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11月の課題本『愛おしい骨』

2010-11-26 23:46:55 | ・例会レポ
キャロル・オコンネル/著 務台夏子/訳 『愛おしい骨』
創元推理文庫 2010年

十七歳の兄と十五歳の弟。二人は森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。
二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、時が止まったかのように偏執的に保たれた家。何者かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつひとつ置いてゆく。
一見変わりなく元気そうな父は眠りのなかで歩き、死んだ母と会話している。
何が起きているのか。
次第に明らかになる町の人々の秘められた顔。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。
著者渾身の大作。

創元推理文庫

<例会レポート>

平成22年11月24日 課題本「愛おしい骨」の読後感想の報告

• 27名が出席(男性9名、女性18名)。
• 推薦者にとって驚きだったのは、文庫本で500頁と厚く、決してとっつきの良くない課題本でありましたが、殆どの方が読了していたこと、また評価がとても高かったことです。
• 長過ぎる、読みにくい、大勢の登場人物が描ききれていない、書評では10年に一度の大傑作と書かれているが、普通の出来ではないか、などの評もありましたが、以下の如く高い評価を得ました。
• 登場人物の造型やその背景、人間関係の面白さがうまく描かれている。
• 人間ドラマを描きつつ、ミステリを書いた印象。創元推理文庫ではあるけれど、ミステリではないのではないかとの意見もあり。
• ミステリとしてではなく、過剰な、濃い個性の人間関係の描写が面白かった。盛り込み過ぎとの意見もあり。
• 場面の展開が早く、謎が提出され、それが解決すると、また新たな謎が出てくるといった感じで、中だるみせず、ドラマの展開がうまいと感じた。
• 但し、謎が全て解決されるわけではない。
• 犬を含め、全てが愛の物語になっているが、無償の愛をつらぬけたのはハンナだけだったのではないか?
• ハンナ・ライスの生き方が印象的であった。「家政婦は見た」に似ているとの意見あり。
• 後半、オーレンがイサベルとタンゴを踊る場面があるが、これは感動的であった(クサイという意見もあり)。
• 「最後、オーレンがイサベルに「これまでの生涯で、愛した女性はひとりだけだ。それはきみじゃないけどね」というシーンがあるが、この愛した女性とはハンナですよね」との意見あり。そうでしょうね。
• この作品を映画化するとしたら、として以下の推薦がありました。
   ①監督はデビッド・リンチ。
   ②ジョシュアは少年時代のデカプリオ。
   ③イヴリン・ストラウブはカトリーヌ・ドヌーヴ。
• 菊池講師より、「ローカルな村が一つの舞台になっているため、その土地性が描かれ、必然的に群像ドラマになっている。個々の人物の人生の縮図が描かれ、この20年間の空白をどう埋めてきたかを小出しにしている。冒頭の骨の提出は見事である。またオーレンが過去のスワンの事件の真相を暴く場面は圧倒的で、作者の力量がうかがいしれる」とのコメントがありました。
• 会で以下の本が推薦されました。
   ①同一作者の「少女はクリスマスに還る」
   ②ガルシア・マルケス 「予告された殺人の記録」
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