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10月の課題本 「みなさん、さようなら」久保寺健彦

2010-11-05 23:44:31 | ・例会レポ

今回は、見学者を迎えての読書会。みなさん活発に発言してくださいました。

 

★団地を出られなくなったのには違和感あり。キャラクターの設定がうまい

★出版されたころ、買ってすぐ読んだ。それ以来この作家の作品を読んでいる。

おもしろいけど、お母さんを「ヒーさん」と呼んだり友達っぽくして、親子関係を薄くしちゃったのはなぜだろう?周りの人たちにとても世話になっているけど、感謝の気持ちはあるのだろうか?

★ストーリーはとてもおもしろい。働きはじめて人とふれあうところなどを読むと話が団地のなかだけでもそれほど不自然には感じなかった。最後は暗さを感じないのでハッピーエンドなのではないだろうか。

★外国人の増加とか、高齢化とか団地自体の問題も盛り込んで、団地の中だけの話だけれど、狭さは感じなかった。最後はバタバタした感じで終わってしまった印象。

★どんどん読めて、先が気になる作品。園田君が病気になってしまったときは悲しかった。園田くんが好きだったので残念。ラストは好きではなかった。

ヒーさんの存在はやはり大きかったのでは、園田くんは信頼してくれる親がいなくて、弱ってしまったのかなぁ。

★題名から高齢化のはなし?と思ったが、青春小説だったとは。個性的な小説。なんで団地から出られないのかという謎にひっぱられてすっと読めたがなにか思いが残る。

★はっきりしていて、起承転結もわかりやすく楽しく読めた。小説としては悪人が最後のほうにとってつけたように出てくるのではなく、最初から出てきてほしい。悪役自体はこんな犯罪者実際にいそうだなぁと思った。

★まったく期待をしないで読んで、おもしろかった。よくできている。ケーキ屋さんは案外簡単になれるんだと思った。映画になったら配役は誰かなと思いながら読んだ。

★今年の課題本では一番おもしろかった。デビュー作なのに完成度が高い。団地が役割を終えて、母も亡くなり物語も終わるのだなと思った。課題本にならなかったら読まなかったであろう本。

★石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」に似てるかも。主人公を長瀬くんのイメージで読んだ。次の興味や心に残るというわけではないが、コンパクトに面白かった。団地のライフサイクルが描かれている。ヒーさんに恋愛のひとつもあればよかったのに。

★団地好き。同じものが密集しているのが好きなので集合住宅に興味がある。

頑張って団地からでないとチャレンジしているのかと初めは応援していたが、途中で「出ないのではなく出られない」とわかってからは逆に興味が薄れてしまった。

もう少し、素直じゃない人や驚くような出来事が起こってほしかった。

★おもしろかった。子供のときに「先生さようなら、みなさんさようなら」と言っていたことを思い出した。こだわりが強いひとたちは実際の世界にもいるのでリアリティを感じた。団地も変化していくのとヒーさんが亡くなるのとシンクロしているように思えた

★青春小説はすきじゃないけど、おもしろく読めた。本を読んだりして自分でトレーニングを一人でちゃんとやるのは、六年生じゃありえないだろっ!と思ったけれど、まあお話なので。悪人は最後のほうに出てきたのは唐突。ヒーさんの存在感が希薄。看護師さんだったら、もう少しなにかしてもいいような気がした。

★おもしろかった。若い作者なのにうまく、そつがない。主人公が出ていく理由が安易に思えた。団地という生命体の最後を主人公は番人として看取ったのか。

★ご都合主義的な話がダメなのでよくなかった。最後が不満。お母さんが倒れたのにびっくりして出ちゃうのは安易。団地が壊されても居座るぐらいの話にしてほしかった。ケーキが食べたくなる。

★読んでいる間はおもしろかった。が、最後には不満が残った。せっかく堀田一味と戦ったんだから、マヨネを殺した男と対決するぐらいしてほしかった。

★すいすい読めすぎて、あまり印象がのこっていない。主人公が「おれ」というのには違和感。「ぼく」のほうがよかったのでは。強がっているから「おれ」と言っているのか?

団地に住んでいる子は友達が近くてうらやましいと思った。

★設定がおもしろい。若い作家なのになかなかうまい。団地からでられない理由もミステリっぽく途中までかくして読ませる。母親のヒーさんが目立たないのはわざとでは?なんでも息子のことを受けとめているのではないか。たんたんと書いているが最後ジンときた。

私は団地が子供のころから怖い。

★ハードカバーで出たときに読んだ。細かいところを取り除くと、シンプルな成長ものがたり。ふるさとからみんな行ってまう。絵に描いたような悪役も、恋も、友情もご都合主義だけどゆるせる。主人公は一人で勉強ができちゃったり、冷静で頭がよく自己分析ができちゃうって、少し大人の作者が顔をだしてしまったようだ。

疑問に思ったのは、マヨネが死んでしまったときに同じクラスのほかの子たちはトラウマが残らなかったのだろうか?ということ。

★おもしろかった。最後のほうにマリアやエルザたちが出てきたあたりの疾走感が好き。主人公は出て行ってから苦労するだろうなと思ったが、世の中に打ち勝つ勇気をもらった。

★初めて読む作家。描写がとても細かいところ、生々しいところがある一方、いなくなっていく人たちや、ヒーさんなどあまり書かれていないことがある。主人公の興味のある部分は細かく書いているのか?

奇をてらってなくて、人生そのままなぞっている感じ。友達の昔ばなしを聞かされたよう。

★すごく読みやすいが、不安になった。団地から出ないで就職できるんだろうかとか、みんなに守られていて、それがなくなったらどうするんだろう。

人が去ることとことについてあっさりしているのが不思議。

ラストは違和感はなかった。

 

講師からは

個人的には今年一番おもしろくなかった。センスもあるし、わかりやすく書けるというのは新人としては大事だが、おもしろくするために、おもしろいエピソードの断片を寄せ集めた感じで、ミステリーとしても中途半端だし、団地から出ていくことの意味がわからない。

団地という舞台設定はユニークだがどうして団地でなければならなかったのか?なんで部屋から出られないではなかったのか?という思い入れが書けていないと思う。

コミセンで上映されていた古い映画の「道」に関する感想の書き方も、子供ではなく作者自身が顔を出してしまっているようで、リアリティが感じられなかった。

同じ作者の「ブラック・ジャック・キッド」のほうがブラックジャックが大好きなんだという情熱が感じられて良かった気がする。

 

賛否両論ありましたが、全体的には好評でした。

賞を3つも取った新人作家ということで、うまい作者です。わたしもとても面白く読めたし、キャラクターも上手にできていると思いました。

賞をとった三作品(この作品と「ブラック・ジャック・キッド」「すべての若き野郎ども」をみんな読みましたが勢いがあってよかったと思います。ただ新作の「オープン・セサミ」を読むとうまさだけが際立ってしまって、心に残らないかも。これだけうまく書けるのなら、もっと自分が本当に書きたいことというのが見つかるといいのかもしれないですね。

私は団地には住んだことはありませんが、みなさんいろいろ団地に思い入れがあって、お話をいろいろ聞けたので楽しかったです。

レポート:舞浜嵐子

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