
和田竜「のぼうの城」
小学館 2007年 1,575円
映画化企画進行中!新しい英傑がここにある
戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。
そのなかで最後まで落ちなかった支城があった。
武州・忍城。
周囲を湖で取り囲まれた「浮き城」の異名を持つ難攻不落の城である。
秀吉方約2万の大軍を指揮した石田三成の水攻めにも屈せず、僅かの兵で抗戦した城代・成田長親は、領民たちに木偶の棒から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。
城代として何ひとつふさわしい力を持たぬ、文字通りの木偶の棒であったが、外見からはおおよそ窺い知れない坂東武者としての誇りを持ち、方円の器に従う水のごとき底の知れないスケールの大きさで、人心を掌握していた。
武・智・仁で統率する従来の武将とは異なる、新しい英傑像を提示したエンターテインメント小説。カバー・イラストはオノ・ナツメ。
<例会レポート>
2月25日例会、参加者20名。
第139回直木賞候補、2009年本屋大賞2位となった「のぼうの城」。
普段、時代小説を読む人と読まない人で感想が大きく違った。
●大絶賛と雑誌で紹介されていた。すらすら読め、時代小説を読まない人、
初心者にはいい。つまらなくはなかったが、すれた者には、物足りなかった。
●時代小説は読まないが、面白かった。知らない史実を知ることができてよかった。
●時代ものは、読みなれていないが面白かった。キャラクターの立て方、周りの者が主人公を盛り上げるのは、少年ジャンプの人気漫画と同じだが、これはこれで面白い。
●久々に新刊本を買った。よかった。中身はパターン化しているが、作者は、最後まで読ませる力がある。水攻めのシーンが上手く描けていた。
●2009年のベスト本に挙げた。言葉は現代的で人物に深みはないが、第一作でこれくらい書ければいい。今後が楽しみ。石田三成が出てくるところでは、「天地人」で三成を演じていた、小栗旬が浮かんだ。
●時代もの初心者なので、面白く読めた。戦なれしていない人々が、自分達の領地を守る為に頑張って戦を始めたことが、身近に感じられた。
●甲斐姫が、よかった。色々もの足りない点もあるが、私にとっては面白くてよかった。
●時代小説だが、現代小説の、サラリーマン小説としても読め、読み易かった。
●可愛い男を書いているが、そんな男いないと思う。冒険活劇として楽しめた。
これを読んだ人に連れられて、「忍城」の跡が残っている行田へ行き、写真を撮って来た。
●課題本に挙がる時しか時代ものは読まないが、とても面白く読んだ。
人物描写が浅いのは映像化を考えてのことか。セリフのような言い回しに笑った。
●時代小説は、「剣客商売」くらいしか読んでない。武士の名前が覚えられるか不安だった。
小説としては浅いかもしれないが、映画化が楽しみ。
●2年前に読んだ。漫画的で精神面も浅く書いている。面白いが余韻はない。
シドニー・シェルダンなみか。
●自分の年代的には、こういう作品は無理。現代の時代小説は乗れない。
●漫画か、ドラマか、ノベライズ。甲斐姫が、のぼうに惚れてる訳がわからない。
地名の今昔、一里の説明など、親切過ぎてうるさい。
●忍城を題材にした「水の城」(風野真知雄 著)の方が、圧倒的に面白かった。
作者は脚本家なので、キャラクターは立っているが、映像を意識した文は物足りなかった。
●評判の割りには期待はずれだった。うんちくが多すぎて、こういうのは嫌い。
のぼう様が何故人々に好かれているかのエピソードが足りない。
●以前読んで、ほとんど忘れているが、「水の城」の方が面白かった。
キャラクターが今的で受けるのだろうが、こういう書き方をすれば売れるのか?ベストセラーになるのか?
●昨年の、ガッカリ大賞の一冊。主人公の長親を分析しつくしてない。苛立ちと怒りを感じた。
勧善懲悪的がオールドファッション。初心者向きか。
●まだ半分しか読んでいない。最近、育児書ばかり読んでいるので、なかなか進まない。
装丁に、オノ・ナツメを使うところが今風か。
★講師総評
売れているということは、時代小説としての現代性が問われるが、この作品にはそれがある。
作品の中で、忍城に降伏を勧告する軍使に対し、長親が語るところ、
「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。
これが世の中か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ。」
この文章が、作者のテーマである。
ヒーローを考えるに、正義派、虚無派、権力者、無能者など色々考えられるが、暗い時代だからこそ明るい時代小説が出てきて好まれる。
時代小説は題材が重要。うんちくが多いのは、出典元を明かし嘘ではないという証明の為である。
柴田錬三郎、司馬遼太郎、五味康介など上手い作家は、史実ではない事を書いて読ませるが、熟練者ゆえに出来ること。
和田竜は、まだ力量不足ではあるが、新人として、現代感覚を盛り込んで存在感を示している。
新作『小太郎の左腕』も、読んでみて欲しい。
:講師が、時代小説の評論で書かれた、『週刊読書人』2009年12月25日号のコピーが皆に配られ、行田へ行って来た方の撮った写真も回覧された。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます