前原氏「武器使用緩和を」
米で講演 輸出三原則も見直し
民主党の前原誠司政調会長は7日、ワシントン市内の日米同盟に関するシンポジウムで講演しました。
この中で前原氏は、「自衛隊とともに活動する他国の部隊に対する急迫不正の侵害から守れるようにすべきだ」と述べ、自衛隊が海外で共同行動する他国軍に対する攻撃で武器を使用できるようにすべきとの考えを示しました。
自衛隊が国連平和維持活動(PKO)などで海外派兵を行う場合、武器使用は自己防護に限られていますが、他国軍に対する攻撃で武器使用に踏み切った場合、現在の政府解釈でも、憲法違反となる「海外での武力行使」につながります。
また、防衛装備品の国際共同開発・生産の流れに乗り遅れないとして、その制約要因となっている武器輸出三原則を「見直しをしなければならない」と語りました。
親米タカ派で自民と共鳴
前原氏は、親米タカ派として知られ、これまでも訪米のたびに日米同盟強化、憲法9条敵視の発言を繰り返してきましたが、今回の発言は、政権党の政策責任者の立場からのものです。民主党は野田新政権のもとで、党政調の権限強化をはかり、政府提出法案の了承を必要とするなど、事実上、政府の政策の決定権を握る存在に格上げされています。その責任者の発言は、政府の政策を方向付ける意味を持つだけに、これまで以上に危険なものです。野田首相自身も集団的自衛権の行使を容認しています。
派兵恒久法
自民党の石破茂政調会長が、前原発言を評価し、「前原氏の考えが法案化され、国会に提出され、自民党案と並行して審議が行われ、両党が歩み寄った形での法律の成立が望ましい」と述べました。石破氏がいう『法案』とは、いつでも自衛隊を海外へ派兵できるようにする恒久法案です。自民党はすでに同党の『国際平和協力法案』を国会に提出しています。
民主党はいま自民、公明両党に対し、震災復興、税制改定などで3党協議を呼びかけていますが、派兵恒久法でも協議が進む可能性があります。
前原、石破氏は、民主、自民、公明、国民新各党などの国防族議員らでつくる『新世紀の安全保障体制を確立する議員の会』などで日米同盟強化をテーマに、長年にわたり協力関係を築いてきました。同議連の中心メンバーには、民主党の長島昭久首相補佐官、自民党の浜田靖一元防衛相、公明党の佐藤茂樹外交・安保部会長らが名を連ねています。
二正面作戦
さらに民主党は野田新政権発足を受けて、改憲原案の審査権限を持つ衆院憲法審査会の会長に大畠章宏元国土交通相をあてる人事を内定。
8月末の通常国会閉会時には、衆参両院の議院運営委員会で、次期国会での憲法審査会の委員選任の意向を示しています。恒久法策定と明文改憲へ向けた憲法審査会始動という、憲法破壊の二正面作戦が強まる危険は軽視できません。
9・11米同時多発テロ10周年の直前に飛び出した前原発言。9・11テロ以降、アメリカはアフガン、イラク戦争という大儀なき戦争で、アジア、中東に大惨害をもたらして、自らも国際的孤立を深めました。
武力による平和はありえないにもかかわらず、自民党政府は、ひたすら米国に追従して海外派兵拡大に突き進み、改憲策動を強めて、ついに政権から転落しました。世界も日本も平和の共同を求める方向へと大きく転換しつつあります。
にもかかわらず自民党と同様に9条を敵視し、日米軍事一体化に熱中する民主党に、未来はありません。