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チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」

2011-10-10 20:04:00 | CD


ピョートル・チャイコフスキー:
・バレエ音楽「くるみ割り人形」 作品71

指揮:ジョン・ランチベリー
フィルハーモニア管弦楽団

EMI: CDS 7 49399 2



 朝夕はめっきり涼しくなり、街角でキンモクセイの花が香るこの時期、私は異様な緊張を感じてしまうのです。というのも、所属していたオーケストラの演奏会がこの時期だったからです。今回は演奏会で演奏した曲の一つ、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」です。

 普通に「くるみ割り人形」と言ったら、8曲からなる25分程度の組曲のことを指しますが、この組曲とは90分のバレエから抜粋されたものです。ところが、この組曲版はバレエ全曲の中で最もどうでもいい部分を集めたものなのです。バレエ全体には流れの中にドラマがあり、登場人物や事件と音楽的主題の関連があるのです。それなのに、組曲としてコンパクトにまとめるために、音楽の壮大な関連性を全部排除しても問題のない部分だけを抜粋するしかなかったのです。もちろんそれでも魅力的な音楽ではありますが。

 「くるみ割り人形」はとてもメジャーな曲です。テレビ番組やCM(しゃべる犬のお父さんのCMなど)でも数多く使われているし、ゲームでも「パロディウスだ!」なんかで使われていますが、これらはいずれも組曲に使われた曲です。我々の演奏会ではこの「くるみ割り人形」がメイン曲であり、もっと尺を長くするために、全曲からさらに抜粋して組曲版に付け足すことになりました。付け足されたのは、「情景(松林の踊り)」、「パ・ド・ドゥ」、「タランテラ」、「終幕のワルツとアポテオーズ」の4曲です。組曲版では「花のワルツ」で爽やかに終わるところを、「終幕のワルツ」まで演奏することで大きな盛り上がりを得られたのではないでしょうか。そのためかどうかはわかりませんが、この時の演奏会ではアンコールが終わっても拍手が鳴り止まず、急遽もう一回「花のワルツ」を演奏したという記念すべき演奏会になりました。

 このディスクでの演奏はメリハリが利いており、劇場的な雰囲気もあって、90分という長さが全く気になりません。CDプレイヤーで聞いていると、ディスク交換するのも煩わしいほどノってしまいます。このように演奏もなかなかすばらしいのですが、このディスクには珍しい特徴があるのです。この「くるみ割り人形」には実はボツになった曲があります。全曲版のフルスコア(総譜)の最後には「ジーグ(イギリスの踊り)」という曲のピアノ用の譜面が途中まで掲載されていて、何らかの理由で途中で放棄されたことがわかります。このディスクではこのボツ曲を指揮者のランチベリーが編曲して、全曲の中に突っ込んでしまったのです(「トレパック(ロシアの踊り)」の前)。妙な盛り上がりで演奏しているし、チャイコフスキーのオーケストレーションとはやや異なってもいて、浮いてしまってはいますが…。

 というわけで「くるみ割り人形」を聞いていると、なんだか余計に緊張してしまいました。心地いい緊張ですけどね。



 YouTubeで見つけたイギリス王立のロイヤル・バレエ団によるバレエの第2幕の冒頭部分。「おかしの王国」、3:42から「クララと王子の入場」、8:32から「チョコレート(スペインの踊り)」となっています。この3曲は演奏しなかったのですが、ぜひとも連続して演奏したかった部分です。特に「クララと王子の入場」では変化に富み、ゴージャスでかっこいいんですが…。そこから「チョコレート」への展開のテンポもいいですね。この「チョコレート」に関しては演奏しようという声も強かったのですが、同期のトランペット吹きが「こんなソロ絶対に無理」と言い出して、強硬に反対されてしまったのが残念でなりません。


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