中国貴州省とそこで暮らしている苗族トン族等の少数民族を紹介しています。

日本人には余り馴染みのない中国貴州省と、今私が一時滞在中の雲南省や大理白族自治州大理古城について

貴州少数民族の村のこしき(甑)

2018年08月18日 | 少数民族の食べ物

少数民族の村でも、昔から使われていた様々な生活用具が、急激に姿を消しつつある様です。甑(こしき)もその内の一つです。貴州省に住む多くの少数民族は、今でも祭りの際には餅を搗いたり、必ずの様に糯米を食べます。そう云う事もあって以前は甑が良く使われていた様ですが、近年は殆ど見かける事は出来なくなりました。今年2月と7月に久しぶりに貴州省を訪れた際、幾つかの少数民族の村で甑を見かけました。がこの様な光景も次第に見られ無くなりつつあります。

 

甑でもち米を蒸しているところ。こちらは全て木製でかなり年季が入っている感じです。貴州省黎平県双江郷黄崗村。

 

木桶の下に穴が穴が開けてあり、そこから蒸気が通り、中には糯米が入っていて、中のモチ米を蒸しあげる。貴州省黎平県肇興郷。

 


別の村で見かけた甑。甑は中国語ではzengと発音します。


今では甑が使われている村も少なくなっているようで、最近はこの様にして糯米を蒸すのが一般的。今は未だ蓋をしてませんが、この後蓋をして蒸し上げる。

 

この木桶の中に蒸しあがったお強が入っています。

 

奥に木桶が見えますが、同じように木桶の中には糯米が。

甑を中国語ではzeng(注:4声)と発音します。漢語大辞典で甑を調べると「食べ物を蒸す炊事用具」とあり「底には穴が空けてあり古くは陶製であったが、殷周時代には青銅製の物が用いられ、その後は木製の物が使われる様になった」とあります。俗に甑子と云うとの説明もあります。

中日大辞典(大修館書店)には、甑は「古代蒸し用の土器、カメ」とあります。中日辞典(小学館・北京商務印書館)も似たようなもので、「古代の食物を蒸す土器」と説明してありますが、如何な物かと云う様な説明です。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説より

甑こしき

 穀物などの蒸し器。鉢形または甕(かめ)形の器の底に、下の器から沸いた湯気をあげる穴をあけ、中に簀子(すのこ)や麻布を敷き、蓋(ふた)をして食物を蒸す。弥生(やよい)時代の土器にもみられたが、5世紀のころ、朝鮮南部を経て角(つの)状の把手(とって)のある大型の土製の甑が伝来し、土製の釜や竈(かまど)と組み合わせて使用された。山上憶良(やまのうえのおくら)は、「竈(かまど)には火気(けぶり)ふき立てず甑には蜘蛛(くも)の巣かきて、飯炊(いいかし)ぐ事も忘れて」と詠んでいる。甑では米を蒸して強飯(こわめし)、蒸し米を干して糒(ほしいい)、杵(きね)で搗(つ)いて餅(もち)をつくる。稗(ひえ)は蒸してから搗いて殻を除き飯にする。そのほか、団子、ちまきを蒸すとか、酒造やみそづくりにも用いられる。平安時代に曲物(まげもの)の甑が出現し、のちに桶(おけ)の甑となり、江戸時代には蒸籠(せいろう)の発達をみた。[木下 忠]

 

上の絵を拡大した物ですが、貴州省の少数民族の村で見る甑とぼぼ同じです。

私としては、甑の説明として、この日本大百科全書の解説が一番正確だと思います。

 

 


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