「あら雪が降っている」
カチッと最後の鍵を閉め、外に出ると粉雪がネオンの川に流され虹のように舞っていた。私はコートを脱ぎ霜香を覆うようにすっぽりと包んでやる。
「まるで曽根崎心中のおはつ、徳兵衛の道行きのようね」
以下省略
新地本通りはもう誰も歩いてはいない。おはつと徳兵衛だけだ。
以下省略
霜香は私の顔に降りかかる雪を可愛い手ではらってくれ小さく頷く。その手を右に左に振り精一杯の笑顔を浮かべ頭を下げた。「有り難う」そして振り返ることなく御堂筋を北に歩いていく。泣いているのか、涙をこらえているのか、か細い肩が震えている。「霜香」私は呼び戻そうと走りそうになるが身体は動かない。小さな身体が一つの点になり、白い雪の中に消えていく女をただ見つめているだけであった。 (私--相沢と言う名の男、霜香--スナックのママ)
これは以前、HPで連載した小説の一部。霜香が店を閉じる場面。
私もやめるときはこういう風なやめ方が良いなあと思いながら書いた。
29日は雪らしいと聞き、私は密かに期待していた。きっと最後は私が好きだったという男が現れ粉雪舞う新地本通りを2人で寄り添いながら歩くんだ。私にふさわしい最後の舞台が待っている。やるぞ-
「さあ、店も終わりや、みんなでカレーうどんでも食べに行こう。うどんは香川やな」
「嬉しい、私、カレー天ぷらうどんにする、おでんのスジもええなあ」とみどりは言う。
(そうかな)私は黙って付いていく。
「ああ、暖まった、帰ろうか、タクシーで送っていくし」IKさん。
「いえ、私、結構です、ほっといて下さい。構わんといて下さい」(きっと私を迎えに来てくれるナイトが--来てくれる。きっと、きっとーーー)
「かまへん、気使わんとき、みんなで帰ろう」タクシーで順番に送って頂きました。
夢と現実の違いがあまりにもーーー。チャンチャン。
IKさんも長い間お世話になりました。有り難うございました。
「百合ちゃんの定年後の話し」として来年から再出発しょうかと思っていますが、どうなりますか?
まずい文章を読んで頂き有り難うございました。