も出来るし、バジリオのアリアの明るい曲調の中にも悲劇的なものを内包させ、そしていかようにも歌う事が出来る。
「魔笛」の「愛を感じる人ならば」の二重唱の、あの説明できない音楽の美しさ。「良い曲だなあ」としか言えません。
ただ、私は知ってほしかった。
モーツァルトの作品の中には、いわゆる有名な曲以外にも、これほどまでに色々な曲があって、こんなにも多彩な表現、こんなにも様々な横顔を見せてくれる音楽がたくさんあるんだという事を。
悲劇は悲劇のみではなく、喜劇は喜劇のみには終わらない。
そんな面白さを、わかりやすく楽しく、お客様に伝えられたらなあ、と思ってこの作品を作り上げました。
お聴き下さったお客様、ほんのひと時でも「楽しかった!」と思える時間を過ごして頂けたでしょうか。もし、少しでもそう感じて頂けたなら、クラシック音楽というエンターテイメントを提供する人間として、こんな幸せな事はありません。
終演後のロビーで、私の先生が泣きながら、
「私、モーツァルトを好きだって、もちろん思っていたけど、もっと大好きだったんだという事を、改めて気付かされたわ…」
と、おっしゃって下さいました。
先生は、モーツァルトのオペラのヒロインを持ち役にして、長年ずっと演じてこられた方です。そんな先生にこんな風に言って頂けるなんて、本当に嬉しい…!
私にとっては「先生」という存在の方が、そんな風に感じて下さったなんて、嬉しい以外に言葉がないです…
最後になりましたが、私のこの作品をとりあげて、上演させて下さった東京室内歌劇場さま。
制作の前澤悦子先生。
キャスト一人一人の皆さま。
ピアニストの朴令鈴さん。
東京室内歌劇場の事務局の皆さま。
稽古ピアニストの伊藤友香ちゃん。
そして何より、いらして下さった満席のお客さま。
皆さま、ありがとうございました!
終演後に一枚。
前列中央/朴令鈴さん(ピアノ)、右隣/古澤利人さん(シカネーダー)
2列目左から/吉田伸昭先生(ダ・ポンテ)、加地笑子さん(ナンネル)、
私(モーツァルト)、末吉朋子さん(コンスタンツェ)
後列左から/田中紗綾子さん(ソプラノ歌手)、杉野正隆先生(サリエリ)、
下瀬太郎さん(レオポルド)
お世話になりましたー!
8月いっぱいかけて、7月31 日に上演された音楽劇「モーツァルトの旅」についてのブログをずっと書いてきましたが、その間にも、別のコンサートなどの打ち合せをしたり、書類を作ったり・・・と、また新しい企画も色々と進んでいます。
うまく進むかわからないもの、すでに決まったものなどなど、企画の仕事はとても大変な事も多いですが、幸せもたくさん頂いています。
出演する方達の魅力を、最大限引き出して、何よりお客様に楽しんでいただける企画を出していきたいです。すっごく楽しみ。
そして、もちろんもちろん、私は歌手です。何より歌があっての私です。
演奏のみのお仕事も、これからも今まで通り、いえ今まで以上に頑張ってやってまいりますので、皆さま、どうぞよろしくお願いします~!
歌のお仕事、お待ちしてます~!
てなわけで、次からは「モーツァルの旅」以外のブログになります。
ではまた!
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