「ファウンデーション夢」劇間解題その3「とても込み入った話」
ハリ・セルダン(「ファウンデーションの夢」の中心人物の一人)がアシモフの『ファウンデーションの誕生』の中で、六十歳の誕生日を迎えようとした時の様子が描かれているところがあります。感能力が発見される以前の孫娘ウォンダが八歳になろうとした時の経緯です。 彼女は突然、祖父が死んでしまうことの恐怖にとりつかれ号泣します。母マネルラはウォンダに「そのいつかがそばにくるまでは、心配することはないのよ、おじいちゃんは、あなたが一人前の大人になって、あなた自身の子供を持つまで、長生きするわ」と言って慰めるシーンがあります。
ハリもウォンダに「悪い夢は、悪い考えを追い払う。そしてうまく暮らしていけるのさ」と優しく諭しています。
「ファウンデーションの夢」第16話では、先になくなった妹との再会も虚しく、惑星イオスの病室でその最後を迎えるウォンダの姿があります。遥々呼び寄せられたドース(祖母のドースと瓜二つ、血の繋がりはない)がウォンダと面会する場面があり、傍らにロボットであるダニールとドースが控えておりました。
ガールの娘ドースは才気香る行動的な女性でした。ウォンダはドースの耳元で三色に輝く地球から持ち帰ったシリンダーを渡し、その意味を伝えるという劇的な場面です。ウォンダには女の子がいなかったためです。
このシリンダーは後の世代で、また第二ファウンデーションのもとに返されることとなります。
因みにこの惑星イオスの名は惑星オーロラの中心都市、ダニールが製造されたイオス市に由来しています。
さらに込み入ったことにはアイザック・アシモフの絶筆は1993年のこの『ファウンデーションの誕生』だったのです。
このイオスはダニールが本拠地とした寂しい惑星で、ドース(一代目ハリのロボット妻)はハリを守るため、ある人間を殺(あや)め、ロボット三原則に則って機能停止に陥りますが、ほどなくしてここイオスで蘇生し、今度はハリを背後で見守ることになり、歴代のファウンデーション(ターミナス)の女性たちを陰ながら助けて行くことになります。
この辺の事情がダニールによる、ハリの後継者ガールの発見と地球の再発見という第一話の背景となっています。
最近のSFの奇才ディヴィッド・ブリンは超英雄ハリ・セルダンの死を受け入れられず、同じくアシモフの『宇宙の小石』のあらすじにヒントを得て五百年後に彼を蘇生させてしまいます。
これでは終わりなき物語になってしまって、やり過ぎでしょう。面白いと言えばそうかも知れませんが。皆様ならどう思われますか?
yatcha john s.
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