ミーターの大冒険 エピローグ 第10話 「陽電子から第零の法則」
あらすじ
アルカディアが81歳で亡くなった。彼女の知人のジスカルド・ハニスはアルカディアに感銘を受けていた。そこでミーターとオリンサスとの面倒をみると同時に、ミーターから彼女の遺言の全てを聞く。ハニスは、ミーターとともに彼女の遺志を継ぐことを決意する。それは銀河復興を成し遂げることであり、危険で無謀にみえる挑戦でもあるのだが。
ハニスの直感とミーターの柔軟性のある論理思考が冴え渡る。「心理歴史学」の権威のハリ・セルダンを唸らせた、地球探査の報告書を携え戻ったガールの真実発見とはなんだったのか?「微細心理歴史学」という真理なのか?ベイタ・ダレルが、ガールの見解を正確に踏襲していた、ということなのか?ミュールの必然性とは?ますます展開が際立って来たようだ。
そしてその究極的謎の究明には、「極素輻射体」の理解が必須となる。
ミーターは何度も繰り返されて理解したアルカディアの理論をジスカルド・ハニスに語っていく。セルダン理論は、ハリ・セルダンが見破ったワイ市での出来事から、「ロボット第零の法則」、そしてその法則は「陽電子頭脳」の完全機能の結晶から導き出されたというのだ。それは実に生命と宇宙の根源にまで遡れるという。
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ハニス ハリの「心理歴史学」は、「第零の法則」から自然に導かれる理論というのだな、そして「陽電子頭脳」から自然に「第零の法則」が生み出された、というのだな?ミーター君。
ミーター そうです、ハ二スさん。どんな素粒子にも、反物質は存在します。陽電子とは、電子の『反物質』です。反物質とは、既存の粒子とはほとんど同じ性質を持っているにも関わらず、電気的な性質が逆になっている粒子です。
そして実は、こういった反物質は、通常の物質の時間逆行粒子だと考えられています。つまり、陽電子は、時間をさかのぼっている「電子」なのです。
エントロピーを増大させることが退廃であり、時間順行だとすれば、反粒子の陽電子によっては時間逆行つまりエントロピーの減少作用を惹き起せます。
つまり陽電子頭脳から過去追慕のメカニズムが働くと思って間違いはないのです。
ハニス では何処まで遡ると言うんだい、ミーター君。
ミーター 理論的には138億年前。それ以前には時間は存在しませんからね。
ハニス それじゃ、現実、未来を構築する本質的力とは何なのかね?
ミーター そこまでお聞きになるんですか。僕は一介の翻訳ロボットですよ。でも頑張ってお答えしましょう。
陽電子頭脳の傾向は、過去への執着。それに頼っていては、ちっとも未来など展開しませんよ。
でも、ハ二スさん。有機的生命体は、基本、精神作用でその中でも、人間だけに固有の「想像・創造作用」はエントロピーを減少させます。
安定的な漸進的進歩は、人間とロボットとの共同によって営まれる、というのがアルカディアの意見なのです。言うなれば、孤立人から全人(他の無機、有機、社会、宇宙との感応状態)への移行が今、策(もと)められている、ということですね。ちょっとくどくて、僕の説明では理解が困難でしょうけど。おわかりになられたら、嬉しいですよ、ハ二スさん。
ハニス それでは正物質と反物質とが衝突して、「対消滅」が起こってしまうのでは?
さあ、どうなんでしょう!それ以上は、僕にはなんとも、わかりません。これ以上の謎解きは、ハ二スさんのお役目ではないでしょうか?
なぜなら、陽電子から必然的に無機と人間との同調・感応をはじめて見いだしたのは、「ジスカルド・レヴェントロフ」。あの不死の従僕にその全権を委ねた、貴方の由緒あるお名前の「ジスカルド」ですからね!
yactha john s. 『ミーターの大冒険』エピローグ 10 「 陽電子から第零の法則 」
Photo ∶陽電子を光らせてるジスカルド・レヴェントロフ
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