カール・オルフ:
・カルミナ・ブラーナ [世俗カンタータ]
ソプラノ:シルヴィア・グリーンバーグ
カウンター・テノール:ジェイムズ・ボウマン
バリトン:スティーヴン・ロバーツ
ベルリン国立大聖堂少年合唱団
ベルリン放送交響楽団、合唱団
指揮:リッカルド・シャイー
ポリドール: F35L-50254
なにやらテレビ番組の『ほこ×たて』がヤラセ疑惑とかで世間を騒がしているようでございます。私は観たことがないので番組スタンスがどのようなものかを知りません。したがって何も言うべきことはないのでございますが、『ほこ×たて』番組CMでオルフの『カルミナ・ブラーナ』が使われていたことは知っています。
こちらの動画は『カルミナ・ブラーナ』の第1曲「おお、運命の女神よ」~第2曲「運命の女神の痛手を」の動画です(演奏者不明)。『ほこ×たて』に限らずここ数年でいろんな映画や番組に使われているようですね。
作曲者のカール・オルフはストラヴィンスキーらの原始主義音楽に強く影響され、この『カルミナ・ブラーナ』のような単旋律で、低音に乗ってひたすら反復し、重量感のある作風となりました。解説によると「カルミナ・ブラーナ」とは「ボイロンの歌」という意味で、ドイツのバイエルン州ボイロンの修道院で発見された13世紀の写本をテキストにしています。この本は当時の修道学生によってラテン語、古代ドイツ語、古代イタリア語等で書かれた詩集で、そのテーマは「春が来た! 酒だ! 女だ!」という身も蓋もないものでございます。それだけに小細工のない音楽と見事にマッチしたと言えましょう。
全部で25曲からなり、通しで1時間ほど。冒頭に上記の「おお、運命の女神よ」が流れ、最終曲として再び「おお、運命の女神よ」に回帰する構成です。ラテン語等で書かれた歌詞は韻を踏んでいることもあり、音楽もその構成を意識していて、非常に小気味良く流れます。オーケストラは3管編成ですが、打楽器群が充実していてリズムが強化されています。各種独唱者のほか、大・小の合唱と児童合唱が配置され、迫力一辺倒ではない様々な効果を醸し出しています。
全25曲のうち私の好きなものを挙げてみます。第6曲「おどり」は唯一の声楽無しの野趣あふれる変拍子ダンス。第11曲「胸のうちは、抑えようもない」は舞台を酒場に移して韻を踏んだ歌詞が印象的。次の第12曲「むかしは湖に住まっていた」ではカウンター・テノールが酒場でローストチキンになった白鳥の心情を歌います。第14曲「酒場に私が居るときにゃ」は酒場の楽しい雰囲気。どうでもいいですが、歌詞の「旦那が飲めば、奥さんも飲む、軍人が飲めば、坊さんも飲む…」というのが、
日野日出志「地獄変」のラスト「きみは死ぬ! あなたも死ぬ! おまえも死ぬ! きさまも死ぬ!…」を思い起こさせます。他にも好きな曲はまだある(というより全曲イイ)のですが、どれも特徴を持っていながら全体としてトーンが統一されています。
ところで、第15曲「愛神はどこもかしこも飛び廻る」のメロディーについて、私が小さい頃にテレビのCMかバラエティーか何かで聞いた憶えがあるのですが誰か知らないでしょうか?
このディスクでは指揮者のシャイーが歌劇を得意としているだけあってノリがよく歌心のある演奏です。録音も優良で、劇場的な雰囲気もバッチリ。ティンパニをはじめ打楽器群も存在感があってなかなかエキサイティング。
オルフはこの『カルミナ・ブラーナ』の次に
『カトゥーリ・カルミナ』『アフロディテの勝利』を作曲して、これらを「トリオンフィ(勝利)3部作」としました。残りの2作についてはまた別に紹介しましょう。
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