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ストラヴィンスキー:ヴァイオリンとピアノのための作品集

2015-09-13 21:22:13 | CD


イーゴリ・ストラヴィンスキー:
・ロシアの踊り
・バレエ「火の鳥」
・歌劇「鴬」
・ロシアの歌
・タンゴ(サミュエル・ドゥシュキン編曲)
・ディヴェルティメント
・パストラール
・バラード
・デュオ・コンチェルタンテ

ヴァイオリン:ジェラール・プーレ
ピアノ:ノエル・リー

ARION: ARN 68062



 ストラヴィンスキーが作曲したヴァイオリンとピアノのための曲はそれほど多くなく、このディスクの収録曲の他には『イタリア組曲』しかありません。しかも『デュオ・コンチェルタンテ』を除いて全てが過去作の編曲だったりします。『火の鳥』と『鴬』以外の原曲を挙げてみると以下のようになります。

・ロシアの踊り:ペトルーシュカ
・ロシアの歌:マヴラ
・タンゴ:同名ピアノ曲
・ディヴェルティメント:妖精の口づけ
・パストラール:同名歌曲
・バラード:妖精の口づけ

 『イタリア組曲』もバレエ音楽『プルチネルラ』の編曲です。そしていずれも近い時期に書かれています。というのも、ストラヴィンスキーは1931年にヴァイオリニストのサミュエル・ドゥシュキンと知り合って、一緒にヨーロッパ中を演奏旅行しており、その際にヴァイオリン協奏曲や多くの室内楽の作品ができたようです。このディスクでは火の鳥の3曲目以降の作品がそれに当たります。

 『火の鳥』のヴァイオリンとピアノ用組曲は3曲で構成されていますが、編曲された1929年当初は「ロンド」と「子守歌」の2曲構成で、ヴァイオリンが普通にしっとりと歌うものでした。そしてドゥシュキンの協力を得て1933年に作られた3曲目「スケルツォ」では大オーケストラのオリジナル版をヴァイオリンで再現したのかと思わせるようなきらびやかな書法となっています。また、曲の終わりには1911年版組曲での終わり方が付け足されています。



 上は「スケルツォ」の動画。この書法で「凶悪な踊り」や「終曲」などの賑やかな部分が書かれていたら是非とも聴いてみたい気がします。

 バレエ音楽『ペトルーシュカ』からは第1部のピアノが活躍する部分を編曲。原曲のピアノパートがヴァイオリンに割り当てられている部分もあって、短いながらなかなか面白い聴きもの。

 その他の作品も原曲の骨格を失っていないだけでなく、音の動きの解像度がより鮮明になったような楽しい編曲。そうなるとヴァイオリンとピアノの編成でのオリジナル曲がもっと作られても良かったと思うのですけどね。

 そしてその完全オリジナルの『デュオ・コンチェルタンテ』ですが、これがまた問題作。ヴァイオリンでしか弾けないような書法でありながら、ヴァイオリン音楽に期待されている芳醇さのようなものがほとんどありません。コンピュータ音楽のようなドライさを感じるような気もします。例えるなら、ふわふわのソフトクリームを期待していたら、パウチに入ったクーリッシュが出てきたような印象。味はアイスクリームだけどシャリシャリの食感とお手軽感に驚きがあって、「これはこれでいいな」と思わせるだけのインパクトがあります。



 上の動画はドゥシュキンのヴァイオリンとストラヴィンスキーのピアノの演奏。この曲に関してはシゲティとストラヴィンスキーの演奏のディスクも持っていますが、またいずれ。

 ドゥシュキンというパートナーを得て新境地の音楽を手に入れたストラヴィンスキーですが、ヴァイオリンとピアノの組み合わせの作品がこれ以上増えなかったのが重ね重ね残念です。

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