「微細心理歴史学」と「証古学」 ②
私の『ファウンデーションの夢』の第7話に、ロボット・ダニール・オリヴォーが惑星シンナックスに、ハリ・セルダンの後継者を探すために、地球探索の旅の途中で立ち寄るエピソードがあります。ダニール・オリヴォーは、クレオン一世の忠実で敏腕な宰相エトー・デマーゼル本人であったのですが、その世界においては、ご法度の存在であったため、その席をハリ・セルダンに譲り、退官して、ハリ・セルダンが公務で、彼自身の心理歴史学の完成を中断しなくてはならない状況を慮って、ハリ・セルダンの大事業の完成を補完しようと、その旅を企てたのです。
その星は、シンナックス。ダニールは、二万年前、当時鋼鉄の穴蔵の都市に住んでいた人類を目撃していました。当時、まだ大海に囲まれていた地球の様子を思い出し、その時盟友であった地球人のニューヨーク市警のイライジャ・ベイリーを懐かしむのです。その時、彼の陽電子頭脳の脳裏には、ハリ・セルダンとイライジャ・ベイリーとが二重写しに移っていたに違いありません。
銀河に散らばった人類に、歴史消失の禍根を齎した自己の責任の咎めは、盟友ジスカルド・レヴェントルフが欠けて以来、唯一ダニール・オリヴォーにのしかかってきたのです。
ロボットが人類の未来を担保する。そんなに悲痛な物語を考案したのは、誰であったか?
アイザック・アシモフは、執拗に我ら個人の生き様に挑戦状を突き付けているようではありませんか?
https://youtu.be/JOnGfRJZTGw
Yin Yi
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