企業は労働者に分け前を
独労相が賃上げ支持発言 赤旗日刊紙2012・2・19
世界的な景気後退の可能性も指摘される中で、ドイツでは「企業は悪くない利益をあげている」として、現職閣僚が「労働者にその成果を分け与えるべきだ」と発言し、労働組合の大幅な賃上げ要求を支持する立場を表明しています。労組側もたたかう構えを強めています。(片岡正明)
昨年は実質賃金マイナス
「ストも」労組たたかう構え
その閣僚とは保守のキリスト教民主同盟(CDU)のウルズラ・フォンデアライエン労働相で、独紙ビルト日曜版11日付で「労働者が増えたと実感できる賃上げをすべきだ」と強調。「勤勉に働く者に成功を分け与えるのが(CDUなどが唱える)社会的市場経済の根本的な約束だ」と述べました。
同国では、労働組合が年明けから、自動車・電機部門で6・5%、化学産業部門で6%、公務員が6・5と“春闘”で次々と大幅賃上げの要求を掲げています。しかし、使用者側はユーロ経済圏の景気悪化の下で「(要求は)現実からかけ離れている」と否定的です。
こうした中での、労働担当閣僚の賃上げ容認発言です。
背景には、長年、労働者の賃上げが抑えられてきたことがあります。ビルト紙によると、2000年から11年末までで、専門性を持つ労働者の賃金はインフレや社会保険料の値上げを考慮すると約18%低くなっているのに対し、大企業の幹部の収入は約22%も上がっているといいます。
リーマン・ショックから立ち直ったドイツは昨年、予想値で3%程度の経済成長を記録しましたが、ハンス・ベックラー基金経済社会研究所(WSI)によると、各産業部門を平均した賃上げは2%と、インフレ率の2・3%を下回りました。部分的には4%など高い賃上げを勝ち取った産業部門もありましたが、印刷業など低い賃上げで妥結した部門が多く、実質賃金はマイナスとなりました。
ドイツ労働組合総同盟(DGB)のゾンマー議長は経済危機といっても「企業の存続や雇用の危機があるわけではない」とし、「労働者の正当な取り分を勝ち取るためにはストも辞さない」(13日付ビルト紙電子版)姿勢をみせています。
社会的市場経済 労働者の権利や社会的弱者の擁護など社会政策と市場経済を統一する概念で、市場にだけ経済をまかせるのではなく国家の介入により、社会的公正と経済的繁栄を実現していくことを目的としています。1948年にドイツの経済学者が提唱し、ドイツの基本的経済政策として採用されました。欧州連合(EU)の基本条約にも明記されています。
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きょうの潮流 しんぶん赤旗2012年2月20日
戦前のプロレタリア文学作家、日本共産党員だった小林多喜二が特高警察に捕まり虐殺されたのは1933年2月20日です。薄曇りの寒い日だったといいます
▼文学、党活動の両方で多喜二と行動を共にした手塚英孝が彼の言葉を伝えています。「書く人は沢山(たくさん)いるよ、だが、皆、手の先か、体のどこかで書いている」「誰か、体全体でぶっつかって、やる奴(やつ)はいないかなあ。死ぬ気で書く奴はいないかなあ」(「小林多喜二の思い出」)
▼北の荒海で奴隷のように働かされる労働者の悲惨さと決起を描いた多喜二の「蟹工船」は80年以上の時を超えて、非正規雇用や低賃金に苦しむ現代の若者から共感を集めています。対象に全身でぶつかったからこそ書けた作品です
▼北海道小樽市で21日から小林多喜二国際シンポジウムも開かれます。多喜二が4歳だった1907年末、一家は秋田から小樽に移住しました。当時、石川啄木もこの町で暮らしていました。新聞編集の仕事に挫折した後、社会主義に関する演説会に参加し、感動を日記にしるしています▼「こころよく/我にはたらく仕事あれ/それを仕遂げて死なむと思ふ」。小樽公園にある碑に刻まれた啄木の歌です。命がけでできる仕事を求める思いが痛いほどです
▼今年は啄木没後100年、来年は多喜二没後80年です。社会主義に未来を見いだしつつ貧苦に倒れた啄木。日本共産党員として活動中に殺された多喜二。2人の志を受け継いで歴史を前へ動かすのは21世紀に生きる私たちです。