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テレビ石

2011-09-17 22:14:09 | 科学
祝! ブログ開設一周年!

 …などという楽屋ネタはやりたくないのですが、ブログ開設当初はもっと科学関係の記事も書きたかったのに、現在までほとんどありません。初心に戻って書いてみましょうか。

 先日の記事奇石博物館に言ったと書きましたが、そこでテレビ石というものを買ってきました。この名前は通称で、正式名称はウレキサイトといいます。組成はNaCaB5O6・5H2Oであり、ホウ素を含んだ珍しい鉱物です。



 私が買ったのは高さ2cm程度の小さなものですが、実はこの石は街の鉱物ショップなら大抵のところで売っている定番のお土産なのでした。

 この石のどこが面白いかと言うと、石の下側の絵が上側に映って見えるという性質があるのです。



 なぜこのように見えるかというと、細長い結晶が並んで光ファイバーのようになっているからと説明されています。底面からの光は細長い結晶の側面で反射を繰り返して上面まで到達するということです。現在、光通信によって多く用いられている光ファイバーですが、同様のものは自然によってすでに作られていたとは驚くべきことです。

 ちなみに、ホウ素を含む珍しい鉱物と上では書きましたが、ホウ素自体がこの宇宙で比較的珍しい元素なのです。それがなぜ地表でまとまって採れるのでしょうか。地球を岩石の塊と考えると、その成分は主に酸素、ケイ素、マグネシウム、鉄であり、これらの元素(イオン)が秩序を持って並んでいるとイメージできます。ところが珍しい元素があると元素の並びの秩序が崩れてしまい、構造が弱くなってしまいます。したがって珍しい元素の周辺はちょっとした圧力の低下などがあると融けてマグマになりやすいのです。地球内部でこういうプロセスを繰り返していると、地表にマグマが出てきた時には、珍しい元素が濃縮されているということになるのです。非常に簡単な説明ですが。

 宇宙では恒星内部の核融合反応によって常に元素が消費・生成しています。宇宙の90%は水素、9%はヘリウム、その他の元素は全てひっくるめても1%程度です。基本的に軽い元素ほど存在量が多いのですが、ホウ素は5番目に軽い元素なのにとても存在度が低いのです。この理由は核融合反応でホウ素が生成する反応の種類が少ないためであり、より重い炭素や酸素の方が反応のキリがいいため存在度が高くなっています。何百億年か経って宇宙の元素の反応が進むと、ホウ素はさらに少なくなってしまうのかもしれません。

 こんなふうに一個の土産物の石から地球や宇宙にまで想いを馳せることができるなんて、我ながら何と安上がりな趣味なのかと感心してしまいます。テレビ石はそこらへんの店で数百円で売っているので、見かけたらぜひ手に取ってみてください。