10月5日のおでん物語で書いた梅田食堂街にある有名なおでん屋さん。
お客さまが行かれた。まきママと一緒に。やっぱりおいしかった、さえずりは
1本にしたけどと大笑い。
おでんで思い出した話し。
お初天神から少し北に入ったところ、「八幸」の前にあった木造平屋建てのおでん屋さん。今はその店はない。そのあたり一体が立ち退きになりやめてしまった。現在はテナントビルになっている。
「お母さん、もう1本」
「お客さん、3本は出しまへん、2本で終わり、帰って頂戴」
壁に「酒は2本まで」と張ってある。
「なんや、酒は2本以上飲んだらアカンなんて偉そうに、こんな店2度と来るか」と怒って帰っていく一見客。お母さんは全然気にしないで「いらっしゃい」と次ぎに入ってくる客の対応に忙しい。その店に毎日のように行くお客さまがおられて、おいしいので私も店に出る前によく寄った。特長はお酒は2本まで、2本飲んだら帰る。ママは、酔っぱらってウダウダ言う客は嫌い。酒を飲み店ではない、うちは、おでんを食べる店とはっきり言っていた。
又、営業は9時まで。「時間になると追い出されるんや」とお客さまは言っていた。母と娘2人で切り盛りして、他人を使っているわけではないから気を遣わないので、旅行したくなると1週間でも2週間でも休んで海外旅行に行っていたし、早く終わって銭湯に行くのが楽しみと言っていた。「いいなあ、羨ましい、私なんか、朝から朝まで(当時、家に帰るのは何時も4時、5時だった)働いて、女の子達に気を遣ってしんどい、ママが羨ましい」と何時もぼやいていた。
「ママ、この親子もよく働いているんや、朝早くから、仕入れに行き、大根切ったり、すじ肉を掃除したり、2人の手を見てみ、仕事をしている手やで」
「他人の花は赤い」人のことを何時も羨ましく見ている私に一石放たれた。
そう、1度、朝、用事がありその店の前を通ったことがあった。2人は黙々と座り込んでジャガイモの皮をむいていた。「腰も痛いやろうな、準備に時間を掛けて、頑張っているんや」私は声も掛けずにじっと見ていた。
お母さんと娘さんのその後の消息はわからないが、おいしく頂いたおでんの味は忘れはしない。そう、「何が2本までや」と怒って帰った客が次の日に来ていた。そして2本飲んで帰って行った。怒られても来る店やなあ、ほのぼのとした店やと感心したもんだ。
どこかにないかな。そういう店、あったらいいのになあ。