柴田翔 著
560円 (税込)
発売元:文春文庫
発売元:文春文庫
発行年月:2007年11月
男性5名、女性12名の会員に加え、特別ゲストの目黒さんを交えての、今年最初の読書会。
現在のメンバーの年齢を象徴するかのように、ほぼ9割の参加者が、10代から20代にかけの時期に一度は読んでおり、「衝撃を受けた」「柴田翔にはまった」「当時の読者に与えた影響は圧倒的」という記憶を持っていた。こうして今回の読書会は、30年後に読み返した結果、自分も時代も、「思わず遠くへ来たもんだ」を再認識する会となってしまった。
ここで言う時代とは、本書の舞台となった1955年、本書が書かれた1964年、会員それぞれがはじめて読んだ70年代、そして再読した2008年、という4つの異なった時代である。だから、感想の大半は、
「内容が古いとか時代錯誤の感があるのもそうだが、なぜ今、自分はこんな時代にいるのだろう」
「時代が変わった事に驚いた。懐かしさだけが残った」
「懐かしさだけでフラットな気分のままに読み終えた」
「当時の人たちは恋愛とかなぜ生きるのかとかを考えていた。そんな時代が昭和だったと思う。昭和の時代性を感じる小説だ」
「(はじめて読んだ)中学生では早すぎた。今では遅すぎた」
「憧れだった。自分自身が変わった事はわかるが、あの時代、なんで柴田翔のことがあれほど好きだったのだろう。読み返して悲しかった」
「当時はすごい衝撃を受けたが、今読むと面白くない」
といった内容のものが多かった。
初めて読んだ「若い」会員からは、
「恋愛小説としては面白くなく、スーッと読み終えてしまった」
主人公たちがうらやましい。今の大学生はディスカッションしたり同じ話題について話す事などない。若い人たちが活気付いている当時に憧れる」
といった感想が聞けた。
講師の菊池さんからは、戦後の共産党がたどった歩みが説明され、この小説の基盤となる時代背景が明らかにされた。すなわち、共産党第六回全国協議会での方針変更の直後に書かれた小説であり、文夫のどっちつかずの生き方と、節子の自分を総括する生き方の対比が評価されて良いだろう、とまとめてくださった。
今回の例会で感じた事は、かつての恋人に30年ぶりに出会ったしまった不幸とでもいうのでしょうか。昔の恋人は思い出のままにしておくのが一番なのかも知れませんね。
(天馬 トビオ)
管理人よりお知らせ
・この日の2次会の模様を、
キイトス茶房さんのブログで紹介していただきました。ぜひそちらもご覧ください。
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