34ファウンデーションの夢
第六部
ベイタ・ダレル
第1話
ベイタ・マロウの母ロアへの手紙
あらすじ
34
「ガイアへの労り、ガイアへの共感は第二次世界大戦後の自然破壊、二酸化炭素排出量の急激な指数関数的増大に目覚めたわずか少数の人たちによってはじめられた。
当時人類はその正気を失い、とくに北半球の資本家たちはとめどもない欲望を南半球の人たちへの搾取という形で剥き出しにしていった。
廉価な労働力確保はさらに冷戦後、まるで止まることのない列車が一寸先に断崖絶壁があるのを知らないで加速度をあげて突進していくようであった。
南半球の残酷な光景はもはや地獄と化していった。そしてすぐその残酷への報いが自分たちの方へ方向を転換してきたのに気づくのは時間の問題であった。
社会の全機能が麻痺してきたのだ。『ジョン・ナックの歴史思想書』より」
(全文ベイタ・マロウの母ロアへの手紙)
ロアお母さん、お元気ですか?私(ベイタ)はモーブで勉学に励んでいます。もうすぐ卒業論文を書く時期です。
郊外の先祖様たちが開拓したラベンダー畑はそれはそれは見事です。その一画にターミナスの最初のご先祖、ガールやベリスの家が今でもあったのです。どうでしょうか、シーウィー父さんとご一緒にターミナスに戻って来られては。
お母さん、ターミナスではもうティー・ツリーやラベンダーの生産はどこでもしてなくて、不思議にここだけ残ってるのです。先祖のおばあ様たちが、開墾したアグリフォレストリーもスミルナからシウェナやネオ・トランターやカルガンに移ってしまったのですから。
なぜか「児童のための知恵の書」を読んでいましたら、はるか昔、あるロボットに助けられて、ジョン・ナックという科学者がアタカナという星から人々をニフの星に逃がした、という文を見つけて、それがなんだか、ターミナスじゃないかと思ったのです。
お母さん、私、ご先祖様たちのようなお仕事、してみたいのです。できるかどうか今はわかりませんけど。
シーウィー父さんと故郷が同じだと言って、トランさんという若者がよくアパートに訪ねて来て、食べきれないほど果物を届けてくれるのです。なんか、彼の叔父さんと父さんは親友だったとか。故郷の星はヘイブン。いい名前ですね。
でも、その商人グループの名前が、「独立貿易協議会」と言って厳めしいんですけどね。
ベイタより母ロア様
yatcha john s.