ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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モーツァルトいろいろ。

2015-07-26 23:34:45 | 歌のこと
「モーツァルトの旅」から離脱して、8月7日本番のオケ合わせに行ってきました。
といっても歌わせて頂くのは、やはりモーツァルト。 笑

昨年もご一緒させて頂いたオーケストラ、アンサンブル・フォウ・ユウさん、そして高橋誠也マエストロとご一緒させて頂きます。

私が歌わせて頂くのは、モーツァルトのコンサートアリアKV217。
私はお恥ずかしい事にこの曲を知らなくて。先方から指定されてから勉強したのですが、いやー良い曲!!
これを19歳の時に作っちゃうんだから、モーツァルトやっぱり天才だなぁ・・・
ゆったりした部分と、アレグロになった部分の差、そしてその繰り返しの構成の仕方も普通じゃない。シンプルなのに、どうしてこんな形にするだけでこんなに魅力的になっちゃうんだろう。
ドリーナという女性のアリアで、あまり前後のストーリーの資料が残っていないのですが、彼女が溌剌としてて頭もよく、女性としてかなり小悪魔的な魅力のあった人なんだという事が、歌っているとよくわかります。
自分に言い寄ってくる男性を振ってしまうアリアなんですが、 こんな振られ方したら、ますます惹かれちゃうよねぇ~、と思わずにはいられない。モーツァルトすごいなぁー。

この曲、音楽劇「モーツァルトの旅」に入れられなくて残念だな。それに、8月の演奏会は関係者のみのコンサートなので、皆さんに聴いて頂けないのも残念。

さてさて、7月31日(金)の音楽劇「モーツァルトの旅」、もう今週が本番となりました。
キャストの皆さん達が、素晴らしい集中力で仕上げてくださっています。
前回の私のブログ、こんなに自信満々に書いちゃっていいの?と言われましたが、だって、皆うまいんだもの!!演技も歌も、すごいよ!すごいの!
今回のブログも熱いです!

この音楽劇「モーツァルトの旅」は、二幕構成にしてあるんですが、幕ごとに山場にしている曲があります。一幕は『劇場支配人』の三重唱、そして二幕は『ドン・ジョヴァンニ』より「地獄落ちの場」。
この二つは、この「モーツァルトの旅」の脚本を書き始める前から、骨子としてあった場面なんです。この二か所から話を膨らませていって全体を書きました。
だから、私にとってはとても大事な場面。
お稽古を見ていると、どちらも本当に素晴らしい。「劇場支配人」は笑いが止まらないし、「地獄落ちの場」の迫力たるや、すさまじい。

でも、一体お客様の何人が、あの難しい「劇場支配人」の三重唱を歌っている三人の歌手達の高度な技術に気付かれるだろうか。演技がとても面白い三人なので、つい笑いながら見てしまうのですが、三人の精緻なアンサンブルは見事のほかありません。
ソプラノ末吉朋子さんの本当に完璧な高音。いったい彼女はどこまで高音を出してしまうのか。
同じくソプラノ田中紗綾子ちゃんの見事なコロラトゥーラ、しかもリリックな声なので素晴らしい存在感。
テノール吉田伸昭先生のコミカルな演技は当然のものとして、テノールがびしっとソプラノ二人を支えるあの歌唱・・・

とにかくあの重唱はとても難しいのです。でもこの三人は難しさをまったく感じさせず簡単そうに演奏する。自分たちの技術を見せびらかすことなく、しかも場面としてアピールしながら、演技でばっちり笑いを取り、三人で息を合わせながら、それを表に見せない。こんな人たちがいていいのか。
あんな「劇場支配人」私は聴いたことないです。モーツァルトの一つの真骨頂と言ってもいい。

「地獄落ち」も素晴らしい。
お稽古を始めた頃は「うぇーい ここ覚えてないぞー」とかなんとか三人で言ってたりしたのですが(笑)
やはりこちらもすごい。
こちらは「劇場支配人」とは逆に、演技はほとんどつけませんでした。ただ歌唱で見せて下されば…という感じで、私はお願いしたのですが。
その歌唱だけでここまで聴かせられる三人。

バリトン杉野正隆先生の、気品があってかつ強い貴族の声。まさにジョヴァンニ。あのノーブルな声は、天性のものなんだなあと思わずにはいられません。
バリトン古澤利人さんは、すんなりとレポレロの演技になれる集中力と、そしてレポレロになれる声。そして地獄落ちの場が終わった途端に、数秒もしたらまたすぐ別の役に変わるのです。いつも決してブレる事はない。どうやったらあんなことができるのか・・・
そして騎士長役のバス下瀬太郎さん。騎士長の最初の第一声が、すべてを打ち破る場面です。それにふさわしい声を、どん、と放ってくれる。戦慄が走る男声三人の重唱の幕開けにふさわしい、声の存在感。すごい・・・

そしてピアノの朴さんも素晴らしいのです。
一瞬で地獄にしてしまう。
最初のジャーン、の和声だけで、どうして聴き手を地獄に放り込めるのか。
前述した高橋誠也先生が、オケ合わせの時にたまたま「地獄落ちの場」について、
「モーツァルトは和音一つで、地獄にしてしまう。どうしてあんなことができるんだ!と言って、R・シュトラウスは嫉妬したんだよ」とお話してくださったんですが。
朴さんはまさにそれ。
いくらモーツァルトが描いたと言っても、その和声一つで地獄を導き出せるピアニストがいったい何人いるのか・・・!

そして、上記の重唱には参加されていないのですが、モーツァルトの姉ナンネル役のソプラノ加地笑子さんの歌いながらの演技も、素晴らしいです。
今回、ナンネルのテーマ曲にしている「ティトの慈悲」のアリアがあるのですが、あの曲をメロディーに引きずられず、私がお願いした通りの方向性で歌ってくれる。
メロディーがあまりに綺麗なので、ついそのまま優しく歌ってしまいそうになる曲なのですが、そこはモーツァルト。本当に多様な表現がそこにあるんです。
そこをきちんと表現し、歌いながら姉ナンネルとして存在してくれる彼女を見つめていると、弟であるモーツァルトの私は、自然と涙がこぼれてきてしまう・・・

もちろん、そう感じさせるのは加地さんだけではないです。
モーツァルト役の私、相手役の演技に足がすくんで動けなくなったり、心を溶かされたり・・・

私は幸せです。
これほどの実力派の歌手たちに囲まれて、一キャストとして刺激を受け、そしてまたこの脚本を書いた作品の作り手として、こんな幸せな初演を迎えることができるなんて、こんな喜びはないです。
本当に幸せな作品です。

どうか、キャスト全員が万全の体調で本番を迎えられますように・・・!
いらして下さるお客様も、どうか祈っていてください。

今回が初演となる新しい作品ですが、わかりやすく、そして楽しんで頂ける自信があります。
まだ少しですが、チケット残っています。今ならまだ間に合いますので、是非是非、いらして下さい!
クラシックに詳しい方も、そうでない方も、きっと楽しんで頂けます。面白く、聴きごたえのある作品に仕上がってます。

詳細はこちら!


東京室内歌劇場公演
♪音楽劇「モーツァルトの旅」♪
~モーツァルトの一生を室内歌劇場で旅してみませんか~


【日 時】 2015年7月31日(金)18時30分開演
【会 場】 南大塚ホール(JR山手線「大塚駅」より徒歩5分) 
【入場料】 3600円(全席自由)  
【主 催】 東京室内歌劇場   
【出 演】 モーツァルト/中川美和、シカネーダー/古澤利人、ナンネル/加地笑子、サリエリ/杉野正隆、 コンスタンツェ/末吉朋子、 ダ・ポンテ/吉田伸昭、ソプラノ歌手/田中紗綾子、 レオポルド/下瀬太郎
ピアノ/朴令鈴

【脚本・構成・ステージング】 中川美和

※チケットのお申込み、お問合せは、
東京室内歌劇場
電 話 03-5642-2267
メール info@chamber-opera.jp 


私へのお問合せもお気軽にどうぞ! 
メール ticket@nakagawa-miwa.com


※チラシ・公演の詳細は

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